改訂新版 世界大百科事典 「人工地盤」の意味・わかりやすい解説
人工地盤 (じんこうじばん)
人間の行う自然改造の結果,土壌表面が削られたり,盛土されたり,埋立地のように新しい土地が造成されたり,構造物などの上部に土が乗せられたりして,人工的に新しい地盤や大きく変更された地表面が生まれるが,これらが広義の人工地盤である。狭義には構造物表層につくられた地盤のように,その土壌が自然土壌と連なりがないか,きわめて少ないものを指していう。これは自然土壌と大きく異なるので,以下狭義の人工地盤について述べる。
都市内にみられる人工地盤の例に,建築物上部につくられた屋上庭園,テラスガーデン,屋内庭園などがあり,また地下街,地下鉄,地下ガレージ,地下貯水槽などの地下施設上につくられた庭園,公園がある。これら人工地盤には,装飾,観賞,修景,環境保全,防災などの目的で植栽されることが多い。人工地盤上の植物の生育にとって問題となるのは,土層の深さと土壌水分条件である。構造物上の土は荷重負担の関係で重量が制限され,したがって土層の厚さも制約される。地中の水分は人工地盤では上下左右とも逃げやすく,自然土壌のように深層部との連なりがないので,水分補給は天水か灌水に頼るほかなく,土層が薄くなるほど乾燥しやすい。植物にとっては土層が薄いと根張りが悪くなり,根の支持力を弱める一方,水分の補給も少なくなり,生育が悪くなり,とくに大型植物ほど悪くなる。土層の厚さと生育可能植物の種類間には次の関係がみられる。すなわち土層の厚さ30cmで芝草,45cmで小低木,60cmで大低木,90cmで浅根性高木,150cmで深根性高木が健全な生育をする。以上のことから土層の厚さが150cm以上あれば通常の植栽が可能であるが,構造物上の人工地盤では土と樹木による荷重を考えると土層を薄くすることが望ましい。屋上庭園の造成に際しては,地表に起伏をつけてそれに応じて植栽し,土壌も軽量化する。管理は乾燥対策が主で,とくに夏の灌水に留意する必要がある。
執筆者:北村 文雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報