太宰治(だざいおさむ)の小説。1948年(昭和23)6月から8月まで『展望』に連載。同年7月筑摩(ちくま)書房刊。いまは狂人となった大庭葉蔵(おおばようぞう)の手記を、作者が紹介するという形式をとっている。葉蔵は人間の生活の営みが理解できず、逆に互いに欺き合って少しも傷つかずに生きている人間を恐怖する。道化によってかろうじて人間と交わっている葉蔵は、世間とは個人のことだとわかりかけて少し自信をもつが、疑いを知らぬ純心な妻が犯されて決定的な打撃を受け、ついに人間失格者となる。太宰自身の体験を大胆にデフォルメして使いながら世俗への反感を表出し、大人の世界の入口でためらう年齢の若者を魅了した。作者は、作品完成後、連載中に心中した。
[鳥居邦朗]
『『人間失格』(新潮文庫)』
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