フランスの言語学者。サボア県の教育者の家庭に生まれる。パリ大学で言語学を学び,1927年文学士。31-32年ベルリン大学で学び,37年博士号取得。38年からパリ高等学術研究院で音韻論を講じ,47-55年コロンビア大学教授,55年以降パリ大学教授。同時に57年以降パリ高等学術研究院で構造言語学を講ずる。幼児時代に地方における2言語併用の状況にふれる機会があり,早くからことばの機能に関心をもつきっかけとなった。プラハ言語学派の音韻論から出発して,機能的・構造的言語学(構造言語学)を,音韻論の枠をこえて発展させた。
まず,彼にとってことばの変化は,ことばの使用が使用者にとり容易になるような方向で生ずる。使用者が十分使いこんで使用が容易になっている要素を別とすれば,変化はことばの中の不経済なものを取り去り,結果として使用者にとって労力の節約になるような形で生じるのである。また,ことばの機能性という点からみると,音素構造こそ,人間のことばが常に経済的にそして正確に機能することを保証する鍵である。つまり人間は音素構造を縦横に駆使することにより,わずかな数の音単位を用いて一定数(かなりの数)の記号素を安価につくることができる。記号素はその内容からいえば,その言語の中で人間が切り取る意味の切片である。これがきわめて安価に使用できることが前提となり,人間はそれを組み合わせた大記号(〈文〉)をも安価につくり出すことができる。これがよく知られた彼の〈二重分節〉理論の根幹をなす考え方である。
→二重分節
執筆者:渡瀬 嘉朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
フランスのジャーナリスト、政治家。パリに生まれる。パリ大学文学部卒業後、アバス通信記者となりジャーナリストの道を歩む。人民戦線期には、共産主義学生同盟のパリ・グループの代表として活動したが、スターリンによる粛清裁判に抗議して、1938年フランス共産党を脱党。第二次世界大戦中はレジスタンスに参加し、非合法紙『反乱者』を編集した。戦後、フランス通信社編集長、『フランス・オプセルバトゥール』紙編集長を歴任し、『ヌーベル・オプセルバトゥール』『フェール』各紙にも携わる。政治家としては、統一社会党副書記長(1960~1967)を経て再生社会党に入党、社会党全国書記(1975~1978)として自主管理社会主義理論を展開、欧州議会のフランス代表議員(1979~1984)にも選ばれた。
[瓜生洋一]
『G・マルチネ著、熊田亨訳『五つの共産主義』上下(岩波新書)』▽『G・マルチネ著、熊田亨訳『七つの国の労働運動』上下(岩波新書)』▽『G・マルチネ著、佐藤紘毅訳『スターリン主義を語る』(岩波新書)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…分布主義的方法論の祖述としては先のブロックとトレーガーGeorge Trager(1906‐ )の《言語分析概説Outline of Linguistic Analysis》(1942)とハリスの《構造言語学の方法Methods in Structural Linguistics》(1951)が代表的であるが,とくに後者は分布主義の方法論的行詰りを認め,弟子のN.チョムスキーによる反分布主義的な変形生成文法(生成文法)への道を開いた。(4)上述のどの流派とも密接な関係をもち,しかも独自の立場に立つのはフランスのA.マルティネであり,機能的音韻論を推進する一方,省力化ないし経済性の観点から音声変化を説明する独自の通時的音韻論の試みを示した。 構造言語学の諸原理は70年代にはもはや単一の学派的主張としてではなく,現代言語学の主要潮流のすべてに共通し分有される基本的テーゼとなっている。…
…言語学の用語。フランスの言語学者A.マルティネの言語理論の根幹をなす認識。人間の言語は多くの観察によってこの二重分節をそなえていることが知られ,また人間の言語に課せられた基本的な要請からいっても,そこには二重分節構造がぜひ必要であると考えられる。…
※「マルティネ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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