ベルト(伝動装置)(読み)べると(英語表記)belt

翻訳|belt

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルト(伝動装置)」の意味・わかりやすい解説

ベルト(伝動装置)
べると
belt

2個のプーリーに掛けて動力を伝える平帯状のもの。普通、牛の皮革を帯状にし、無端環状にして使用する。離れた2軸に取り付けられたプーリーにこのベルトを掛けて、ベルトとプーリー間の摩擦力を利用して動力を伝達する。2軸間の距離が大きく、歯車や摩擦車などでは回転を伝えるのが不適当な場合に使用される。平形の帯状をしたものを平ベルト、断面がV形のものをVベルトという。

 ベルトには革ベルト、ゴムベルト、織物ベルト、鋼(こう)ベルトなどがあるが、革ベルトは柔軟性に富み、耐久性もあるのでもっとも普通に使用されている。牛皮をなめしてつくった革ベルトは弾力性もあり、一級品では引張り強さは1平方センチメートル当り2万5000ニュートン程度である。平ベルトは皮革製のほかに綿、毛、麻、ゴムなどで織った織物ベルトが使用される。ゴムベルトは綿のベルトにゴムを塗り、耐摩耗性をよくしたもので、引張り強さは1平方センチメートル当り4000ニュートン程度である。Vベルトは紐(ひも)や布を芯(しん)としその周囲をゴムの層で覆いV形にしたベルトで、環状につくられ、数本を並べて掛けて使用する。軸間距離が小さいときに使用され、速度比は普通1対7程度とする。このほか革ベルトを短冊形に切り、それらを互いにピンで結合し、たわみ性をよくしたリンクベルト、厚さ0.1~0.2ミリメートル、幅80センチメートル以内の鋼帯を使用した鋼ベルトもある。

 ベルトの掛け方には平行掛けと十字掛けとがある。平行掛けは2軸の回転方向は同じである。けさ掛けまたはオープンベルトともいう。十字掛けは、軸は互いに反対方向に回転する。たすき掛けまたはクロスベルトともいう。平行掛けの場合、ベルトの下側は緊張し(張り側という)、上側はすこし緩む(緩み側という)ようにして回転を伝えることがたいせつである。これを逆にするとベルトは滑りやすくなる。

 ベルトとベルト車との間で滑らないとして速度比i
  i=NB/NA=DA/DB
で与えられる。ただしNANBは原動ベルト車、従動ベルト車の毎分回転数、DADBは原動ベルト車および従動ベルト車の直径である。速度比は普通1対6以下とする。これ以上の速度比の場合には、原動軸と従動軸との間に張り車を入れて、ベルトが滑るのを防止する。

[中山秀太郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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