マーガリン
まーがりん
margarine
食用油脂に、水、乳化剤などを加え、バター状に練り合わせた加工油脂。人造バターともいう。フランスのナポレオン3世が募集したバターの代用品として、化学者メージュ・ムーリエHippolyte Mège Mouriés(1817―80)が考案し、1869年にイギリス、フランスの特許を得たことに始まる。その語源はギリシア語のマーガライトmargaritēs(真珠)で、乳化したものの色が似ていることに由来する。日本では1908年(明治41)に横浜の山口八十八商店が初めて製造し、長い間「人造バター」といわれたが、1950年(昭和25)ごろから技術の改良が進み、広く普及するようになった。55年ごろから健康志向の純植物性のものが、68年ごろからソフト型のものが商品化された。
[新沼杏二・河野友美・山口米子]
綿実(めんじつ)、やし、大豆、コーンなどの植物性油脂だけか、それに牛脂、鯨油または魚硬化油などの動物性油脂を混ぜ、少量の水と食塩、脱脂乳、発酵乳などの乳製品、乳化剤、脂溶性ビタミン(A、D)、香料、着色料などを添加し、攪拌(かくはん)乳化させて、50℃ぐらいから急速に10℃程度に冷却して、油脂の大部分を固体化させて練り合わせる。
JAS(ジャス)(日本農林規格)では油分によって80%以上をマーガリン、75~80%を調整マーガリン、75%未満をファットスプレッドと区分し、まとめて「マーガリン類」として規定している。
[新沼杏二・河野友美・山口米子]
ソフト型は不飽和脂肪酸が多いので、酸化されやすい性質をもつ。新しいものを、加熱しないで用いるのがよい。調理においてはソテー、ケーキなどのように加熱する場合は、バターを用いたもののほうが香りの点で勝る。
[新沼杏二・河野友美・山口米子]
『新谷勛著『食品油脂の科学』(1989・幸書房)』
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マーガリン
margarine
動物油脂や植物油脂などを加工した脂肪性食品。精製した動植物油とその硬化油を適当な割合に混合し,これに乳化剤,香料,色素,食塩水,発酵乳などを加えて攪拌,乳化して製造する。1860年代末にフランスの化学者 H.メージュ=ムリエが,バターの代用品として開発した。日本では 1908年に最初に製造され,当初は人造バターと呼ばれた。原料としては,大豆油,落花生油,綿実油,トウモロコシ油,パーム油などの植物油脂を主体にしたものが多い。アメリカ合衆国では,酪農産業からの圧力により当初は法規制の対象となっていたが,1930年代に原料をアメリカ国内産の植物油脂に転換してのち,徐々に規制が緩和された。バターと比べ生産量が多く,値段が安い。
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マーガリン
マーガリン
margarine
人造バターともいわれ,油脂加工製品の代表的なもので,バターに代用される食品.主成分であるヘッド,ラード,植物油脂または硬化油にカロテンなどの色素,レシチン,食塩など,またあるものは牛乳,バターなども加えて,まぜてつくる.普通,夏と冬とで脂肪の混合割合をかえて,適温で溶けるように調整する.日本農林規格によれば,油分80% 以上,水分17% 以上であることとされている.バターに比べて高級脂肪酸が多く揮発性酸の分量が少ない.
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マーガリン
動植物の油脂,硬化油からつくった人造バター。現在は遊離脂肪酸の中和や脱臭,脱色をした良質の植物硬化油を原料とすることが多い。これに発酵乳,食塩,乳化剤,香料,色素,ビタミンA,Dなどを加えて乳化し,のち急速に冷却して練り,バター状に製する。19世紀末からつくられ,当初は代用品の域を出なかったが,今日のものは風味,栄養ともバターに匹敵。
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マーガリン
〘名〙 (margarine) 人造バター。一八六九年フランスで天然バターの代用品として発明された。原料は大豆油、綿実油などで、牛脂や鯨油を加えることもある。
※明治大正見聞史(1926)〈生方敏郎〉憲法発布と日清戦争「ミルクホールで〈略〉出す厭な臭いのするマアガリン」
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マーガリン
人造バターともいった.もとバターの代替品として作られたが,近年は独自の特性のある食品とされるようになっている.油脂を乳化して製造したペースト状のもので,パンなどに塗って食べる.
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マーガリン【margarine】
食用油脂に発酵乳,食塩などを加えて乳化し,練り合わせてバターのような製品にしたもの。バターの代用品として,1869年に,ナポレオン3世の懸賞募集に応じたフランス人メージュ・ムーリエH.Mège‐Mouriès(1817‐80)によって発明された。マーガリンの語源はギリシア語margaritēsで〈真珠〉の意であるが,乳化の色が真珠の色に似ていることに由来するといわれる。日本で最初に製造されたのは1908年であるが,当初は人造バターの名で呼ばれた。
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