イギリス生れの進化主義人類学者。父はクエーカー教徒で真鍮の鋳物師であった。16歳のときロンドンの工場の事務員となり,高等教育は受けなかったが,20代前半に結核の転地療養のためのアメリカ,キューバへの旅を契機に,文化への関心を深めた。キューバ旅行の体験に基づいて,《アナウァク--古代および現代メキシコ人》を1861年,29歳のときに発表し,この体験と着想をさらに学問的に深めて65年には《人類の原初史および文明発達に関する研究》を著した。彼の名を一躍高めた代表作は,71年に発表された2巻から成る大著《原始文化--神話・哲学・宗教・言語・芸術および慣習の発達に関する研究》である。この中で展開されたアニミズム論は,宗教に関する最初の包括的考察として,学説史的価値を持っている。タイラーは,宗教の基礎は万物に霊魂が宿るとする信仰,つまりアニミズムにあり,これから精霊信仰,多神教を経て一神教にまで発達したと論じた。この学説は,進化主義人類学説の代表的なものの一つとされている。
しかし,タイラーの現代人類学への貢献は,進化主義的見解を示したことではなく,〈文化〉〈言語〉〈宗教〉等の概念を巧みに設定して人類学的研究をキリスト教的世界観から解放したことにある。中でも文化の定義は今日に至るまで多くの入門書に引用されている。彼はその学問的功績によって〈人類学の父〉と呼ばれている。
執筆者:石川 栄吉+斉藤 尚文
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?~1381
1381年のイングランドの農民一揆の指導者。同年の人頭税課賦への不満を直接の契機として,イングランド東南部を中心にした全国的規模の農民一揆が起こり,指導者に選ばれた。農民は農奴制の廃止,地代の固定などの要求を国王リチャード2世に認めさせて大部分が解散したが,タイラーはロンドンのスミスフィールドで新たな要求を行った際殺害された。
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…こうした意味での霊魂は,人間にのみ認められているのではなく,動物,植物,自然物,自然現象にも宿るとされる。
[学説]
このように諸生物,事物,現象に認められる霊魂群を一括して霊的存在と名づけ,この存在への信仰をアニミズムと規定し,これによって宗教文化の起源と本質を論じたのがイギリスの人類学者E.B.タイラーである。彼によれば,死,病気,恍惚,幻想とくに夢における経験を反省した未開社会の知的な人間は,身体から自由に離脱しうる非物質的で人格的な実体すなわち霊魂の存在を確信するにいたった。…
…社会科学の諸分野では第2の意味で〈文化〉という概念を使用するのが普通であるが,この意味における〈文化〉についても定義は多様であり,時代的な変化も見られる。
【文化人類学からみた〈文化〉】
文化人類学における文化の定義の中で最も古典的なものは,E.B.タイラーが《原始文化》(1871)の冒頭で示した定義である。彼は〈文化または文明とは,知識,信仰,芸術,道徳,法律,慣習その他,社会の成員としての人間によって獲得されたあらゆる能力や慣習の複合総体である〉と述べた。…
…事実,世界に分布する諸社会の未開性がもっとも問題にされ,関心をもたれたのは,19世紀後半の進化,発展主義の思潮のなかで形成された人類学の初期段階においてであった。人類学の祖と目されるL.H.モーガンやE.B.タイラーは研究対象の未開社会を体系的に扱った人々の代表であるが,両者の学説の中では,人類社会はより高度の完成へ向かう一系的な進化の過程をたどると仮定され,未開社会は,西欧文明社会を頂点とした発展過程の諸段階を,なんらかの理由で残存,保持してきたと想定された。したがって,未開社会の様態の研究は人類史の諸段階を復元するためのものであり,発展を野蛮,未開,文明の3段階で捉えようとしたモーガンは,現存する社会の未開状態を低度の発展段階にとどまった人類の遺物とみなしたのであった。…
…第3は文化レベルでの遊戯論の展開である。19世紀は遊戯論が科学的基礎づけを得た時代で,機能にしろ発現因子にしろ,それらはもっぱら心理学的に個体レベルの問題として論じられたが,他方,童戯の残存起源を唱えたE.B.タイラーや遊戯の文化創造機能を追求したJ.ホイジンガにみるように,遊戯と文化のかかわりを問う領域も現れた。この領域に大きく寄与したのは文化人類学で,未開社会と伝統的社会の文化体系の中で遊戯(デュルケーム的意味での〈物chose〉としての遊戯)が占める位置と意味とが盛んに研究された。…
…一般に精霊や生霊や死霊と呼ばれる存在がそれである。この考えは未開宗教や古代宗教において多くみられ,E.B.タイラーによると,とくに未開人はこのような霊魂(アニマ)の存在によって夢や幻覚や失神や死の現象を説明しようとしたのだという。また,それらの遊離し漂泊する精霊や生霊を操作したり駆使したりすることによって,治病や託宣や呪詛を行う呪術・宗教的な職能者もあらわれた。…
※「タイラー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
カスタマー(顧客)とハラスメント(嫌がらせ)を組み合わせた造語「カスタマーハラスメント」の略称。顧客や取引先が過剰な要求をしたり、商品やサービスに不当な言いがかりを付けたりする悪質な行為を指す。従業...
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