デジタル大辞泉
「フリースクール」の意味・読み・例文・類語
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フリースクール
不登校 や引きこもりの子ども を受け入れ、学習の機会や安心して過ごせる居場所 を提供する民間の教育機関。規模や運営方針は各スクールによってさまざまで、NPO が運営するケース が多い。学校教育法 第1条が規定する「学校」ではないが、一定条件を満たせば、フリースクールに通っている期間を、在籍する学校の校長が出席扱いにできる。
更新日:2016年9月30日
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フリー‐スクール
〘 名詞 〙 ( [英語] free school ) 教科の選択などに生徒の自主性を重視する学習法を行ない、従来の学校のような管理や評価などを行なわない教育施設。
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フリースクール フリースクール free school
伝統的な学校教育に伴いがちな義務,管理,権威といったいっさいの強制的圧力から子どもを解き放ち,全面的に個人の主体性を信頼し要求 を尊重 した,自由で個性 的で民主主義的教育の実現をめざす学校の総称。ニイルNeil,A.S.が1924年にイギリス に開設した男女共学 ,寄宿制の私立学校 ,サマーヒル学園Summerhill schoolにその源流を求めることができる。1960年代後半から1970年代にかけて,アメリカを中心に伝統的な学校教育を批判し,それに代替する新しい学校のあり方を多様に模索したオルタナティブスクールalternative school運動が勃興する。その一つの流れとして1968年開校のサドベリーバレースクールSudbury valley schoolなど,サマーヒルに影響を受けながらも独自な実践を展開するフリースクールがアメリカ各地に開設された。日本でも1980年代半ばからサマーヒルに範を求めるフリースクールが模索されるが,1992年開校のきのくに子どもの村学園(和歌山県橋本市)のような正規の私立学校(学校教育法第1条に該当する,いわゆる1条校)が生まれる一方で,私塾のような形での開設も相次いだ。そこに不登校の子どもが多数集まったことから,1990年代には不登校の子どもに居場所を提供するとともに学習や生活の自立を支援する民間施設を,広くフリースクールとよび習わすようになった。したがって,その中には欧米におけるフリースクールとは異質な取り組みも少なからず含まれている点に留意する必要がある。
フリースクールは,授業への出席それ自体から子どもの意思に委ねる,指導上の必要から教師に最低限 付与される権威も排除するなどの点において,同じく児童 中心主義の立場に立つオープンスクール open schoolなどと比べても,いっそう急進的で徹底した取り組みといえる。その一方で,学校を共同体とみなし,すべてのおとなと子どもが対等な立場で自治的に運営することを重要視してきた。そこでは,自由で自立した個人だからこその責任ある関与が求められ,これが子どもの学習者,生活者としての自立を促すと期待されている。フリースクールでは,この自由の徹底と自治への参画という二つの特質の絶妙な組み合わせにより,自由と責任,個性と公共性の調和的実現が可能になると考えられてきたのであり,その意味でデモクラティックスクールdemocratic schoolとよばれることもある。フリースクールは子どもの要求を最優先に考え,最大限応じようとするが,それは子どもを顧客とみなし,個々人が求める教育サービスを一種の商品として提供しようとする動向とは大いに異なる。
フリースクールは,従来の学校とは大きく異なるがゆえに課題も多い。まず,授業への参加や学習内容の選択が子どもの意思に任せられるため,教師には高度な力量が求められる。また,子どもにも主体性や創造性,積極的に学ぶ姿勢 が求められる。サマーヒルでも授業への参加に消極的なため,卒業までに基礎的な学習能力を獲得できない子どもが存在した。さらに,個々の子どもの多様な要求にていねいに応えていこうとすると,教材,教具,施設・設備に関する要求も高くなりがちだが,フリースクールの多くは小規模な私立学校であるため,財政的な問題が生じやすい。これについては,1991年にミネソタ州 で始まり ,のちにアメリカ全土に広がっていった公設民営学校制度であるチャータースクールcharter school制度の利用が,現在では有望な選択肢 となっている。 →オープンスクール →カリキュラム
〔奈須 正裕〕
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フリー・スクール ふりーすくーる free school
子供の自主性と発言権の尊重を理念とする私的な学校。
アメリカでは、19世紀までのこの用語の意味は「私立・無償の慈恵学校」をさすものであった。1960年代以降は、社会活動団体やカウンター・カルチャー・グループ(対抗文化集団)によって設立された短命の教育施設をさしたが、これらは旧来の学校の権威を否定し、教育上の賞罰を廃止するなど、脱学校を特徴としていた。
日本では、不登校や登校拒否 の児童・生徒のために、学校外での学習や交流活動を組織・支援する施設をさす。いわば、既存の学校にかわる新たな学校形態の可能性として、個人や団体が維持設置する教育施設をさすもの、あるいはこれらの施設が自称するものとなっている。1985年設立の東京シューレ(奥地圭子(おくちけいこ)主宰)は、日本におけるこの種の施設の先駆けとなり、『不登校新聞』の発行など活発に活動する。
不登校・登校拒否などの激増につれて、これらは子供の学校不適応が問題ではなく、学校側の不適応が問題とされ始めた。こうした動きのなかで、1990年代ごろから全国各地にフリー・スクールが誕生した。また同時に、教育委員会の管轄する教育研究所や教育相談所などで不登校児の学校外学習の機会を提供し、その学習をもって、正規の学校の学習時間とみなすなどの措置も広がった。これらは、社会が当然視してきた正規の学校による学習内容、規律、児童生徒像などの改変を求めているものと考えられる。自宅で学習し、学校に行かずに自己成長しようとするホーム・スクーリングhome schoolingが正規の制度とされていない日本の現状のなかで、こうした取組みは応急的、臨時的な性格をもっているとはいえ、将来的には既存の制度からフリーな学校、新しいタイプの学校群が登場する素地をなすであろう。
[神山正弘]
『大田堯著『なぜ学校へ行くのか』(1995・岩波書店)』 ▽『清水満著『生のための学校――デンマークで生まれたフリースクール「フォルケホイスコーレ」の世界』(1996・新評論)』 ▽『増田ユリヤ著『「新」学校百景――フリースクール探訪記』(1999・オクムラ書店)』 ▽『リンダ・ドブソン、相沢恭子著『Q&Aたのしいホームスクール――学校・不登校・フリースクールではない第4の選択』(2000・現代人文社)』 ▽『学習研究社編『学校が合わないときの居場所探し――不登校からのフリースクールガイド 2000~2001年版』(2000・学習研究社)』
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フリースクール free school
従来の学校教育の枠にとらわれず,子供の自由と自主性の尊重を原則とする学びの場。1920年代の進歩主義教育 運動の流れのなかで,子供の要求を徹底的に尊重する自由主義教育を主張したイギリスの教育家アレクサンダー・S.ニール が創設し,世界でいちばん自由な学校といわれたサマーヒル・スクールがその典型。ドイツのシュタイナー学校 ,アメリカ合衆国のクロンララ・スクールなどもこの流れをくむ。日本では,ニールやルドルフ・シュタイナー などの思想を学んだ人たちが既存の学校教育とは異なる教育を目指して設立したものと,深刻化した不登校 に対応するために親たちの手で任意に設立されたものとの二つの流れがあり,1980年代後半から急増した。非営利組織 NPOの事業によるもの,社会教育施設が場を提供しているものなど,さまざまな形態がある。文部科学省はフリースクールに通った日数,インターネットで自宅学習した日数を学校の出席日数として認めた。2001年に NPO法人フリースクール全国ネットワークが設立された。
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百科事典マイペディア
「フリースクール」の意味・わかりやすい解説
フリー・スクール
自由な発想で,自由な教育を行う民間組織の学校のこと。子どもの個性を尊重し,適性を見出すことに重点をおく。週に数回通う塾のようなタイプ,全寮制のタイプなど,形態もさまざま。深刻化するいじめ や,登校拒否 の児童・生徒の増加とともに,全国各地に急増した。こうした動きに対し,文部省も,いじめや登校拒否は個人や家庭の問題だけでなく,学校や社会全体のあり方にかかわる問題ととらえ,学校以外の教育施設の必要性を認めるに至った。学校の中には不登校児童のフリー・スクールでの出席日数を,原籍学校の出席日数として数えるところも出てきており,受入れ姿勢が柔軟になりつつある。
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世界大百科事典(旧版)内の フリースクールの言及
【オルタナティブ・スクール】より
…しかし,alternativeという語には〈思想や行動における重要な変化〉というニュアンスがあり,従来の学校教育とは異なった学校を意味する。この種の試みは,近代には〈[新教育]〉運動などの形で不断にあったが,オルタナティブ・スクールは,1960年代後半にアメリカに起こったフリー・スクールfree school,オープン・スクールopen school,〈壁のない学校〉などとさまざまな名称で呼ばれる学校教育改善の営為を指している。1957年のソ連の大陸間弾道弾,人工衛星打上げの成功に衝撃(スプートニク・ショック)をうけたアメリカは,科学教育を中心に教育・研究の急速かつ全面的な向上をはかった。…
※「フリースクール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」