一味同心という一致団結した状態の集団(一揆)を結成する際に行われた集団誓約の儀式,作法。この儀式は,一揆に参加する人々が神社の境内に集まり,一味同心すること,またその誓約条項に違犯した場合いかなる神罰をこうむってもかまわない旨を記した起請文を作成し,全員が署名したのち,その起請文を焼いて灰にして,神に供えた水である神水に混ぜて,それを一同が回し飲みするのが正式の作法であった。そのほか口頭で誓約し,神水を飲む方法など略式のものも多くみられるが,この誓約の儀式に際し,神を呼び出すため鐘,鉦,鰐口などの金属器が打ち鳴らされた。この作法は共同飲食の観念にもとづき,これによって神と人,人と人との間をひとつの心(同心)にすることを目的にしたもので,人と人の間の相互契約は神を媒介とした同心によってはじめて確実になるという意識で行われたのである。
→一揆
執筆者:勝俣 鎮夫
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中世・近世の習俗。誓約を結ぶ人々が神前で神水を飲み交わし、互いに約束・掟(おきて)に違背しないことを誓い合うこと。誓約には、口頭で誓い合う誓言(せいごん)と、紙に書く起請文(きしょうもん)との二つの方法があった。後者の場合、しばしば誓約を記したあと、その紙を焼き、灰を神水に浮かべて飲んだ。神水は特別な井戸でくんだ水であったり神酒であったりしたが、いずれにしてもおそらくは神前に供えられたものであり、これを飲み交わすのは、誓約にかかわる人々が神と共飲共食し、誓約に神が立ち会ったことを意味した。そのため、一味神水の場は、しばしば「身の毛よだちてぞありける」などと表現されるような臨場感にあふれた場であった。
一味神水は早い例では平安時代末からみられ、中世には、寺院内部での衆徒の蜂起(ほうき)や国人(こくじん)層の在地領主相互の一揆(いっき)結合、さらには農民たちの一揆への決起に際しても、一致して事にあたり、盟約に背かない旨を誓い合う目的で盛んに行われた。
[千々和到]
『青木美智男他編『一揆』全5巻(1981・東京大学出版会)』▽『勝俣鎮夫著『一揆』(岩波新書)』
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中世の寺院・村落などで一揆的集団結成の際の誓約の作法。寺堂や村落内の神社に集まり,鐘などの金属を鳴らして神仏を招来し,同心を誓った起請文を作成・署名した。起請文は焼いて神仏に供えた水に混ぜ,全員で飲んだ。共同飲食によって神仏と一体化し,それを媒介に集団の強固な団結を図った。寺院社会に起源をもつとみられるが,14世紀には農民層にも広く浸透した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…一揆は,現実には個々ばらばらの利害の対立を示す社会的存在としての個人を,ある共通の目的達成のためにその関係を止揚して,一体化(一味同心)した。そのために一揆に参加する個々のメンバーが現実をこえた存在となることを目的とした誓約の儀式が必要であり,それが一味神水であった。一揆に参加するメンバーがその共通の目的達成のため,それぞれの現実の社会的諸関係を断ち切ったところで,はじめて一揆という集団の結成が可能であったのであり,一揆はその目的のためにつくられ,その目的のためにのみ機能する非日常的集団として存在した。…
※「一味神水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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