翻訳|Tamil
インド亜大陸南部に住むドラビダ人の主要言語のひとつ。タミル・ナードゥ州(州都チェンナイ。人口約4800万)の公用語であるほか,スリランカ北部ジャフナ地域(400万人),マレーシア,インドネシア(合わせて100万人),中部と南部のアフリカの一部,マダガスカル,フィジー諸島などで,おもに移住民によって話されている。文字をもつ四つのドラビダ語(タミル,テルグ,カンナダ,マラヤーラム)のうち,タミル語は西暦紀元初頭にまでさかのぼる文献をもつ唯一の言語であり,また,語彙借用の面を除いてインド・ヨーロッパ系言語の影響が最も少ないため,ドラビダ語族を代表する言語とみなされている。歴史的にみて,音韻と形態にはおのずから変遷があり,現代語をとっても文章体と口語体には少なからぬ違いが認められるが,その基本的な特徴を現代文章語を中心として述べれば,以下の点に要約される。
母音はa,i,u,e,oおのおのの長短母音に二重母音ai,auを加えて12種,子音はサンスクリットからの借用語を除けば,閉鎖音,鼻音など18種を数えるが,後者では特に反舌音(ṭ,ṇ,ḷ,ḻ)の発達が注目される。重複子音と有声音は原則として語頭には立たず,母音間の単一閉鎖音と鼻音後続の子音は一般に有声化する。名詞は自然の性にほぼ一致するしかたで通性名詞と中性名詞に区別され,前者はさらに男性名詞と女性名詞に分かれる。複数は特定の接尾辞によって表示される。名詞の格変化は,呼格のほかに,主,対,具,共(〈……と共に〉),与,奪,属,処の8格があり,それぞれの接尾辞(主格の場合は接尾辞はゼロ)が語幹に付加されてつくられる。動詞組織は形態上大きく肯定表現形式と否定表現形式に分けられる。前者は語幹に順次,時制の接辞(過去,現在,未来を区別)と人称語尾が,後者は古語ではおもに時制の接辞の欠如によって,現代語では不定詞または中性現在分詞に否定の意味の不変詞や不可能を表す助動詞が付加されてつくられる。このほか,動詞組織の特徴としては,不定詞の果たす広い機能,副詞的分詞の頻用,複合動詞表現の豊富なことなどが挙げられる。人称語尾は,代名詞要素の発展したものと考えられ,したがって代名詞と同様に,三人称単数で男性と中性と女性,複数で通性と中性の区別がある。接頭辞はなく,西洋語の冠詞,関係代名詞にあたるものもない。語形成は連声の規則に従って,形態素を順次後から付加して行うため,全体として膠着語的性格が強い。形容詞と副詞は元々存在しないが,今日,合成語形がそれらにあたるものとして使用されている。語順は概して日本語のそれに近い。タミル語を含むドラビダ語族の系統は完全には解明されていないが,ウラル語またはアルタイ語との同族説が有力である。日本語との直接的なつながりを立証することはむずかしい。
執筆者:徳永 宗雄
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インドの言語。南インドに分布するドラヴィダ諸語の一つ。タミル・ナードゥ州の州公用語であるほか,スリランカ北部でも使用されている。西暦紀元初頭には,恋愛や武勇を主題としたサンガム文学が成立した。インド独立後,連邦公用語をヒンディー語に一本化する動きに対して,タミル語圏からは強い反発が起こった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…1956年以降シンハラ語が公用語とされている。少数民族のうちで最大のものは,タミル人Tamilであり,総人口の18.2%(1981)を占める。このうち12.7%のスリランカ・タミル人は,シンハラ人同様に古くから定住していたが,5.5%のインド・タミル人は英領時代にプランテーション労働者として来島し,スリランカとインドの両国政府から市民権を拒否されている。…
…正式名称=インドBharat∥India面積=328万7263km2(ジャンムー・カシミール(12万1667km2)を含む)人口(1996。ジャンムー・カシミールを含む)=9億5296万人首都=ニュー・デリーNew Delhi(日本との時差=-3.5時間)主要言語=ヒンディー語(公用語),英語(準公用語),テルグ語,アッサム語,マラーティー語,ベンガル語,タミル語など憲法にあげられている17の地方の公用語通貨=ルピーRupee国名はヒンディー語ではバーラトBharatという。インドは北半球に属し,その面積は,ヨーロッパの面積からイギリス,アイルランド,スカンジナビア諸国,ヨーロッパ・ロシアの面積を引いたものにほぼ等しい。…
…古代南インドで標準的な文章語と考えられ,以後,古典文献の注釈書などで理想的な文体とされてきた〈純正のタミル語〉。マドゥライ周辺の方言が基礎となったとみられ,サンスクリット(プラークリット)による侵食が少ない点に特色がある。…
…正式名称=スリランカ民主社会主義共和国The Democratic Socialist Republic of Sri Lanka面積=6万5610km2人口(1996)=1831万人首都=スリ・ジャヤワルダナプラ・コーッテSri Jayawardanepura Kotte(日本との時差=-3.5時間)主要言語=シンハラ語,タミル語通貨=スリランカ・ルピーSri Lanka Rupeeインド亜大陸の南東端の海上に位置する,セイヨウナシの形をした島国である。英領時代には,外国ではセイロンとして知られていた。…
…ドラビダ語族に属する言語としては,固有の文字と文献とをもち,インドの公用語ともなっている,タミル語,マラヤーラム語,カンナダ語,テルグ語と,文字をもたない18(あるいはそれ以上)の言語とがある。これら諸語は,地域と言語の特徴とに基づいて,北部ドラビダ語,中部ドラビダ語,南部ドラビダ語の三つに大別される。…
※「タミル語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
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