1955年7月に出された〈ラッセル=アインシュタイン宣言〉の呼びかけを具体化するものとして,第1回の会議がカナダ,ノバ・スコシア州のパグウォッシュで開かれた。以来,年1~2回の割合で世界各地で開かれてきているが,最初の開催地にちなんでパグウォッシュ会議と呼ばれている。正式には,〈科学と世界問題に関する会議Conference on Science and World Affairs〉という。
〈宣言〉は冷戦が極点に達しているときに水素爆弾が出現し,核戦争の危機が間近に迫っていることを憂慮した,B.ラッセル,A.アインシュタイン,湯川秀樹ら11名の科学者が,〈人類が直面する悲劇的な情勢〉を克服するため,国家やイデオロギーを超えて〈ヒトという種の一員として〉集まり,〈世界の諸政府に,彼らの目的が世界戦争によっては達成されないことを自覚し,このことを公然とみとめるよう勧告する〉決議を出すよう訴えたものである。第1回パグウォッシュ会議は,ラッセル,湯川ら5名の招請で開かれ,朝永振一郎を含む22名の科学者が東西から集まり,声明を発表した。〈会議〉の組織運営は,非政府組織であるパグウォッシュ評議会が行っている。これに呼応して1962年湯川,朝永,坂田昌一が中心となり〈科学者京都会議〉がつくられた。なお,日本では75年8月,京都で第25回パグウォッシュ・シンポジウム〈完全核軍縮への新しい構想〉が開かれた。95年,創設メンバーのイギリスの物理学者J.ロートブラットとともに,組織としてノーベル平和賞を受賞。
執筆者:豊田 利幸
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科学と世界問題を議題とする科学者の国際会議。核軍拡に危機意識を抱いたイギリスの哲学者バートランド・ラッセルの呼びかけに応じて,日本を含む10カ国の科学者たちが1957年7月にカナダのパグウォッシュで開催したのが始まり。他の場所で開催された後続の諸会議をも含めて,パグウォッシュ会議と呼ばれる。
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…生物兵器には,(1)ペスト菌,コレラ菌,天然痘ウイルスなどの急性致死兵器,(2)感染性が高く一時的に活動力をうばうQ熱クラミディアなどの非致死的〈人道的〉兵器,(3)いもち病菌,あかさび病菌などの植物病原菌,口蹄疫などの家畜伝染病病原体などがあり,戦略・戦術に応じた微生物を生物兵器として選択できる。1959年のパグウォッシュ会議では,生物兵器として使用される微生物がそなえる性質として,(1)強い毒力と感染性をもつ,(2)貯蔵や散布が可能,(3)予防が困難,(4)病気の診断が困難,(5)薬剤に耐性をもつ,の5点をあげている。 生物兵器を使用するためには,生きた微生物を目標に到達させねばならない。…
…男女両性の平等と自由恋愛を主張しただけではなく身をもって実践した。第1次大戦に反対してケンブリッジ大学から追放されただけではなく,投獄の憂目にもあったが,ビキニの水爆実験(1954)以来核兵器廃絶運動に身を挺し,アインシュタインとともにパグウォッシュ会議を主催し(1957年以降),イギリスにおいて〈百人委員会〉を組織したりした(1960)。またアメリカのベトナム戦争に反対してサルトルらと〈ベトナム戦犯国際法廷〉を開いてこれを糾弾した(1967)。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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