ナップ(NAPF)(読み)ナップ(英語表記)NAPF(Nippona Artista Proleta Federacio) エスペラント

百科事典マイペディア 「ナップ(NAPF)」の意味・わかりやすい解説

ナップ(NAPF)【ナップ】

芸術運動団体。全日本無産者芸術連盟の略称エスペラントのNippona Proleta Artista Federacioの頭文字を組み合わせたもの。中野重治らのプロレタリア芸術連盟と蔵原惟人らの前衛芸術家連盟が合同して,1928年3月結成,12月全日本無産者芸術団体協議会と改称。機関紙《戦旗》,続いて《ナップ》を刊行した。青野季吉らの労農芸術家連盟と政党支持のちがいなどのため激しく対立し,攻撃し合いながら,文学,美術,音楽,演劇などの各領域にわたり昭和初年のプロレタリア芸術運動領導徳永直小林多喜二宮本百合子久保栄らが活躍。1931年解体してコップに引き継がれた。
→関連項目伊藤信吉大宅壮一鹿地亘片岡鉄兵黒島伝治壺井栄壺井繁治藤沢桓夫藤森成吉プロレタリア文学

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナップ(NAPF)」の意味・わかりやすい解説

ナップ(NAPF)
なっぷ
NAPF(Nippona Artista Proleta Federacio) エスペラント

全日本無産者芸術連盟および改組後の全日本無産者芸術団体協議会の略称。プロレタリア芸術運動は昭和初年に入ると日本プロレタリア芸術連盟プロ芸)、労農芸術家連盟(労芸)、前衛芸術家同盟(前芸)の三派鼎立(ていりつ)期を迎えるが、1928年(昭和3)の三・一五事件をきっかけに、ひそかに非合法の日本共産党を支持するプロ芸と前芸との合同が急速に進められて全日本無産者芸術連盟(略称ナップ)が成立、5月には機関誌『戦旗』が創刊された。さらにその年12月の芸術連盟臨時大会は、連盟内に設けられていた各専門部を独立させる方針を打ち出し、翌年には日本プロレタリア作家同盟などの五同盟を成立させ、これらに出版部の戦旗社を含めて全日本無産者芸術団体協議会を発足させるが、ここでも略称ナップはそのまま踏襲された。ナップは蔵原惟人(くらはらこれひと)、中野重治(しげはる)、小林多喜二(たきじ)らの活動背景に、昭和初年代におけるプロレタリア文学高揚の中心的役割を果たすが、政治性と階級性優位の主張が目だち、30年には『戦旗』をナップから切り離して新しく『ナップ』を創刊したことなどもかえって混乱を招き、31年11月、蔵原による日本プロレタリア文化連盟(コップ)結成の呼びかけに従って解散した。

[高橋春雄]

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