チェルノブイリ原発事故(読み)ちぇるのぶいりげんぱつじこ

知恵蔵の解説

チェルノブイリ原発事故

旧ソ連(現・ウクライナ)のチェルノブイリ原発4号機(黒鉛減速軽水冷却チャンネル型炉)で1986年4月26日に起きた原子炉暴走・爆発事故。5月6日まで大規模な放射性物質の放出が続いた。運転中の原子炉で電源喪失の対応実験中に出力が急上昇し、作業員のミスも重なって、高熱の炉心がむき出しになり、放射性物質は計11エクサベクレル(エクサは100京倍を表す単位=10の18乗)が放出された。膨大な量であり、広島に投下された原子爆弾の500倍ともいわれる。セシウム137で1平方キロメートル当たり370億ベクレル以上汚染された地域はウクライナ、ベラルーシロシアの計10万平方キロメートル近くに達した。半径30kmの住民11万6000人が強制避難させられ、多くの村が廃墟となった。欧州各地でも食物が汚染されて大量に処分され、全世界で放射能が観測された。爆発した4号機をコンクリートで封じ込める「石棺」建設のために、延べ80万人が動員された。事故直後に消防士ら31人が死亡し、急性放射性障害で203人が入院した。2001年にロシア副首相が、事故処理作業をした旧ソ連の5万5000人が放射線障害で死亡との推計を発表した。05年には国際原子力機関(IAEA)と専門家グループによる「チェルノブイリ・フォーラム」が、事故処理作業員と高濃度汚染地域の住民の今後を含めた死者は4000人との推計を発表した。06年になって世界保健機関(WHO)は対象地域を広げて死者9000人とし、国際がん研究機関は欧州全域を含めて1万6000人、環境団体のグリーンピースは9万人と発表した。

(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

チェルノブイリ原発事故

1986年4月26日にチェルノブイリ原発4号炉で発生した。外部電源を失った場合のテストで出力を下げて運転中に原子炉が暴走して爆発。炉心がむき出しになり火災が続いた。10日間で放出された放射性物質は東京電力福島第一原発事故の約6倍とされる約520万テラベクレル(テラは1兆)。欧州の広範囲も汚染され、一部は日本にも届いた。高濃度汚染地域はウクライナ、ベラルーシ、ロシアにまたがり、避難者は約40万人。原発の周囲約30キロ圏などは、今も立ち入りが厳しく制限されている。

(2016-04-24 朝日新聞 朝刊 1総合)

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デジタル大辞泉の解説

チェルノブイリ‐げんぱつじこ【チェルノブイリ原発事故】

1986年4月26日、旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所4号機で発生した史上最大の原子炉事故。原子炉(黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉)の設計上の欠陥や不適切な操作によって、動作試験中に反応度事故が発生。原子炉が暴走し、炉心溶融に続いて水蒸気爆発が起こるなどして、原子炉や原子炉建屋が破壊され、大量の放射性物質が国境を越えて拡散した。爆発や急性放射線障害などで31人が死亡、11万6000人が避難を強いられた。また、6000人以上の小児が甲状腺がんと診断され、15人が死亡している。原発事故の度合いを示す国際原子力事象評価尺度で最も深刻なレベル7に分類される。
[補説]4号炉は放射性物質の拡散を防止するための応急措置として、石棺と呼ばれるコンクリートの建造物で覆われている。同発電所では、事故後も他の原子炉が稼働し続け、2002年7月に閉鎖された。

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百科事典マイペディアの解説

チェルノブイリ原発事故【チェルノブイリげんぱつじこ】

1986年4月26日,ウクライナ(旧ソ連)キエフ州北部,プリピャチ市のチェルノブイリChernobyl'原子力発電所で発生した原子炉の爆発・火災事故。死傷者数,放出放射線量,原子炉の損傷状況など,いずれも前例のない激しさで,INES(国際原子力事象尺度)で最悪レベルのレベル7の大事故である。事故炉は4号炉で,他の3基と同じく電気出力100万kW(熱出力320万kW)の黒鉛減速軽水沸騰冷却型。ソ連が国際原子力機関に提出した報告書によれば,原子炉を核的にも熱水力的にも不安定な状態にした上,緊急停止機能を著しく低下させ,安全保護信号(スクラム信号)をバイパスして試験を開始した人為ミスによるものであるが,炉自体の緊急停止機能が不十分であることも原因とされている。この事故による死者は31人,負傷者203人(発電所従業員と消防士のみ。一般人を含まない)。周辺30km以内の13万人以上が避難したが,ソ連国民の集団線量は,外部被曝だけでも約900万人レム,今後50年間で約2900万人レムに達すると推定されている。事故後ヨーロッパ諸国で高度の放射能汚染が観測されたほか,日本を含む北半球の広い地域でも放射能が検出された。とくに半減期の長いセシウム137による汚染地域がベラルーシ,ロシアにも大きく広がっており,1989年にベラルーシでは1km2当り15キュリー以上の汚染地域から住民約11万人を移住させると決定したが,3共和国を合わせると同レベルの地域は1万km2,住民29万人に及ぶ。時の経過とともに甲状腺癌,白血病をはじめ癌の多発や家畜の奇形が現れており,国際的な医療・救援活動が長期にわたって行われた。事故後,4号炉は放射能もれを防ぐためコンクリートで固め〈石棺〉としたが,ひび割れが増大し崩れる心配があるため,1997年ウクライナ政府と西側諸国は改修に合意した。補強案や覆いを二重にする第2〈石棺〉案などがあるが,資金難などから早期の解決は困難視されている。2000年12月15日には事故後唯一稼動していた3号炉を停止し,チェルノブイリ原子力発電所は完全閉鎖された。事故は原子力発電の危険性を改めて認識させ,ヨーロッパ諸国の脱原発の流れに大きな影響を与えた。2011年3月11日に起こった福島第一原発の大事故で二つの事故の比較から同事故が世界の注目を集め,とりわけ事故後現在に至る放射能汚染被害とその対策が日本で関心を持たれている。→原子力発電
→関連項目アクシデントマネジメントウクライナ原子力原子力管理原子力災害原子力産業原発事故産業公害スリー・マイル・アイランド原発事故放射性物質放射能汚染メルトダウンラップランド

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世界大百科事典 第2版の解説

チェルノブイリげんぱつじこ【チェルノブイリ原発事故】

1986年4月26日,旧ソ連ウクライナ共和国の北辺に位置するチェルノブイリChernobyl’原発で発生した原子力発電開発史上最悪の事故。
[経過]
 保守点検のため前日より原子炉停止作業中であった4号炉(出力100万kW)で,26日午前1時23分(モスクワ時間)急激な出力上昇をもたらす暴走事故が発生し爆発に至った。原子炉とその建屋は一瞬のうちに破壊され,爆発と引き続いた火災にともない,大量の放射能放出が約10日間継続した。

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