丼物(読み)ドンブリモノ

精選版 日本国語大辞典 「丼物」の意味・読み・例文・類語

どんぶり‐もの【丼物】

  1. 〘 名詞 〙
  2. どんぶりに盛って出す料理。はちもの。
    1. [初出の実例]「すずりぶたになにかちょんとしたどんぶり物」(出典:洒落本・通人の寐言(1782)上)
  3. どんぶりに飯を盛って、種々のたねをのせた一品料理。天丼、カツ丼など。
    1. [初出の実例]「丼もんかなんぞでけるのんやったら」(出典:父親(1920)〈里見弴〉)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「丼物」の意味・わかりやすい解説

丼物
どんぶりもの

丼とは飯茶碗(ぢゃわん)の約3倍の容積量の食器で、この中にご飯を入れ、調味した具と汁をかけた料理を丼物という。丼物は江戸時代では品の悪いものとされていた。丼物の元祖はうな丼(どん)である。文政(ぶんせい)年間(1818~30)、芝居興行に出資していた大久保今介(いますけ)はうなぎ好みで、毎日のようにうな丼を大野屋から芝居の楽屋へ届けさせていた。当時は温飯を丼(どんぶり)に盛り、蒲焼(かばや)きは別に保温して届けていた。今介は、丼に熱い飯を盛りその中間に蒲焼きを入れて持ってくれば、保温にもなるしそのまま食べられるからと、大野屋にそのように作製させた。これがうな丼の始まりであるという。深川丼は、バカガイまたはアサリの混ぜご飯で、江戸の後期に創作された。親子丼は、東京・中央区の玉秀という鳥料理屋で明治初期に創作したもの。他人丼は、牛肉豚肉を卵でとじたもので、親子丼より後の大正中期からのものとみられる。卵丼は、かき玉を多くして、それに好みの材料を加えるが、とくに卵だけでつくることもある。鉄火丼は、鉄火巻きの応用で、この名称は大正初期から一般に用いられている。マグロ角切り酢飯の上に並べ、もみのりをふりかけた丼物である。カツ丼(どん)は、昭和10年ごろからのもの。牛丼(ぎゅうどん)は、明治中期以降盛んになり、「牛めし」の看板の専門店があったが、値段は格安であった。牛丼のことを「かめめし」「開化丼(どんぶり)」ともいった。福島県の郷土丼料理「ずきんはずし」は、ダイコン古漬けと納豆を用いたものである。

[多田鉄之助]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

苦肉の策

敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...

苦肉の策の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android