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二重構造 にじゅうこうぞうdual economy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

二重構造
にじゅうこうぞう
dual economy

国内に近代的産業と前近代的産業が併存する状態を指す。こうした状態では,生産技術,賃金水準格差が生じ,同一地域内に大きな生活水準の格差が現出するとされる。日本では,戦後の復興期に賃金資本集約度生産性などの企業間格差が見られたとされ,その原因と,その後の進展の方向,つまり解消か拡大かについて論争が起こった。その後,日本経済は高度成長期に入り,高い成長率を記録する中で,産業間の賃金格差はしだいに縮小していった。

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デジタル大辞泉の解説

にじゅう‐こうぞう〔ニヂユウコウザウ〕【二重構造】

近代的大企業と前近代的零細企業が並存し、両者の間に資本集約度・生産性・賃金などに大きな格差があるような経済構造

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百科事典マイペディアの解説

二重構造【にじゅうこうぞう】

二重経済とも。日本において,近代的大企業と伝統技術に立脚した中小零細企業が併立している状況をいう。両者では生産性および賃金において大きな格差が存在するが,高度経済成長期を経て縮小した。
→関連項目工業産業構造中小企業二重経済日本

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世界大百科事典 第2版の解説

にじゅうこうぞう【二重構造】

一つの社会の中に,近代的要素と前近代的要素とが,それぞれ無視しえない比重をもって同時に存在している状態をいう。この概念を生み出す直接のきっかけとなった現象は,大企業と小企業との間に存在する労働生産性および賃金水準の著しい格差である。大企業は,先進工業国で開発された最新鋭の資本設備を導入し,高い労働生産性を実現する。これに対して小企業では,伝統的な生産方法が用いられ,労働能率はきわめて低い。この生産力の開差を反映して,大企業と小企業との間に大幅な賃金格差が形成される。

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大辞林 第三版の解説

にじゅうこうぞう【二重構造】

一つのものの中に、異なった二つの構造をもつこと。
近代的な大企業と零細な小企業が併存して、両者間に生産性・収益性・技術・賃金などの点で大きな格差がみられるような経済構造。日本経済の特徴とされた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

二重構造
にじゅうこうぞう

日本経済の構造的特質を表すことばで、有沢広巳(ひろみ)によって初めて用いられ、1957年(昭和32)の『経済白書』によって一般化した。そこでは、日本経済には一方に近代的大企業が、他方に前近代的小企業・家業的零細企業と農業が併存しており、両者間の賃金・所得格差がきわめて大きく、一国のうちに先進国と後進国との二重構造が存在するに等しいから、経済の近代化と成長によってその解消を図るべきであるとした。
 これに対して宮沢健一は、1957年の「中小企業総合基本調査」の分析から、二重構造の背後に間接金融方式があることを明らかにした。すなわち、企業規模別賃金格差の背後には、賃金支払能力を示す付加価値生産性の格差があり、それは資本集約度(従業員1人当り有形固定資産額)つまり投下資本量の格差によるものであり、さらにそれは設備投資資金調達能力の格差に依存する。そして戦後日本の高度成長を資金面で支えたのは間接金融方式、つまり設備資金を主として金融機関から調達する方式であったから、大企業は低利・大量・長期に設備資金を調達できた反面、貸倒れの危険のある中小企業は高利・小量・短期にしか設備資金を調達できず、この差が前記の各格差を生んだとする。これが資本集中仮説である。
 しかし、この各種格差は、高度成長期を通じてしだいに縮小していった。それは、1960年ごろから若手労働力不足が発生し、中小企業が大企業よりも賃上げ率を高めたことによる。この中小企業の支払能力向上は、(1)企業努力によって設備資金を調達して資本集約度・生産性を高めた、(2)製品価格を上げて付加価値生産性を高めた、(3)どちらもできぬ企業は統計から消えた、という過程によったものである。(2)は、生産性上昇率が大企業より劣る中小企業が、その製品価格を上げて、見かけ上の付加価値生産性を高めたもので、これが高度成長期のインフレーションであり、高須賀義博はこれを生産性上昇率格差インフレとよんだ。
 こうして二重構造は解消しつつあるようにみえたが、オイル・ショックはこの方向を逆転させた。いま全産業の法人企業統計でみると、各種格差(大企業を中小企業で割った値)がもっとも縮小したのは1975年度で、その後、人件費と付加価値生産性の格差は拡大し続けている。資本集約度格差だけは縮小しているが、これは、大企業が資本蓄積によって金融機関から借り入れなくなり、中小企業の借入れが容易になったこと、すなわち間接金融方式が変容したことに基づく。しかし、資本集約度格差縮小が付加価値生産性格差縮小にならないのは、低成長=需要低滞のため、中小企業が製品価格を上げられなくなったことが大きい。こうして人件費格差は拡大し続けており、低成長=二重構造拡大の将来が予想されるが、これは中間階層意識の縮小、階級意識・差別意識の増大をもたらすと考えられる。[一杉哲也]
『経済企画庁経済研究所編『資本構造と企業間格差』(1960・大蔵省印刷局) ▽高須賀義博著『現代日本の物価問題』(1972・新評論) ▽清水嘉治・丸尾直美編『成熟の日本経済I』(1983・中央経済社)』

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世界大百科事典内の二重構造の言及

【高度経済成長】より

…そのため,おもに中小企業では農村部の中学校,高等学校の新規卒業者の採用に力を入れ,毎年春には集団就職列車が東北,九州などから東京,大阪へと走った。大企業と比べて著しく低賃金であった中小・零細企業では,それでは必要な労働力を確保できないことから大幅賃上げをするなど,とくにそれまでの低賃金部門で賃金が急上昇するという形で,企業規模別の賃金格差は急速に縮小し,いわゆる二重構造の解消が進んだ。しかし,賃金が急上昇しながら,生産性の上昇が伴わないときには,生産コストは上がり,それは製品価格に転嫁される。…

※「二重構造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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