旧暦23日の夜,すなわち二十三夜に講員が宿に集まって飲食をともにしながら月の出を待つことをいう。三夜様とも三夜供養ともいい,月待行事のなかでも最も盛んに行われた。月待のマチは,神のかたわらに待座する意味らしく,この夜には神の示現があると信じられていた。講は,村の小字,村全体,任意の者などを単位としていたが,女性,とくに嫁仲間で結成されることが多い。地方によっては,二十二夜を女性,二十三夜を男性の集りとする所もある。1,5,9,11月が重んじられ,とくに霜月(11月)の二十三夜は大師講の名で知られ,タイシと呼ばれる神の来訪を説いたりすることから,新嘗の忌籠りとの関連が推定されている。かつては,下弦の月の日に,月そのものを神聖視する行事があったと考えられ,講員は当日は肥を扱わないとか身体を清めて新しい着物にかえてくるとか精進潔斎が要求され,この夜身ごもると不具の子が生まれるという伝承もある。現在では,床の間に勢至菩薩,阿弥陀三尊,月太子,月光菩薩,月読(つくよみ)命などの掛軸をかけ,灯明をつけて豆腐,おはぎなどを供えて月の出を待ち,月を拝んで安産祈願をしたりする。この日の月は,三体の菩薩として現れるともいう。村々に残る二十三夜塔は,講員が建てた記念碑で,大半が江戸時代のものである。
執筆者:鈴木 正崇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…定まった月齢の夜に,月の出を待ってこれをまつる行事。三日月待,十六夜待,十七夜待,十九夜待,二十二夜待,二十三夜待,二十六夜待などあるが,このうち二十三夜待がもっとも古く,16世紀ごろに京都の公家社会では行われていた。正月,5月,9月の月待が重視され,その夜は家の主人は斎戒沐浴して,翌朝まで起きているのが本来であった。…
※「二十三夜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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