五銖銭(読み)ごしゅせん(英語表記)wǔ zhū qián

精選版 日本国語大辞典 「五銖銭」の意味・読み・例文・類語

ごしゅ‐せん【五銖銭】

〘名〙 (重さが約五銖(三・三五グラム)なのでいう) 中国古銭一つ。漢の武帝が元狩五年(前一一八)に鋳造し、魏・晉・南北朝・隋時代まで流通したもの。しばしば改鋳されたので形や字形種類が多い。
津軽(1944)〈太宰治本編「秋田付近から五銖銭が出土したことがあり」 〔史記‐平準書〕

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デジタル大辞泉 「五銖銭」の意味・読み・例文・類語

ごしゅ‐せん【五×銖銭】

中国の前漢武帝の時代に鋳造された銅銭。重さ5銖(約3グラム)で、表面に「五銖」の文字がある。以後時代まで用いられた。

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改訂新版 世界大百科事典 「五銖銭」の意味・わかりやすい解説

五銖銭 (ごしゅせん)
wǔ zhū qián

〈五銖〉の銘をもつ中国の古銭。円体方孔で,多くは右書,まれに左書で五銖の2字を表す。銖は1両の1/24にあたる重量単位である。前漢の武帝の元狩4年(前119)に三銖銭を銷(とか)して五銖銭を鋳たのが最初で,その後,平帝の元始年間(後1-5)に至るまで,五銖銭を鋳ること280億万余と伝えられる。この銭は中国の古銭のなかで最も生命が長く,後漢三国,六朝を経て,隋代まで通用した。しばしば改鋳されたため,形式や字体に変化が見られるので,出土した遺跡年代の上限を知る手がかりとなる。ただし個々の銭につき,その鋳造年代を正確につかむことは必ずしも容易でない。穿(せん)上横文五銖(前漢宣帝の神爵年間(前61-前58)),四道五銖(後漢霊帝の中平3年(186)),直百五銖(建安19年(214))などのほか,鉄銭五銖,両柱五銖,稚(ち)銭五銖,五朱,四柱五銖,内郭五銖,さらに年号を付した太和五銖,永安五銖などがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五銖銭」の意味・わかりやすい解説

五銖銭
ごしゅせん
Wu-zhu-qian; Wu-shu-ch`ien

中国古代の「五銖」と銘のある青銅製貨幣。前漢,武帝の元狩4 (前 119) 年に鋳造された五銖銭は重さ5銖 (3.35g) あり,五銖銭の起源となっている。五銖銭は前漢から隋にいたるまで鋳造使用され,その種類も多い。基本的な形は,円形方孔で,外郭有し,右側に五,左側に銖の銘が存在するが,五銖の銘が左右逆の蜀銭といわれるものもある。前漢のものは概して重厚で形も整っている。後漢では,建武 16 (40) 年に五銖銭を鋳造し,整斉ではあるが,なかには悪銭もみられる。後漢以後,隋にいたる間に,蜀の直百五銖,晋の沈郎五銖,梁の内郭五銖・大吉五銖・大富五銖・大通五銖,北魏の太和五銖・永安五銖,北斉の常平五銖などが鋳られ,隋は開皇1 (581) 年に外郭幅広の小五銖銭をつくっている。唐代に入り,武徳4 (621) 年に開元通宝がつくられ,以後,五銖銭の鋳造はみられなくなった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「五銖銭」の意味・わかりやすい解説

五銖銭
ごしゅせん

中国、前漢、武帝の紀元前119年に制定された青銅銭。銖とは重さの単位で1銖は0.65グラムである。五銖銭は重さ5銖で、表示も「五銖」とした円型方孔銭であり、銭の周囲には縁どりがなされた。五銖銭鋳造は当初、各郡国でも行われたが、前113年以降は中央政府が独占的に行うこととなり、それ以外の貨幣流通を禁じた。これ以後、漢初以来混乱していた貨幣制度は安定し、元狩5年(前118)から元始年間(後1~5)までに280億余の五銖銭が鋳造された。以後、五銖銭は唐初期の開元通宝の制定(621)に至るまで、基本的通貨として用いられた。

[重近啓樹]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「五銖銭」の解説

五銖銭(ごしゅせん)

前118年,前漢武帝のときに初めて発行された青銅貨幣。5銖は3.25gの重さ。前漢初期の貨幣は秦以来の半両(12銖,7.8g)と表示し,実質重量は8銖,4銖と定めた。武帝は実質重量を表記する三銖銭を発行しようとしたが,いったん半両銭にもどし,元狩5年(前118年)五銖銭に改めた。前漢だけでも280億枚発行され,唐の開元通宝まで中国王朝の基本貨幣となった。

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百科事典マイペディア 「五銖銭」の意味・わかりやすい解説

五銖銭【ごしゅせん】

前漢の武帝の時代に創鋳された銅銭。円体方孔で〈五銖〉の銘をもつ。後漢・三国・六朝を経て隋代まで通用した。鋳造年代と場所により穿上横文五銖,四道五銖,直百五銖など多種があり,考古学上,出土した遺跡の年代を知る手がかりとなる。
→関連項目貨泉

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旺文社世界史事典 三訂版 「五銖銭」の解説

五銖銭
ごしゅせん

前漢の武帝が鋳造した銅銭
前119年より鋳造。1銖とは1両の24分の1,約0.67gに相当する。漢代から隋代に至るまで,歴代鋳造された。

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世界大百科事典(旧版)内の五銖銭の言及

【貨幣】より

…漢代初期には銅銭の重量・大きさをめぐって試行錯誤が繰り返されたが,前175年(文帝5),四銖半両銭の発行で安定した。さらに武帝のとき,三銖銭の暫定的発行(前120)を経て五銖銭が発行されるに及び(前119),銅銭の重量・様式は確定した。五銖銭は,以後,唐の621年(武徳4),開元通宝が発行されるまで,銅銭のモデルとされた。…

【銅銭】より

…半両銭は秦国の貨幣であったところから最初の統一貨幣の名誉を担うことになるが,方孔円銭という点で後世の銅銭の祖型とはなったものの,周縁部に外郭がなく,文字や形式も不整合なうえ,銭文とその重量が一致していなかった。漢の武帝は財政上の目的のほか,これらの不備を改める目的もあって五銖銭を発行した。五銖銭は重量や様式において貨幣としての条件を充足し,経済の実情にも適していたので,これ以後,銅銭のモデルとなった。…

※「五銖銭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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