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ブルーカラー・ホワイトカラー ぶるーからーほわいとからーblue-collar white-collar

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ブルーカラー・ホワイトカラー
ぶるーからーほわいとからー
blue-collar, white-collar

職業分類のための概念。ブルーカラーホワイトカラーとは対比的に用いられる。語源的には、ブルーカラーは仕事中の汚れや傷みに備えて青いじょうぶな作業服に着替えるのに対して、ホワイトカラーは就業中も生活着である白いワイシャツを着用しているという外見上の差異をそのまま職種の名称としたものである。[杉 政孝]

ブルーカラー

企業組織に雇用されて働く賃金労働者のうち、製造業、建設業、鉱業などの生産現場で直接に生産工程や現場作業に従事する現業系の労働者をさす。ブルーカラー労働者の仕事は、直接に物の生産に携わる肉体労働であることが特徴である。
 ブルーカラー労働者が初めて大量に出現したのは、19世紀後半の産業革命以降発展した機械制大工業においてであった。そこでは、徹底した分業と流れ作業方式の採用により、それ以前の家内工業や工場制手工業の段階で生産活動の主軸となっていた職人的熟練労働者にかわって、大量の半熟練および不熟練労働者が新しい主役となった。そこでのブルーカラーの労働は、効率の最大化をねらう合理主義的な管理体制のもとで、単能的反復作業に典型的にみられるように、一方では機械の配置や速度に規制され、他方では監督者の管理下に置かれて、労働における自由と主体性は大幅に制約された。
 しかし、そのようなブルーカラー労働における自由と主体性の制約と引き換えに、生産性は飛躍的に向上し、コストの低い大量生産が可能となり、物質的には豊かな大量消費社会を生み出すことができた。消費者としてのブルーカラー労働者は、家族とともにその恩恵にあずかり、生活水準を向上させることができたが、生産者としては、労働における主体性の制約と労働分配率の低さに不満感を抱き、資本家や経営者に対立するイデオロギーに触発されて、労働組合活動や反体制的な政治活動に走る者も少なくなかった。
 高度産業化社会の生産現場が大量の半熟練および不熟練のブルーカラー労働者によって支えられていることは確かであるが、高度の熟練労働がまったく不要になったわけではない。高度化するコンピュータ技術や半導体を現場の生産労働に適用するための基本設計とその実施には、専門技術者と協力して実際の作業手順に具体化し、労働者を教育指導する新しいタイプの職長的リーダーの役割が不可欠である。ここでは、単なる熟練ではなく、かなり高度の専門的知識と技術の裏づけをもつ新しいタイプの熟練が期待されている。また、おもに中小規模の製造業の一部で、大量生産化されないきわめて高度の熟練労働が伝承されている事実にも注目しておきたい。たとえば、精密な工作機械製造のための金型製作や、天体観測用の巨大口径レンズの超精密研磨加工などにみられるように、職人的な高度の熟練技能と近代的なテクノロジーが結合されて、量的にはかならずしも多くない特殊な専門的需要にこたえている。今後もこのような特殊な高度の熟練労働の存在意義はなくならないはずで、市場経済のなかにおけるその存続と技能の後継者の育成とが課題となろう。[杉 政孝]

ホワイトカラー

私企業や行政機構などの組織体に雇用されて働く賃金労働者である点ではブルーカラーと同じ立場にあるが、ホワイトカラーは、物の生産に直接にはかかわらない非現業的職種に携わる。具体的には、専門的・技術的職業、中・下級の管理的職業、事務的職業、販売的職業、対人サービス職業などが主体であり、各種のシンボルや人間を対象とする知的な精神労働であることが、ホワイトカラーの仕事の特徴である。
 19世紀後半から20世紀前半にかけて急速に発展した初期の産業化社会は、機械制大工業を基盤とする第二次産業中心の工業社会であり、その段階ではまずブルーカラー労働者が急増した。ついで、20世紀中葉以後の高度産業化の段階に進むと、ホワイトカラーは、質的に多様化するとともに、量的にも急増し、多くの先進国においてブルーカラーの数を上回るようになった。とくに、職場組織の大規模化と官僚制化による管理スタッフの増大、大量消費社会の成熟に伴う流通、広告、販売関連職種の拡充、行政機構の肥大化と社会保障施策の充実に伴う公共サービス従業者の増大、IT(情報技術)の発達による情報社会化が、第三次産業の急速な発展を促したことが、多様かつ大量のホワイトカラーを生み出す誘因となった。[杉 政孝]

階層帰属意識

社会的地位序列構造のなかにおける両職種の位置づけをみると、20世紀前半ごろまでは、ブルーカラーとホワイトカラーはともに雇用されて働く賃金労働者である点では同じ立場にありながら、社会的には所属階層を異にし、ブルーカラーの大半は下層への帰属を意識していたのに対して、ホワイトカラーには中流階層への帰属感をもつ者が多かった。このような両職種間の所属階層意識の違いは、おもに学歴、賃金および昇進の可能性の差異に由来すると思われる。すなわち、大部分のブルーカラーの学歴は義務教育段階にとどまり、賃金などの労働条件や管理的地位への昇進の可能性についても、ホワイトカラーより不利な立場に置かれていたのに対し、ホワイトカラーの大部分は、中等以上の学歴をもち、賃金水準もブルーカラーよりは高かったし、管理的地位への昇進も期待できたからである。とくに高学歴をもつホワイトカラーのなかには、上級管理職や経営層への昇進までも期待する者も多く、このような上昇志向は彼らのなかに目標としての上流階層への帰属意識をはぐくむこととなった。
 確かに、ブルーカラーとホワイトカラーは、どちらも雇用されて働く賃金労働者という同じ立場にある者として、資本家階級に対立する階級イデオロギーを共有する可能性もある。事実、旧日本労働組合総評議会(総評)系などの労働組合においてブルーカラーとホワイトカラーの共闘の例がみられた。しかし、中・上流階層への帰属感をもつ者が大勢を占めるホワイトカラーは、労働組合活動においても、ブルーカラーと連帯して反体制的な政治活動まで踏み込むことはせず、賃金などの条件闘争にとどまる場合が多かった。わが国では、ブルーカラーを工員、ホワイトカラーを職員とよぶ慣行があったが、それは階層区分にさらに一種の身分差別を加味した概念であり、ブルーカラーとホワイトカラーとの社会的地位序列構造における共通性、連帯性よりは両者の異質性のほうがより強く意識されていたことを示す。[杉 政孝]

格差の解消と新しい中間層の出現

1970年代以後の高度産業化段階に進むと、ブルーカラーとホワイトカラーとの間にあったこのような格差はしだいに消滅していった。ブルーカラーの職場である生産現場でも、ホワイトカラーの職場である事務・流通・販売・サービスの職場でも、コンピュータやIT技術を駆使する技術革新が積極的に導入された。その結果、労働の機械化、自動化が進み、ブルーカラーの仕事のかなりの部分が、単純な肉体労働から監視・判断労働に置き換えられ、一方、ホワイトカラーの職場では、簡単な事務系作業を中心に定型的な機器操作業務が急増し、サービス業務でもマニュアル(手引書)による定型業務が増加するなど、両者の間の差異はあいまいになりつつある。両職種の間の学歴格差も平準化しつつある。とくに高学歴化が急速に進んだわが国では、義務教育だけで終わる低学歴層は労働力人口のなかでは事実上存在しなくなった結果、ブルーカラーと下層ホワイトカラーの間の学歴格差は若年層を中心に消滅しつつある。両職種の賃金水準の平準化とも相まって、ブルーカラーとホワイトカラーの間に存在していた非連続的な地位格差は徐々に消滅し、ホワイトカラーの下層部とブルーカラーはむしろ同質の重複部分とみられるようになった。それを、ホワイトとブルーの中間色という意味でグレーカラーとよぶこともあるが、わが国ではこの呼称は実際にはあまり普及しなかった。
 20世紀中葉以後のわが国では、社会全体の大衆化状況とも関連させて、ブルーカラーとホワイトカラーをことさら区別することなく、両者をまとめてサラリーマンあるいは会社員とよぶ呼称が、マスコミを中心に普及している。この呼称は、学問的にはかならずしも明確に定義されたものとはいいがたいが、都市型の新中間層として近未来の社会と政治の動向を規定する重要な存在となる可能性がある。[杉 政孝]

ホワイトカラーの両極分解

わが国を含む先進社会においては、ホワイトカラーは、下層部についてはブルーカラーとの同質化が進む一方、上層部については、下層部との間の異質性が注目されることにより、ホワイトカラーの両極分解ともいうべき新しい状況が生まれつつある。量的に急増してきたホワイトカラーは、その属性および就労形態において多様化が進み、たとえば官僚の世界におけるキャリア、ノン・キャリア(国家公務員種試験合格者とそうでない公務員の俗称)の二重構造にみられるような、報酬、昇進、権限、威信の不平等を含む両極への分解傾向が顕著になりつつある。わが国の職場における人事管理は、性別、学歴別、年功昇進慣行を重視する伝統的な方式から、男女平等と能力主義を原則とする近代的な方式に移行しつつあるが、この時代の潮流のなかで、ホワイトカラーにおけるこのような二重構造が具体的にどのような展開をみせるかが注目される。[杉 政孝]
『C・W・ミルズ著、杉政孝訳『ホワイト・カラー』(1957・東京創元社) ▽富永健一編『日本の階層構造』(1979・東京大学出版会) ▽小池和男著『日本の熟練――すぐれた人材形成システム』(1981・有斐閣) ▽神代和欣・桑原靖夫編『現代ホワイトカラーの労働問題』(1988・日本労働協会) ▽森清著『ハイテク社会と労働――何が起きているか』(岩波新書) ▽小池和男編著『大卒ホワイトカラーの人材開発』(1991・東洋経済新報社) ▽小池和男著『アメリカのホワイトカラー――日米どちらがより「実力主義」か』(1993・東洋経済新報社) ▽犬塚先編『新しい産業社会学――仕事をとおしてみる日本と世界』(1997・有斐閣) ▽加藤正治著『現代ホワイトカラーの管理と労働――企業労働の理論的・実証的研究』(2000・法律文化社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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