Nd.原子番号60の元素.電子配置[Xe]4f 46s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素セリウム族の一つ.原子量144.242(3).質量数142(27.2(5)%),143(12.2(2)%),144(23.8(3)%),145(8.3(1)%),146(17.2(3)%),148(5.7(1)%),150(5.6(2)%)の7種の安定同位体と,質量数124~161の放射性同位体が知られている.1842年,C.G. Mosanderが新元素を発見したとして,性質がランタンと“双子のように”似ていて一緒に存在していたことから,ギリシア語の双子を意味するδιδυμο(didymos)によってジジム(didymium)と名づけたが,1885年に至り,C.F. Auer von Welsbach(ウェルスバッハ)がこれをさらに二分割して,一方をギリシア語の“新しい”νεο(neos)とMosanderの“双子”を併せてneodymiumと命名した.他方はプラセオジムである.日本語名はドイツ語の元素名(Neodym)の音訳.
モナズ石,バストネス石(バストネサイト)などに存在する.地殻中の存在度16 ppm.希土類元素全般の主要産出国は中国で約98%(2007年)を占めている.希土類埋蔵量首位は中国30%,ついでロシア諸国22%,アメリカ15%.金属は1000 ℃ 以上の高温におけるフッ化物のCaによる還元,または塩化物の溶融塩電解で得られる.淡黄銀白色の金属.α(六方最密)と862 ℃ 以上のβ(体心立方格子)の二変態がある.密度7.007 g cm-3(20 ℃).融点1021 ℃,沸点3068 ℃.標準電極電位 Nd3+/Nd - 2.32 V.第一イオン化エネルギー5.525 eV.希酸,熱水に可溶.空気中(室温)で酸化され酸化皮膜をつくる.酸化数3.Nd3+ の電子配置は4f 3で常磁性.NdⅢ化合物の色は赤~赤紫が多い.水溶液も同様.
Nd2O3は青(紫)色で,これを含むガラスはネオジムガラスとよばれ,580 nm 付近(黄色)の光線を吸収するので電球用やガラス細工用眼鏡に使われる.リン酸塩,フッ化物,シュウ酸塩は水に難溶.Nd:YAG(Nd:Y3Al5O12)はレーザー用ドーパント.1982年に日本で発明・開発されたNd2Fe14Bは,現在,最強の永久磁石(商品名ネオマックス)([別用語参照]希土類磁石)であり,コンピューター・ハードディスクドライブ,携帯電話用振動モーター・スピーカー,MRI装置,電気自動車駆動用モーター,放射光挿入光源(アンジュレーター)用など多方面に利用されている.[CAS 7440-00-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
周期表第ⅢA族,希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1885年オーストリアのF.vonウェルスバハが,それまで単一元素とされていたジジムdidymiumを二つの新しい元素に分けることに成功し,一つをプラセオジム,他を新しいジジムneodidymiumと名づけたが,現在ではネオジムと称することになった。主要鉱石はセル石,モナザイト,バストネサイト,ガドリン石などである。銀白色金属で,展延性がある。空気中では徐々に酸化物の皮膜をつくる。熱水と反応して水素を発生する。水素,窒素気流中で加熱すると,直接化合して水素化物,窒化物を生ずる。無水塩化物の溶融塩電解,あるいはフッ化物のリチウム-マグネシウム合金などでの還元によって,かなり高純度の金属となる。通常3価の化合物が得られ,固体および水溶液は赤紫色を呈する。常磁性。固体レーザー,合金添加剤など,金属工業,電子材料,磁性材料などへの応用分野が開発されつつある。酸化ネオジムNd2O3はガラスの赤紫着色剤に用いられる。
執筆者:中原 勝儼
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元素記号 | Nd |
原子番号 | 60 |
原子量 | 144.24±3 |
融点 | 1020℃ |
沸点 | 3100℃ |
比重 | 六方;6.80 立方;7.007 |
結晶系 | 六方>868℃ 立方 |
元素存在度 | 宇宙 0.77(第53位) (Si106個当りの原子数) 地殻 28ppm(第28位) 海水 2.5×10-3μg/dm3 |
周期表第3族に属し、希土類元素の一つ。1885年オーストリアのウェルスバハは、それまで元素と考えられていたジジムdidymを二つの成分に分けることに成功し、その一つをギリシア語のneos(新しい)とdidymos(双子)からネオジジムと名付け、のちにネオジムとなった(他の一つはプラセオジム)。おもな鉱石はセル石、モナズ石などである。無水塩化物を融解塩電解するか、アルカリ金属で還元して銀白色の金属が得られる。展性、延性がある。空気中室温で表面は酸化被膜で覆われる。ハロゲンと直接化合し、水には徐々に、熱水や酸には水素を発して溶ける。化合物は普通、酸化数Ⅲで、多くは赤色または紫色を呈する。用途はガラスの着色剤やレーザーの活性剤などである。
[守永健一・中原勝儼]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…1880‐82年ハイデルベルクのR.W.ブンゼンのもとで希土類元素の研究を始め,生涯その研究に没頭した。希土類のジジムは2種の元素の混合物と予想されていたが,85年彼はその分離に成功し,プラセオジムとネオジムと命名した。1907年にはG.ユルバンと独立にイッテルビウムとルテチウムとを分離した。…
※「ネオジム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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