関羽(読み)カンウ

デジタル大辞泉 「関羽」の意味・読み・例文・類語

かん‐う〔クワン‐〕【関羽】

[?~219]中国、三国時代しょくの武将。河東山西省)の人。あざなは雲長。張飛とともに劉備りゅうびを助け、赤壁の戦いに大功をたてたが、のちに捕らえられて死んだ。後世、軍神として各地の関帝廟かんていびょうに祭られた。
歌舞伎十八番の一。藤本斗文作。元文2年(1737)江戸河原崎座の「閏月仁景清うるうづきににんかげきよ」一番目大詰めで2世市川団十郎が初演。現在、脚本は廃滅

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精選版 日本国語大辞典 「関羽」の意味・読み・例文・類語

かん‐うクヮン‥【関羽】

  1. [ 一 ] 中国、三国時代、蜀漢の武将。河東の人。字(あざな)は雲長。劉備(りゅうび)に仕え、赤壁の戦いで曹操(そうそう)の軍を撃破。劉備の益州攻略の際、荊州を守備し、魏と呉のはさみうちにあって敗死した。後世、武神として関帝廟(びょう)にまつられた。二一九年没。
  2. [ 二 ] 歌舞伎十八番の一つ。時代物。一幕。藤本斗文、中村藤橘合作。元文二年(一七三七)江戸河原崎座の顔見世狂言「閏月仁景清(うるうづきににんかげきよ)」一番目大詰で二世市川団十郎が初演。悪七兵衛景清が張飛に扮して範頼の館に忍び込むと、畠山重忠が関羽に扮し白馬に乗って現われ、張飛の正体を見破る。初演時の脚本は廃滅。
  3. [ 三 ] 歌舞伎所作事。常磐津。三世坂東三津五郎の七変化「七枚続花の姿絵」の一つ。文化八年(一八一一)江戸市村座初演。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「関羽」の意味・わかりやすい解説

関羽
かんう
(?―219)

中国、三国蜀(しょく)の武将。河東解(山西省臨晋(りんしん)県)の人。字(あざな)は雲長。諡(おくりな)は忠義侯。解には塩池があるから、塩業関係の仕事に従事していたのかもしれない。亡命して涿(たく)郡(河北省)にきて、劉備(りゅうび)や張飛(ちょうひ)と知り合った。桃園で3人が義兄弟の約束を結んだことが小説『三国志演義』にみえるが、それに近いことはあったろう。劉備が起兵すると羽も参加し、寝食をともにした。200年、曹操(そうそう)と劉備が戦い、備は敗れ、羽は操に捕らえられた。操は羽を礼遇して帰順を勧めたが、羽は操と袁紹(えんしょう)との戦いに、紹の将である顔良の首を斬(き)って、これを置き土産(みやげ)に備の所に帰った。やがて備とともに荊州(けいしゅう)に赴き、曹操が南下してくると、ここを逃れたが、ついで起こった赤壁(せきへき)の戦い(208)では、水戦で敗れた操の軍を陸上に待ち受けて撃ち破った。劉備が諸葛亮(しょかつりょう)や張飛らと蜀に入ったのちも、彼は荊州の留守(りゅうしゅ)を命ぜられ、江陵を基地とした。219年、劉備が漢中王になったのを機に、北上して曹操の部将である曹仁を攻めて樊城(はんじょう)(河南省襄樊(じょうはん)市)を囲んだ。しかし、荊州領有をもくろむ孫権(そんけん)が、操と同盟して背後を襲ったので、樊城陥落を目前に南に引き揚げたが、ついに臨沮(りんしょ)(湖北省南漳(なんしょう)県)において、子の関平とともに戦死した。

 関羽は美しい髯(ひげ)の持ち主で、諸葛亮も彼を髯の愛称でよんだ。また彼は武勇に優れていたばかりでなく、好んで『春秋左氏伝』を読んだ。しかし人を見下すことがあり、人の恨みを買うこともあった。死後、軍神、財神として祀(まつ)られている。

[狩野直禎]

『宮川尚志著『諸葛亮』(1940・冨山房)』『狩野直禎著『諸葛孔明』(1966・新人物往来社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「関羽」の意味・わかりやすい解説

関羽 (かんう)
Guān Yǔ
生没年:?-219

中国,三国蜀(しよく)の建設者である劉備(りゆうび)に協力した勇将。字は雲長。郷里から逃げて,涿県(たくけん)(北京市南西)にいた劉備の部下となり,同僚の張飛とともにこれを護衛して,後漢末の群雄割拠する中を各地に転戦した。劉備は彼らを兄弟のように遇し,関羽らは恩義に感じて身命をなげうつ。200年(建安5),劉備が曹操に敗れたとき,関羽は捕らわれたが,曹操の礼遇を受けると,今度は曹操の大敵袁紹(えんしよう)の部将を討ちとって恩義を返し,そのまま再び劉備のもとに帰って献身する。208年,赤壁(せきへき)の戦では孫権の軍と連合して曹操の南下をはばみ,劉備が益州(四川省)を攻略してそこに蜀国を建てるための基礎を築いたあと,荆州(けいしゆう)(湖北省江陵県)にふみとどまって蜀の東方防衛に当たり,一時は北方に進出して曹操の心胆を寒からしめたが,219年,魏・呉両軍の挟撃にあって戦死した。その俠気と武勇は,以後長く民衆の尊敬を集めている。
関帝廟 →三国演義
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「関羽」の意味・わかりやすい解説

関羽
かんう
Guan Yu; Kuan Yü

[生]?
[没]建安24(219)
中国,三国時代の蜀漢の武将。河東 (山西省) の人。字は雲長。劉備に従い,張飛とともにその経営を助けた。かつて曹操に捕えられたが,厚遇された。彼は袁紹の部将顔良を斬って曹操の恩に報いたのち,劉備のもとに帰った。以後常に劉備を助け,その政権の確立のために努力した。劉備が益州を経略したときには荊州 (湖北省) を守っていたが,曹操と孫権の両者からはさみ撃ちされ,呉軍に捕えられ殺された。『三国志演義』のなかで劉備の忠臣として活躍するが,事実が潤色されている。特に宋時代 (五代のあとの) になると,関羽をまつる関帝廟は武神をまつる武廟の主神となり,関羽の信仰はのち,ますます広まった。

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百科事典マイペディア 「関羽」の意味・わかりやすい解説

関羽【かんう】

中国,三国時代の(しょく)の武将。字は雲長。張飛とともに劉備に仕え,勇名をはせる。魏を攻撃中,呉軍に背後をつかれ謀殺された。後世,神格化され関帝と呼ばれ,軍神,財神としてまつられ,関帝廟として民衆の信仰があつい。関帝と岳飛を合祀したものを武廟という。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「関羽」の解説

関羽(かんう)
Guan Yu

?~219

三国蜀(しょく)の武将。河東解(かい)(山西省運城)の人。張飛(ちょうひ)とともに劉備(りゅうび)に従い,赤壁の戦いで軍功を立て蜀の建国に貢献した。のちに捕まって殺された。義勇の人として知られる。『三国志通俗演義』の中心的人物として大衆的な人気を博し,関帝として廟に祀られた。現在,大陸や台湾のみならず横浜中華街をはじめとする海外の華僑(かきょう)・華人のなかでも,広く信仰を受けている。

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旺文社世界史事典 三訂版 「関羽」の解説

関 羽
かんう

?〜219
三国時代の蜀漢の将軍
字 (あざな) は雲長。早くから張飛とともに劉備 (りゆうび) (蜀漢の昭烈 (しようれつ) 帝)を助けて活躍したが,呉に謀殺された。唐代から武神として崇拝され,明代には文神としての孔子と同格の武神となり,明の国難に際し帝位にまであげられるに至った。清代には各県に1か所関帝廟を設けるようになり,武神兼財神として民間に一層普及した。明代の小説『三国志演義』にもその活躍は詳しい。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「関羽」の解説

関羽
かんう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
補作者
河竹新七(3代) ほか
初演
文化8.3(江戸・市村座)

関羽
(通称)
かんう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
閏月仁景清 など
初演
元文2.11(江戸・河原崎座)

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世界大百科事典(旧版)内の関羽の言及

【漢水】より

…古くから中原と江漢平原を結ぶ重要な交通路であったが,水勢が激しいため,沿岸には襄陽の樊城など軍事的に要害の地がある。樊城は漢の建安年間(196‐219)に関羽が漢水の急流を利用して立てこもる于禁を撃破した古戦場として有名である。また上流部は秦の漢中郡で,劉邦は秦を滅ぼした後,漢中王としてこの地に封じられた。…

【関帝廟】より

…中国,三国蜀の武将,関羽をまつった廟。関帝信仰は唐代にはじまるが,まず軍神として各地でまつられるようになり,やがて文廟の孔子に対して,武廟の主神となった。…

【財神】より

…行商するものが旅の安全と各地からの招財を祈った〈五路神〉に源流するらしく,また盗賊神とも関係するとみられる。 〈武財神〉とよばれる〈関帝〉,〈文財神〉と称される〈比干〉は,それぞれ蜀漢の勇将関羽と殷の紂王の忠臣比干を神格化したもので,関帝はもともと武神であった。財神は特に商家で尊崇され,なかでも関帝は,霊験あらたかな神として祭祀される(関帝廟)。…

【ひげ(髭∥鬚∥髯)】より

…これに対して古代中国には,巨人盤古の死後に髪や髭から星を生じた話や,《列仙伝》や《神仙伝》に登場する多くの超人たちがみごとなひげをもって描かれていることなどがあるばかりではない。《三国志》の英雄もみなひげを蓄えており,なかでも孫権の高貴な紫髯と関羽の美髯が際だっている。〈羽美鬚髯,故亮謂之髯。…

※「関羽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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