南アメリカ,ペルー・ボリビア両国にまたがるアンデス山脈中の高原アルチプラノ上に位置する淡水湖で,第三紀末の地殻運動によって生じた。位置は南緯15°14′~16°35′,西経68°37′~70°02′。湖面標高は1918年から66年までの平均で3808.22m。面積は8171km2(高水時)。ただし湖面標高は季節によって,また年々変化し,その幅は最大で3~4mに達する。遠浅な湖岸平野が発達しているため,水位が1m変化すると湖の面積は約250km2も変わる。最大水深は281m。湖の東岸は北西から南東に延びる東アンデス山系(アポロバンバ山脈とレアル山脈)に限られ,比較的出入りのない湖岸線を示すが,南西岸は古い火山などの起伏がある湾入の多い湖岸線となっている。この地方のインディオの聖地コパカバーナに近いティキーナ湖峡(幅1km)で二つの部分に分けられ,南の小湖(ウィニャイマルカ。約1400km2)は水深が5m以浅である。この小湖からはデサグアデーロ川が南に流れ出している。この川は325kmほど下流でポーポ湖に注ぐ。ポーポ湖は出口のない内陸湖であるからチチカカ湖とそれに注ぐ河川の流域は内陸流域ということになる。月平均気温は,たとえば湖畔のプノでは5.7℃(7月)と10.7℃(1月)の間で季節変化するが,日較差の平均値は10℃(夏)~15℃(冬)に達する。年降水量は450~1000mm程度で,南ほど,また西ほど少ない。平均すれば600~700mm程度である。雨季は12月から3月の夏で,5~8月には雨はほとんど降らない。湿度が低いため,気温が低いわりには蒸発が盛んである。そのため,湖に流入する河川水や湖面への降雨水のうち,わずか2%ほどがデサグアデーロ川から流出するだけである。1l中には約780mgの溶存物質があるが,飲用や灌漑用には十分である。チチカカ湖の周辺は,それが大きな湖であるために気候が穏和で,ソラマメ,キノア,ジャガイモなどの栽培が可能である。また,平野も広いのでアンデス山地中最も農業人口の密度が高い。南岸には〈太陽の門〉で有名なプレ・インカのティアワナコ文化の遺跡がある。湖の中央部の半島にあるコパカバーナには聖地詣のために多数の人々が集まる。湖の周囲の人々は,インカ帝国時代の公用語であったケチュア語とは異なるアイマラ語を話している。遠浅の水辺にはトトラScirpus totoraという草が生えており,住民はこれで舟を作ったり,人が住むための島を作ったりしている。またトルッチャ(マス)も漁業の対象となっている。
執筆者:野上 道男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…屋根はバナナやヤシの葉で葺く。
[南アメリカの水上住居]
水上住居としてコロンビアのカリブ海岸の湖沼地帯の杭上住居と,ペルーのチチカカ湖の浮島住居がある。コロンビアのマグダレナ川の河口付近はラグーンになっており,この地域の住居は,ラグーンの浅い部分に杭を打ち,横板で土止めをした人工島の上につくられる。…
…スリランカやインドネシアでは,オニフトイS.grossus (L.f.) Pallaの太く三稜形をしている茎を干して扁平とし,それと,赤や黄色等に美しく染色をしたものとを混ぜて民芸調の敷物を作っている。独特の利用法としては,南アメリカのアンデス山地標高3000~4000mのチチカカ湖周辺で,原住民のシマラ族はそこに生えるフトイの1種のトトラS.californicus Palla ssp.totora (Kunth) T.Koyamaの茎を多数束ねてカヌー式のボートを作ったり,彼らの住居の屋根や壁にしたりするほか,根茎も食用にしている。インカ帝国でもこの根茎が食用とされていたことが最近明らかにされた。…
※「チチカカ湖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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