ドイツの詩人。ハルツ地方にルター派の牧師の子として生まれ、ハレ大学で神学を、ゲッティンゲン大学で法学を修める。同大学の無給講師、下級官吏、レーオンハルト姉妹との不倫な重婚関係など物心両面にわたり不遇な生涯を送る。詩人としてはゲッティンゲン詩派同人として出発。ヘルダーのオシアン論に触れ、伝説、民謡などの大衆文学に開眼し、宗教詩を換骨奪胎するパロディーの手法で民間伝承の物語詩を底本にした譚詩(たんし)『レノーレ』(1774)を発表。近世バラード史上、最高傑作の一つと目される。ほかにラスペの英語本のドイツ語訳『ミュンヒハウゼン物語――ほら男爵の冒険』(1786)の作者としても名高い。
[新保弼彬]
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…都市法の規定では,その前身のいかんを問わず,都市に在住して満1ヵ年を経過すれば自由となれるという,いわゆる市風自由Stadtluft macht freiの原則がうたわれていた。
[市民身分と市民意識]
中世都市がこのような自治を確立し,〈市民(ビュルガーBürger,シティズンcitizen)〉というまったく新しい社会階層を構成メンバーとする共同体となる経緯は,地域により時代によってまちまちであるが,その最初のきっかけをなしたのは,司教,大司教を都市領主とするライン川沿岸ならびに北イタリアのロンバルディア諸都市における反封建的または反領主的な暴動であり,その運動のイニシアティブをとったのは,アルプス以北にあってはもっぱら遠隔地商人の団体であった。遠隔地商人は前述のようにすでに10世紀の後半から各地に現れて組織的な活動を始め,封建領主の保護下に,ブルクや教会の近傍にある地の利を得たところにウィクWikと呼ばれる特殊な定住区をつくり出していた。…
…南フランスの風土の精気を昇華させて独特のファンタジーを生んだボスコH.Boscoの諸作品も見逃すことはできない。
[ドイツ]
ドイツではJ.B.バゼドーの主唱に呼応してコンペJ.H.Compeが1776年に《小さな子ども文庫》を出したのがはじめで,ややおくれてG.A.ビュルガーが1786年にラスペR.E.Raspeの作に手を入れた《ミュンヒハウゼン男爵の冒険(ミュンヒハウゼン物語)》をあらわし,ゲーテにつづくロマン派の人々が,民話の収集にあたっている。その所産がブレンターノとA.vonアルニムの《少年の魔笛》であり,グリム兄弟の《子どもと家庭のための昔話集》であった。…
…素材の多くはむしろ民間伝承的なものだが,断片的逸話類を集成しミュンヒハウゼンの名と初めて結びつけて英語版を発表したのは,亡命ドイツ人ラスペRudolf Erich Raspe(1737‐94)である(初版1785)。ルキアノスの《ほんとうの話》の抜粋翻案等をつけ加えたその第2版を,ドイツ語に翻訳し独自に筆を加えて,機知と諷刺に富んだほら話の古典的傑作としたのはビュルガーである(《Die Wunderbare Reisen zu Wasser und zu Lande,Feldzüge und lustige Abenteuer des Freiherrn von Münchhausen》初版1786)。その後もインマーマンの長編小説や,ハーゼンクレーバーのドラマ,ケストナーの映画台本など,〈ミュンヒハウゼン〉をテーマとした文学的作品は少なくない。…
※「ビュルガー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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