バイオエシックス(英語表記)bioethics

翻訳|bioethics

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

バイオエシックス
bioethics

生命倫理のこと。ギリシア語のビオス (生命) とエシィケー (倫理) を組合せた用語で,医学・医療,生命科学生体工学などから生れる倫理問題をいままでの専門分野の枠をこえて,相互に協力しあう形で総合的にとらえ,人間性の真の回復をはかることを理念としている。 1970年代の初めから主としてアメリカで発達してきたが,その一つの成果として,1978年に『バイオエシックス百科事典』がジョージタウン大学ケネディー研究所バイオエシックス研究センターから刊行された。近年,生命科学や医学の発達に伴い臓器移植脳死体外受精,ターミナルケア,尊厳死など倫理にかかわる問題が続出し,日本でもバイオエシックスに対する関心が高まりつつある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵の解説

バイオエシックス

生命倫理」のページをご覧ください。

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディアの解説

バイオエシックス

〈生命倫理〉と訳される。医療や医学研究の行動基準のほか,生命科学や先端医療についての倫理問題を総合的に研究する新たな学問で,医学,看護学,社会学,哲学,神学など幅広い分野にわたる。 1960年代後半から形成されてきた学問で,この時代に米国で医療問題が大きな議論を呼んだことが背景にある。まずは,植物状態の患者の生命を人工装置で維持できるようになったことで,死の定義をめぐって論争が起きた。1966年にはハーバード大学医学部のヘンリー・ビーチャー医師が,被験者の同意を得ずに行われていた臨床試験への疑問を投げかけ,一般の関心が高まった。その後,人工授精体外受精など不妊治療のあり方や,ヒトゲノム解析計画をはじめとする遺伝子の解明,クローン技術の登場など,次々とバイオエシックスにかかわるテーマが増えている。 最近では,臨床医学・看護に焦点を合わせた臨床バイオエシックスという研究分野も進んでおり,米国の医学教育として定着しつつある。→生命倫理法

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典の解説

バイオエシックス

 生命倫理ともいう.生命をどのように価値づけるかに関する学問領域.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

大辞林 第三版の解説

バイオエシックス【bioethics】

生命科学の進歩によって出生と死への人為的介入が可能になった結果生じた、新しい倫理的諸問題に対処する応用倫理学の一分野。人工受精・妊娠中絶・脳死ならびに臓器移植などの問題について論じる。患者の自己決定権などをめぐる医療倫理とも関連。生命倫理。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

バイオエシックス
ばいおえしっくす
bioethics

生命を意味するバイオbio、と倫理を意味するethicsの合成語で、生命倫理あるいは生物倫理と訳すのが妥当であろう。内容的には、生命に関する倫理と、生物学の基本原則にたつ倫理という二様のとらえ方ができる。ここでは、主として前者について述べる。
 生命に関する倫理は、これまでは「医師の倫理」あるいは「医療の倫理」とよばれていたものであるが、医療の科学技術化の発展と人権意識の高揚とが相まって、より広い立場から、生命、とくに人間の生命に対する干渉の是非を検討しなければならなくなったという背景をもっている。かつての医療者は、病人、すなわち自分の身体的な問題を自ら解決する手段をもたず、また、そのために不安に陥っていることを特質とする者からの援助の要請にこたえるため、役割上全能の救助者として行動し、それを内面から支えるのを医療の倫理と考えてきた。さらに社会的には、すべての判断や処置を患者のために行うこと、患者のプライバシーを守ることなどを基本にした倫理綱領を同業者相互で確認することによって、業務独占、あるいはほとんど無条件での信頼関係を得ていた。医療の倫理の提唱者でもあったヒポクラテスによる「ヒポクラテスの宣誓」や、世界医師会World Medical Associationが医師としての行動規範を定めた「ジュネーブ宣言」(1948)は、その代表的なものである。
 しかしながら、医療が人権にかかわるものであることが認識され、さらに技術的性格が強くなったことから、一方においては患者の主体性が明らかとなり、他方では知識や技術内容の公開性が前面に出ることとなった。このため、無条件の信頼関係は、条件を明らかにしての契約関係に近づいたわけである。これまでは明文化されず、主治医の脳裏にのみあった診療についての判断や意志決定は、論理的に説明することが求められる。たとえば、行動異常のある者に対して強制的な入院、与薬、脳手術などを行うことの当否もその一つである。また、安楽死をはじめ、脳死や植物状態にある患者に対する治療継続の適否、臓器移植、体外受精、出生前診断、人体実験など、これまでの倫理学説でも意見の分かれた諸問題も深くかかわってくる。
 最近は、遺伝子組換えや行動科学など、従来の医学の領域を超えた部分で開発される技術が社会的に大きな影響をもつようになってきたため、バイオエシックスの研究は、ますますその重要性を増している。アメリカでは大統領直属の委員会が設けられているほか、多くの医学や生物学の研究組織に倫理委員会が設けられ、基本的原則の検討をはじめ、個別的適用範囲とその管理といった運用面での具体化も進められている。イギリスにもほぼ同様な組織が展開され、実際に活動段階となっている。
 なお、生物学の基本原則にたつ倫理という面では、分子遺伝学や動物行動学からの発言がさまざまになされているが、賛否両論あり、一定の方向をみいだすにはまだ時間がかかると思われる。[中川米造]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ミレニアル世代

《millennialは、千年紀の、の意》米国で、2000年代に成人あるいは社会人になる世代。1980年代から2000年代初頭までに生まれた人をいうことが多く、ベビーブーマーの子世代にあたるY世代やデ...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

バイオエシックスの関連情報