ラテン語で〈恩恵〉ないし〈好意〉を意味する。メロビング朝時代には,恩恵の対象である土地もベネフィキウム(恩貸地)の名で呼ばれるようになる。ベネフィキウムは恩恵的貸与であるため,しばしばプレカリア(貸与,貸与地)と同義で用いられた。保有者は一定期間(通常終身)の用益権を認められる代りに,なんらかの貢納や奉仕を義務づけられた。カロリング朝諸君主が教会領の大規模な収公を行って,それを臣下に軍事義務と引換えにベネフィキウムとして譲与して以来,ベネフィキウムは,しだいに従臣の生活を物的に保障する封土とみなされるようになる。9,10世紀には,ベネフィキウムの授与は領主諸階層のあいだにも広く浸透していったが,これは同時に従臣の権利の強化を伴った(封土の世襲,自由処分権の獲得)。11,12世紀になると,法律文書では,封土を表す用語として一般にフェオドゥムfeodumが用いられるようになり,ベネフィキウムはしだいに姿を消してゆく。しかし,この頃からローマ・カトリック教会では,聖職禄を表示する言葉としてベネフィキウムが用いられるようになる。聖職者の経済生活を保障する必要から,聖職就任の際に封土の様式にならって,彼に授与される教会財産,収入の総体がベネフィキウムである。土地,十分の一税のほかに,たとえば小教区主任司祭の聖職禄としては,ミサのときの供物,収穫の初物,洗礼や埋葬の謝礼などがある。
執筆者:関口 寅彦
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…この場合,最初は土地所有権が与えられていたが,8世紀半ばごろからは〈借地権〉を与えるのが原則的な形になった。この借地権の形で家士に与えられた土地を〈恩給地〉(ベネフィキウム,フェオドゥムfeodum,レーンLehen)と呼び,この制度を〈恩給制〉と呼ぶ。借地権設定の方法が用いられたのは,次の事情によった。…
※「ベネフィキウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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