百科事典マイペディア 「ラッスス」の意味・わかりやすい解説
ラッスス
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フランドル楽派の16世紀後半の最も多作な,最も重要な作曲家。イタリア風のラッソOrlando di Lassoとしても知られ,フランス風の綴りOrlande de Lassusも用いられる。生地モンス時代の資料はほとんど残っておらず,12歳のときにゴンザーガ家のフェランテに楽才を認められ,イタリアへ赴いたのが最初の記録である。マントバやミラノで音楽の研鑽を積み,早くも1553年にはローマのサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ教会の楽長に就任した。以後活発な作曲活動を開始,世俗曲の処女出版は55年のマドリガーレ集第1巻,宗教曲では56年のモテット集第1巻である。56年,バイエルン公アルブレヒト5世に仕えるためミュンヘンに移り,64年には同地宮廷楽団の楽長に就任,終生その職にあった。この間,フランドル地方,フランス,イタリア,ドイツ各地を旅行し,多くの作曲家と交流をもった。
ラッススは2000曲以上の作品を残している。同時代者パレストリーナが主として宗教的作品を残したのに対し,ラッススはミサ曲やモテットのほかに,数百曲ものマドリガーレ,シャンソン,ドイツ語の世俗合唱曲を書いている。作品は,あくまでもフランドル楽派の伝統的なポリフォニー技法に基づいているが,効果的な和声進行,生気あふれるリズム,機知に富んだ旋律,テキストの劇的な表出法などによって,味わい深い彼独自の領域を築き上げた。これらの作品は高く評価され,存命中からヨーロッパ各地で競って印刷に付され,版を重ねている。また,〈音楽の王〉〈ベルギーのオルフェウス〉〈崇高なるオルランド〉などと呼ばれ,当時の人びとから賛辞を送られている。彼が同世代の作曲家に与えた影響はパレストリーナよりも大きかったし,G.ガブリエリらの次代を担う作曲家を門下から輩出している。斬新な技法を秘めたラッススの作品は,近年ますます見直されつつあるが,膨大な量の作品のうち,現代譜でみることができるのはまだ一部である。
執筆者:高野 紀子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
フランドルの作曲家。フランス語でオルランド・ド・ラッシュOrlande de Lassus、イタリア語でオルランド・ディ・ラッソOrlando di Lassoとよばれることも多い。フランドルのモンスに生まれ、早くからイタリアに出てナポリ、ローマなどで活躍、一度フランドルに戻ったあと、1556年からミュンヘンのバイエルン公の宮廷音楽家となり、63年には楽長に就任して、死ぬまでミュンヘンの宮廷で活躍した。ラッススは後期フランドル楽派最大の作曲家で、パレストリーナとともに後期ルネサンスを代表する巨匠である。作品の総数は2000曲を超え、ミサ曲、モテトゥス、マニフィカトなど多くの種類からなる宗教曲の分野では、ルネサンスの伝統的な様式によりながら、劇的な感情表現を示している曲も多くみられる。また多声世俗歌曲の分野では、マドリガーレをはじめとするイタリア語世俗歌曲、フランス語によるシャンソン、ドイツ語による多声リートなど、多彩な創作活動を行った。
[今谷和徳]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…この時期の作曲家としては,ベネチア楽派の創始者ウィラールトAdrian Willaert(1490ころ‐1562),ゴンベールNicolas Gombert(1500ころ‐56ころ),マドリガルの大家チプリアーノ・デ・ロレCipriano de Rore(1516ころ‐65)やアルカデルト,シャンソンの大家ジャヌカンらをあげることができる。16世紀後半の第4期は,ラッススに代表される。彼は,当時のあらゆる音楽様式ならびに形式を身につけており,それらを融合させた独自の音楽を作り上げた。…
… これに対して,およそ1450年以降のルネサンス様式のモテットは,再び宗教的な性格に復帰するとともに,古典的な合唱ポリフォニーの技法の完成に伴って模倣法とホモフォニックな書法を適度に交替させ,表情豊かな美しい響きで,今日まで愛唱される多数の名曲を生み出した。ジョスカン・デ・プレ,パレストリーナ,ラッススらがその代表者であり,とくにラッススは一人で1200曲もの作品を残している。他方,北イタリアのベネチアでは,G.ガブリエリを代表者とする複合唱様式のモテットが起こり,その影響はドイツにも及んだ(プレトリウスMichael Praetorius(1571‐1621)ら)。…
※「ラッスス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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