メッケル憩室(読み)メッケルけいしつ(英語表記)Meckel's diverticulum

六訂版 家庭医学大全科 「メッケル憩室」の解説

メッケル憩室
メッケルけいしつ
Meckel's diverticulum
(子どもの病気)

どんな病気か

 メッケル憩室は最も頻度の高い腸管の奇形であり、発生頻度は無症状例を含めると1~2%といわれ、男児女児の2倍多い傾向があります。その位置は回盲(かいもう)小腸から大腸への移行部)末端から40~60㎝までの口側にあることが多いとされています。

 この憩室の中に小腸の組織だけでなく、胃粘膜や膵臓の組織が入っていることがあります。メッケル憩室はそれ自体では無症状ですが、潰瘍(かいよう)炎症(えんしょう)穿孔(せんこう)腸重積(ちょうじゅうせき)などを伴うと後述のような症状が出現します。

原因は何か

 胎生5~7週の間に吸収され、なくなってしまうはずの管が腸管側に残ってしまうことが原因です。しかしその理由に関しては不明です。

症状の現れ方

 憩室の中に入り込んでいる胃粘膜の酸分泌により、消化性潰瘍を生じ、消化管出血を来します。そのためタール便(黒い便)や新鮮血便、貧血になります。

 出血は幼児期に多く、前ぶれなく突然大量の下血をみることがあります。また腸重積腸閉塞(ちょうへいそく)イレウス)などを起こし、腹痛嘔吐腹部膨満、ショックなどを来すことがあります。

 憩室炎という炎症を起こし、腹痛や発熱などを来し、虫垂炎との区別が問題になることもあります。

検査と診断

 放射性元素テクネシウムによるシンチグラフィを行います。テクネシウムは通常胃粘膜のみに集まるので、胃とは別の部位集積があれば診断が確定します。

 その他造影CT検査、小腸内視鏡検査、内視鏡的逆行性(ぎゃっこうせい)回腸造影などでも診断できるようです。

治療の方法

 手術時に偶然見つかった症状の無いメッケル憩室に関しては、切除すべきか否かは決まった方針がないようです。

 症状を伴うメッケル憩室に関しては、全身症状をよくしたうえで、手術により憩室を切除または腸管切除を行います。

病気に気づいたらどうする

 5歳以上の繰り返す腸重積、タール便や血便、虫垂炎に似た症状などからメッケル憩室を疑った場合には、小児科または小児外科で積極的にシンチグラフィを行います。診断が確定すれば、小児外科を受診することになります。

長崎 啓祐

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「メッケル憩室」の解説

めっけるけいしつ【メッケル憩室】

 小腸の下部(回腸)にみられる先天的な憩室です。妊娠中に、母親の栄養を胎児に送る管(臍腸管(さいちょうかん))が、出生後に回腸の壁に残ったものです。男性に多くみられます。
 ふつうは症状はありませんが、急に合併症(腸閉塞(ちょうへいそく)、憩室炎、出血)をおこすことがあります。小児期に多く、成人以降はあまりみられません。
 腸閉塞は憩室のところで回腸がつまってしまうもので、腹痛や嘔吐(おうと)で始まります。憩室炎は憩室の壁に炎症がおこるため、まるで虫垂炎(ちゅうすいえん)のような腹痛がみられます。
 また、憩室の中に胃の組織がまじっていることがあり、胃酸が憩室中に潰瘍(かいよう)をつくって出血をおこすことがあります。潰瘍が深くなると憩室の壁に孔(あな)があき、腹膜炎をおこすこともあります。
 こうした合併症がある場合は、手術して憩室やまわりの小腸を取り除きます。ただ、手術前にメッケル憩室と診断できることはまれです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メッケル憩室」の意味・わかりやすい解説

メッケル憩室
メッケルけいしつ
Meckel's diverticulum

胎生期の卵黄腸管の一部が残存したもの。成人では回腸末端より約 1m口側の回腸にみられる。急性炎症を起して虫垂炎のような症状が出現したり,出血や腸閉塞の原因となることがある。 (→消化管憩室 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のメッケル憩室の言及

【小腸】より

…症状はない。なお回腸の末端近くにメッケル憩室Meckel’s diverticulumと呼ぶ特殊な憩室がみられることがある。この憩室は他のものと違って筋層を有し,胎生初期に腸管と卵黄膜を連絡している卵黄管(出生後は閉じる)の腸管側が残ったものである。…

※「メッケル憩室」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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