翻訳|margarine
食用油脂に発酵乳,食塩などを加えて乳化し,練り合わせてバターのような製品にしたもの。バターの代用品として,1869年に,ナポレオン3世の懸賞募集に応じたフランス人メージュ・ムーリエH.Mège-Mouriès(1817-80)によって発明された。マーガリンの語源はギリシア語margaritēsで〈真珠〉の意であるが,乳化の色が真珠の色に似ていることに由来するといわれる。日本で最初に製造されたのは1908年であるが,当初は人造バターの名で呼ばれた。最近は品質の改良が進んで,消費量は増加している。
原料油脂としては動物油脂(牛脂,豚脂,硬化した魚油・鯨油),植物脂(ヤシ油,パーム油,パーム核油の精製油または硬化油),植物油(ダイズ油,綿実油,トウモロコシ(コーン)油,ベニバナ(サフラワー)油,ナタネ油の精製油または硬化油)などが用いられる。家庭用マーガリンの原料にはほとんど動物油脂を用いない。ソフトタイプのマーガリンでは硬化油の割合を減らし,植物油を多く配合する。とくに,必須脂肪酸であるリノール酸を多く含むマーガリンの製造にはダイズ油,綿実油,米油,ベニバナ油がおもに使用される。脱脂乳または発酵乳の使用は,製品の風味をよくするだけでなく,油脂やビタミンAの安定化に役だっている。製造は,原料配合,乳化,急冷,練合せ,成形包装の工程で行われる。二つの配合槽を用い,原料油脂,着色料,乳化剤,ビタミンAなどの油に溶ける成分と,発酵乳,食塩などの水に溶ける成分を別々に混合してから乳化槽に入れてかくはん混合する。これを10~15℃に急冷して固化させ,十分に練り合わせて滑らかな製品にする。乳化,急冷,練合せの工程は密閉型の連続式製造装置で行われる。
成分組成は油脂80%以上,水分16~18%である。バターに比べて次のような特徴がある。(1)原料油脂の配合を変えることにより融点の異なる製品ができる。冷蔵庫でも固くならない低融点の製品や,夏季用の融点の高い製品など,バターより使いやすい。(2)価格が安い。(3)植物油を用いた製品ではコレステロールを含まず,必須脂肪酸であるリノール酸が多いので栄養上優れている。(4)強化マーガリンではバターの2倍以上のビタミンA効力を有する。
保存温度が高いときには油脂の酸敗,ビタミンAの破壊,カビの繁殖などの変質が起こる。とくに,家庭用マーガリンでは,保存料や酸化防止剤は通常使用されておらず,またソフトタイプのマーガリンでは液状植物油が多く使用されているので,その不飽和脂肪酸が酸化されやすい。つねに10℃以下の,温度の低い場所に,空気に触れないよう密閉した容器に入れて保存するのがよい。
執筆者:吉野 梅夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
人造バターともいわれ,油脂加工製品の代表的なもので,バターに代用される食品.主成分であるヘッド,ラード,植物油脂または硬化油にカロテンなどの色素,レシチン,食塩など,またあるものは牛乳,バターなども加えて,まぜてつくる.普通,夏と冬とで脂肪の混合割合をかえて,適温で溶けるように調整する.日本農林規格によれば,油分80% 以上,水分17% 以上であることとされている.バターに比べて高級脂肪酸が多く揮発性酸の分量が少ない.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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