三国演義(読み)さんごくえんぎ(その他表記)Sān guó yǎn yì

改訂新版 世界大百科事典 「三国演義」の意味・わかりやすい解説

三国演義 (さんごくえんぎ)
Sān guó yǎn yì

中国,明初の羅貫中(らかんちゆう)が著した俗語長編小説。もとの題は《三国志通俗演義》で,三国時代(169-280)の史実に潤色を加えた歴史小説である。その時代の英雄を語る口承文芸起源古く,唐の末(9世紀)には語られていた。宋代になると,この物語を専門とする芸人がいた。そのテキストは元の至治年間(1321-23)に印刷された《全相三国志平話》3巻が存するが,話のあらすじを伝えるだけで,しかも非現実的な空想に満ちている。元の時代の劇(雑劇)に現れる英雄たちは,もっと生き生きとえがかれるが,話のすじはやはり史実から大きくへだたっていた。それらの作品から非現実的な部分を削除して,なるべく史実に近づけ,いっそう詳しく物語ったのがこの〈演義〉24巻である。現存するそのテキストの最も早いものには弘治7年(1494)の序文を付するが,実は嘉靖31年(1552)の刊本である。そののち多種多様の刊本が出版されたが,120回(章)に分かつ毛宗崗(もうそうこう)本が17世紀の末以来広く流布している。ただし日本では元禄2年(1689)湖南の文山(ぶんざん)が和訳した《通俗三国志》が久しく広く読まれているのだが,その訳の底本となったのは毛本よりやや早い李卓吾本と呼ばれるものだから,その内容が毛本とは少しく出入りがあることは注意しなければならない。《三国演義》は魏・呉・蜀三国の分立の世を舞台とし,そこで争われる武勇知謀の物語である。登場人物の数は400人をこえるというが,作者は特に関羽張飛の武勇,趙雲(ちよううん)の忠誠,諸葛孔明(しよかつこうめい)の神機妙算などを極力たたえつつ,彼らと対立する曹操の〈奸雄〉ぶりを活写し,彼らの心理の奥に立ち入ってえがき,すぐれた技量を示す。中国の旧小説の中でおそらく最も多数の読者をひきつけてきたゆえんである。中国人で,それらの人物を知らない人はないであろう。
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百科事典マイペディア 「三国演義」の意味・わかりやすい解説

三国演義【さんごくえんぎ】

中国,元末の長編歴史小説。もとの題は《三国志通俗演義》。四大奇書の一つ。羅貫中(らかんちゅう)が《三国志》に基づく元代までの口承文芸や劇(雑劇)などの内容を整理,拡大したもの。24巻。劉備玄徳,関羽,張飛の義兄弟に軍師諸葛孔明が登場し,後漢末,黄巾(こうきん)の乱後の群雄割拠情勢から,魏・呉・蜀三国鼎立(ていりつ)の模様,晋の武帝の天下統一までが,多くの虚構を交えて描かれている。《西遊記》《水滸伝》に比べ口語部分が少ないため,日本でも古くから読まれ,1689年に湖南文山の旧訳《通俗三国志》50巻が出されて以来,たびたび覆刻,翻訳されている。
→関連項目兄弟分聊斎志異

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