トンネル効果
我々の世界では通常、壁を通り抜けることはできない。しかし、量子力学の世界では、壁を通り抜けることがある。本来、通り抜けられないはずの壁を、ある確率で通り抜けてしまうことを、トンネル効果と呼ぶ。これは、原子や電子の持つエネルギーが不確定で、ある瞬間には壁を通り抜けてしまうほど大きくなることがあるためだ。トランジスタの黎明期、不良品が大量発生した理由がトンネル効果であることを見抜いたのが江崎玲於奈氏である。
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トンネル効果【トンネルこうか】
原子核内の核子(陽子,中性子)は強い核力を受けて核内に閉じこめられているが,これは核力の場のポテンシャルが壁のようにとりまいているためと解することができる。古典力学によれば,核子の運動エネルギーのレベルがポテンシャルの壁より低ければ,核子は絶対に外へ出られない。しかし量子力学によれば,核子の運動エネルギーのレベルが壁の高さより低くても,核子が外へ脱出する確率はわずかながら存在し,その確率はポテンシャルの壁の形から計算できる(壁が相対的に低くまた薄いほど脱出の確率が大きい)。ガモフはこの方法により初めてα崩壊の説明に成功した(1928年)。核子が壁を貫通する意味でこの現象をトンネル効果という。α崩壊以外にもみられ,量子力学特有の現象である。→トンネルダイオード
→関連項目ジェーバー|ジョセフソン|ジョセフソン効果|走査型トンネル顕微鏡
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トンネル効果【tunnelling effect】
2種類の金属の間に薄い絶縁物の層(障壁)を挟み,両端に電圧を印加するとき,絶縁層の厚さがきわめて薄く,ナノメートル(nm)の桁になると電流が流れるようになる現象.不純物濃度が比較的高い半導体材料を用いてpn接合をつくらせると,遷移領域(上の障壁に当たる)が10nmほどでもトンネル効果によって電流が流れるようになり,順方向に負性抵抗を生じる.これは江崎玲於奈(当時は東京通信工業(ソニーの前身),後に筑波大学学長)の発見になり,このpn接合はエサキダイオードと呼ばれている.
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トンネルこうか【トンネル効果 tunnel effect】
電子や原子核のような微小な粒子は力の場の障壁を透過しうるという,量子力学特有の効果。古典力学では,運動エネルギーはつねに正である。したがって,粒子はポテンシャルエネルギーが粒子の全エネルギーより大きい領域には侵入できず,運動エネルギーが0になる点ではね返される。しかし,量子力学的粒子は古典力学で考えるような粒子の性質と同時に,ド・ブロイ波と呼ばれる波動としての性質をもつので,運動エネルギーが負となるような領域にもわずかに侵入できる。
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トンネルこうか【トンネル効果】
古典力学では粒子がポテンシャルの山を越えるのにはその極大値より高いエネルギーをもたねばならないが、量子力学ではこれより低い運動エネルギーでも山の向こうへ抜ける確率があることをいう。原子核の α 崩壊や、トンネル-ダイオードなどに見られる。
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トンネル効果
トンネルこうか
tunnel effect
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トンネル効果
とんねるこうか
α(アルファ)崩壊により原子核から放出されるα粒子のエネルギーは、α粒子が外に出るときに超えねばならないポテンシャル・エネルギーの高さよりも小さいことが多い。このようにポテンシャルの高さより低いエネルギーの粒子がポテンシャルを通過する現象をトンネル効果という。図では、ポテンシャルV(r)のもっとも高い値VMよりエネルギーの低い粒子がポテンシャルを通過していく。このような現象は通常の古典力学の法則に従う場合には絶対おこらないことであり、量子力学的な運動に由来する。きわめて薄い金属箔(はく)を光がわずかに透過するのと似ている。透過の割合はポテンシャルと粒子のエネルギーを示す線で囲まれた領域の面積によってきわめて敏感に変わる。たとえば、ウランの原子核から420万電子ボルトのα粒子がこのポテンシャルの壁を通過する確率は10-37くらいの確率であるが、これよりも100万電子ボルト高いα粒子であれば確率が5×107も大きくなる。実際のα粒子がウランから飛び出る割合は、α粒子が原子核内で毎秒1021回もポテンシャルの壁と衝突するので、この確率よりずっと大きくなる。半導体や金属面の接触によって生じる電子の流れはトンネル効果による。とくに不純物の多い半導体に負の抵抗が生ずるエサキダイオードやジョセフソン効果はトンネル効果の典型的な例である。[田中 一]
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