改訂新版 世界大百科事典 「ヤシ油」の意味・わかりやすい解説
ヤシ(椰子)油 (やしゆ)
coconut oil
熱帯産のココヤシの実の胚乳から圧搾法で採取した油脂。ココナッツ油ともいう。胚乳を乾燥したものはコプラ(含油量63~68%)と呼ばれ,この形で輸出される。コプラから採油するのでコプラ油ともいう。融点20~28℃,比重0.914~0.938,屈折率n40D=1.4477~1.4497。狭い温度範囲で軟化融解する特徴をもつ。脂肪酸組成は,C12(炭素数12)のラウリン酸が最も多く47~56%,次いでC14のミリスチン酸が15~18%,オレイン酸5~11%,ほかにC6(1%),C8(7~9%),C10(5~7%),C16(6~8%),C18(1~4%)の飽和脂肪酸から成る。比較的短い脂肪酸から構成されるのが特徴である。ケン化価は高く243~271,植物油脂中で最も不飽和度が低く,ヨウ素価が7~16。用途は食用油脂として,マーガリン,ショートニングの原料,製菓用油脂,溶剤分別を行ってカカオ代用脂などに用いられる。工業用の用途としては,浴用セッケン,合成洗剤の原料,加水分解して脂肪酸,還元して長鎖アルコールなどが製造され,化粧品用などに用いられる。
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報