デジタル大辞泉 「ベルト」の意味・読み・例文・類語
ベルト(belt)
2 二つの車に掛け渡して、回転を伝えたり物をのせて移動させたりするための帯状のもの。調べ革。調べ帯。「ファン
3 帯状をしている地域。ベルト地帯。「グリーン
[類語]バンド
翻訳|belt
ふつう,ズボンやスカート,あるいはドレスのウエスト部分を締める帯状の服飾具を指すが,スウォード・ベルト(剣帯)とかカートリッジ・ベルト(弾薬帯)のように特定の用途をもつベルトもある。バックル形式やフック形式の留具を用いることが多い。バンドbandとも呼ばれるが,これはウエストバンド,帽子のハットバンド,タキシードのカマーバンド(飾り腹帯)のように,衣服や帽子などに付属した独自の形態をしたものを指すことが多い。皮革,織物,編物,金属,合成樹脂などでつくられる。
先史時代,古代にあっては帯との区別は明確ではなく,たとえば中国古代の朝廷の服制の一つである革帯(かくたい)は,今日いうところの〈帯〉ではなく,むしろベルトに類するものである。帯の一端に環,他端に鉤を着装して衣服を留める習俗は,ヨーロッパでは新石器時代の終りころすでに行われていた。留具は当初は骨角製であったが,青銅器時代になって金属製となった。前7世紀ころからユーラシア内陸部を舞台に活躍するスキタイをはじめとする騎馬民族は革帯を用い,これに帯鉤(たいこう)と称する金属製の鉤のついたフック形式の留金具や,鉸具(かこ)と称する馬蹄形の金具に刺金(さすが)のついたバックル形式の留金具を着装していた。中国へはまず帯鉤とともに革帯がもたらされ,中国固有の布製の大帯とともに朝廷の服制としても用いられた。漢代になると帯鉤に代わって鉸具を用いた革帯が現れ,さらに六朝時代にはこれも北方胡族に起源をもつ装飾板(銙(か))を付した銙帯が伝えられ,隋・唐時代には品級や位階によって5種の銙が定められるなど,朝廷の服制として整えられた。日本では古墳時代に金銅製の銙帯が現れ,奈良時代に唐制にならって方形(巡方(じゆんぽう))と半円形(丸鞆(まるとも))の銙を組み合わせた革帯が官人の服制に採用されたが,平安時代には石製の銙帯(石帯)が用いられるようになった。
執筆者:石井 惇 古代エジプトでは,女性はチュニック風の着衣をまとい,幅の広い帯を巻き,その一端を前ばさみにして垂らした。またスカートを着用する際は,幅のあまり広くない帯を前結びにして長く垂らした。いずれも実用とともに装飾を兼ねている。キトンやトゥニカなどギリシア・ローマ時代の巻衣やチュニックは,1本ないし2本のベルトを用いて着丈を調節し,着衣の変化をつけた。またこの時代の北欧の女性は,ジャケットとスカートの二部式の着衣をまとい,青銅または金製のバックルを着装した房飾のあるベルトを用いていた。ケルト人やチュートン人の間では鉸具に類するバックル形式の留金具と革帯が用いられた。中世にはオーモニエールaumonièreという小袋をつるした細いベルトを締め,騎士は刀剣を,農民や職人は道具類を帯びた。この時代,ベルトは階級を表すものとして服装上,重要な位置を占め,貴族たちはさまざまな意匠をこらしたベルトを愛用した。17世紀にはサッシュ・ベルトsash beltと呼ばれるやわらかい幅広の布を用いたベルトが現れ,男子服のジュストコルに装飾として用いられて以来,ベルトの装飾性が強まった。18世紀末から19世紀にかけて女性のドレスにもベルトがつけられるようになった。人前では上着をとらず,またズボンの腰部がベストの裾でおおわれていた20世紀初期までの男子服には,ベルトはそれほど重要なものではなかった。背広が一般化し,シャツが上着のように着られるようになった20世紀後半には,重要な装飾品となり,材質や形も多様なものが現れている。なお,男女ともにコートや上着につけられる実用を兼ねた飾り帯もベルトと呼ばれ,ほとんどが共布を用いている。
→帯
執筆者:高山 能一+池田 孝江
機械部品として使用されるベルトは動力伝達用ベルトと輸送用ベルトとに大別される。動力伝達用ベルトはプーリーまたはベルト車と呼ばれる車に巻きつけて,原動機側のプーリーから従動機側のプーリーへ回転運動を伝達することができる。動力伝達用ベルトは断面形状が薄い長方形の平ベルト,三角形のVベルト,歯車のように外周に歯をもったプーリーに巻きつけて伝動する歯付きベルトがある。材質としては平ベルトには皮ベルト,織布ベルト,ゴムベルト,スチールベルト(鋼ベルト)などがあり,ゴム平ベルトにはコード平ベルトといって心体と呼ぶ合成繊維の糸の束を通して強化したものがある。Vベルトはゴムまたはポリウレタンエラストマーの本体に心体として合成繊維の束を通して強化した構造のものが多い。輸送用ベルトとしてはベルトコンベヤ用が代表的で,幅の広い平ベルトが使用され,ゴム製のものが多いが,食品工業などではステンレス鋼の薄板からできているスチールベルトも使用される。
→巻掛伝動
執筆者:北郷 薫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
衣類を締め付けたり、飾りとするために腰に回す紐(ひも)状や帯状のもの。バンドbandとほぼ同義であるが、バンドが締めたり巻き付けたりするもの全般をさすのに対し、ベルトは腰部に限られる。語源はラテン語のバルテウスbalteusで、肩にかける紐であった。男女、子供ともに実用、装飾両面から使用するが、婦人用は装飾的要素が強く、ウエストからヒップの間のさまざまな位置で体にあわせてバックルbackle、クラスプclasp、フックhook、ボタンなどで留めたり結んだりする。材料は革、織物、編物、金属、プラスチックなどで、色、形、サイズともに多様である。
現存未開民族の観察から類推すると、衣服らしきものの成立以前に、紐を腰に締め、採集物をつるしたりして使用した民族もあったと考えられ、ベルトは非常に古い時代から使用されたようである。古代エジプトの絵画や彫刻には、幅広の、装飾要素を加味したものがみられ、古代ギリシアでは、狭い紐状のものをキトンchitonの着装に用いた。中世には装飾的となり、12~13世紀には、金糸で精巧な模様を織り出した絹織物製、革にエナメルや貴金属や宝石などで装飾したものも現れた。前で留め、その先を膝(ひざ)下まで垂らし、端には房飾りや宝石、紋章などをつけて飾った。
中世から近世へかけて、女性のベルトには財布やオーモニエールaumônière(フランス語で布施袋の意)、鍵(かぎ)、本、ペン入れ、インキ壺(つぼ)、嗅(か)ぎたばこ入れなど、さまざまなものがぶら下げられ、持ち運ばれた。また騎士や兵士には剣帯としても重要であった。ルネサンス初期には概してシンプルになったが、その後ふたたび装飾化して庶民層にも波及したため、イギリスでは奢侈(しゃし)禁止令がたびたび出された。
16世紀中期に、細い金の鎖ベルトが流行し、日常服にまで及んだ。これを境にベルトは実用的な傾向となり、18世紀に男子服の基本がコート型になると、その装飾的要素はほとんど失われた。今日では、装飾的要素は、女性のベルトにだけみることができる。その種類は多く、使用目的、材料、加工、着用の形態などからくる名称があるが、おもなものを次にあげる。〔1〕ウエスト・シンチwaist cinch 婦人服のウエストを締める太いベルト。〔2〕ウエスト・ベルトwaist belt ズボンやスカートを留めるためにウエストに締めるもの。〔3〕ガーター・ベルトgarter belt 靴下留めのついたもの。〔4〕カーブ・ベルトcurved belt 体の形に沿うように曲線をもたせたもの。〔5〕コーセレット・ベルトcorselet belt
腹部から腰部に及ぶ幅広の装飾ベルト。〔6〕サスペンダー・ベルトsuspender belt ズボンつり、スカートつりのついたベルト。〔7〕サッシュ・ベルトsash belt 幅広で柔らかい、留め金のない装飾のための帯。〔8〕テーパー・ベルトtapered belt 中央が太く、両端にいくにつれて細くなっているもの。〔9〕ハーフ・ベルトhalf belt 背中につける装飾用ベルトで、マルタンガルmartingale(フランス語)とか背バンドとかよばれる。
[田中俊子]
2個のプーリーに掛けて動力を伝える平帯状のもの。普通、牛の皮革を帯状にし、無端環状にして使用する。離れた2軸に取り付けられたプーリーにこのベルトを掛けて、ベルトとプーリー間の摩擦力を利用して動力を伝達する。2軸間の距離が大きく、歯車や摩擦車などでは回転を伝えるのが不適当な場合に使用される。平形の帯状をしたものを平ベルト、断面がV形のものをVベルトという。
ベルトには革ベルト、ゴムベルト、織物ベルト、鋼(こう)ベルトなどがあるが、革ベルトは柔軟性に富み、耐久性もあるのでもっとも普通に使用されている。牛皮をなめしてつくった革ベルトは弾力性もあり、一級品では引張り強さは1平方センチメートル当り2万5000ニュートン程度である。平ベルトは皮革製のほかに綿、毛、麻、ゴムなどで織った織物ベルトが使用される。ゴムベルトは綿のベルトにゴムを塗り、耐摩耗性をよくしたもので、引張り強さは1平方センチメートル当り4000ニュートン程度である。Vベルトは紐(ひも)や布を芯(しん)としその周囲をゴムの層で覆いV形にしたベルトで、環状につくられ、数本を並べて掛けて使用する。軸間距離が小さいときに使用され、速度比は普通1対7程度とする。このほか革ベルトを短冊形に切り、それらを互いにピンで結合し、たわみ性をよくしたリンクベルト、厚さ0.1~0.2ミリメートル、幅80センチメートル以内の鋼帯を使用した鋼ベルトもある。
ベルトの掛け方には平行掛けと十字掛けとがある。平行掛けは2軸の回転方向は同じである。けさ掛けまたはオープンベルトともいう。十字掛けは、軸は互いに反対方向に回転する。たすき掛けまたはクロスベルトともいう。平行掛けの場合、ベルトの下側は緊張し(張り側という)、上側はすこし緩む(緩み側という)ようにして回転を伝えることがたいせつである。これを逆にするとベルトは滑りやすくなる。
ベルトとベルト車との間で滑らないとして速度比iは
i=NB/NA=DA/DB
で与えられる。ただしNA、NBは原動ベルト車、従動ベルト車の毎分回転数、DA、DBは原動ベルト車および従動ベルト車の直径である。速度比は普通1対6以下とする。これ以上の速度比の場合には、原動軸と従動軸との間に張り車を入れて、ベルトが滑るのを防止する。
[中山秀太郎]
イタリアの小説家。第二次世界大戦中、北アフリカ戦線で連合国軍の捕虜となり、アメリカに抑留、捕虜収容所で小説を書き始める。帰還後の1947年、戦争による荒廃を描いた『空は赤い』でデビュー。長い中断のあと、64年に大作『癒(い)えざる病(やまい)』を発表、心理分析の手法、大胆な構文を用いて、神経症を病む主人公=小説家の、憑(つ)かれたような独白をえんえんと綴(つづ)った同作は、ネオレアリズモの行き詰まりを克服する実験的な試みとして、内外に大きな衝撃を与えた。
[古賀弘人]
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…ふつう,ズボンやスカート,あるいはドレスのウエスト部分を締める帯状の服飾具を指すが,スウォード・ベルト(剣帯)とかカートリッジ・ベルト(弾薬帯)のように特定の用途をもつベルトもある。バックル形式やフック形式の留具を用いることが多い。バンドbandとも呼ばれるが,これはウエストバンド,帽子のハットバンド,タキシードのカマーバンド(飾り腹帯)のように,衣服や帽子などに付属した独自の形態をしたものを指すことが多い。…
…これは北方遊牧民族の服装からとり入れたもので,男子の朝服に用いられた。現代の洋式ベルトもこの系統である。大帯,革帯いずれにも各種の佩(はい)飾品を垂れ下げたが,儀礼用の佩飾品として綬(じゆ),佩玉,長剣,また紐などの結び目を解く觽(くじり)などがあった。…
※「ベルト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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