精選版 日本国語大辞典 「仕立・為立」の意味・読み・例文・類語
し‐たて【仕立・為立】
〘名〙
① つくり上げること。育てること。また、できあがったもの。
(イ) 工夫をこらして仕上げること。また、そのもの。
※異制庭訓往来(14C中)「自二核調(さねそろへ)一至二為立(シタテ)一。随分認レ手砕レ心所二結搆一也」
※筆のすさび(1469)「一句のしたて凡眼をおどろかし侍る」
(ロ) 裁縫をして衣服をつくりあげること。また、その衣服やそのできばえ。
※花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉下「秋子さんの御洋服は誠に仕立がよく出来ましたネ」
(ハ) 書籍をつくりあげること。製本、装幀などをして造本すること。
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)序「建(たつ)とは仕立(シタテ)の切形よく、平(たいら)は表紙に凹(むら)もなく、画ばかり除はひやかしにて、破は御免の表帋附」
(ニ) 人をしつけ育てること。教育。
※たけくらべ(1895‐96)〈樋口一葉〉九「父が仕業も母の処作も姉の教育(シタテ)も」
② よい成果。また、やりがい。
※応永本論語抄(1420)雍也第六「地盤の悪き者は、したてがなけれども、斉魯には地盤がよき程に、若明君有ては能なるべき也」
③ 飾りつけること。また、その飾りつけられたもの。〔御湯殿上日記‐文明一八年(1486)四月二八日〕
④ よそおうこと。また、その扮装(ふんそう)。いでたち。身なり。また、顔や体のつくり。
※風姿花伝(1400‐02頃)二「先、したて見苦しければ、更に見所なし」
⑤ ものをそろえ整えて、用途にかなうようにすること。準備。支度(したく)。
※信長公記(1598)一二「結句両共以て成敗、哀れなる仕立、是非なき次第なり」
し‐た・てる【仕立・為立】
〘他タ下一〙 した・つ 〘他タ下二〙 (「し」はサ変動詞「する」の連用形)
① 目的に合った、望ましい状態につくりあげる。仕あげる。
※源氏(1001‐14頃)若紫「御帳、御屏風など、あたりあたりしたてさせ給ふ」
② 特に、衣服をつくりあげる。
※源氏(1001‐14頃)乙女「正月(むつき)の御装束など〈略〉いときよらにしたて給へるを」
③ 美しくこしらえる。飾りたてる。
※枕(10C終)三「里人は、車きよげにしたてて見に行く」
④ あることをやりとげる。なしとげる。しでかす。
※史記抄(1477)一九「なんでまれ一事したてて立身する事もなうて、一身のすぎわいもない様な者は人ではないぞ」
⑤ 事件や話を、芝居などの作品に作り上げる。
※草枕(1906)〈夏目漱石〉三「夜具の中で例の事件を色々と句に仕立てる」
⑥ ある役柄に扮装(ふんそう)させる。また一般に、姿や身振りなどをある人物らしく見えるようにする。
※御伽草子・文正草子(室町時代物語集所収)(室町末)「いもうとひめ君はみやこへつき給へば、ひたちのくにのかみの大じんの御子にしたてまいらせて、にょうごにまいらせたまふ」
⑦ 事実でない物事をいかにも事実らしいようにつくりあげる。「悪人に仕立てる」
⑧ 教えこんで一人前のものにする。養成する。しこむ。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「このほど家まづしくしておもふほどにしたてず」
⑨ 治療する。または、病気を回復させる。
※咄本・多和文庫本昨日は今日の物語(1614‐24頃)「これほどにしたてたるに、いらざる辛労したとて、以ての外腹を立つる」
⑩ ととのえる。用意する。支度する。
※古本説話集(1130頃か)五六「われにつきたる物をしまずするけんどんのかみまつらんといへば物おしむ心うしなはんと思ひてしたつ」
※料理物語(1643)九「ねぶか汁 みそをこくしてだしくはへ、一塩の鯛を入よし。すましにも仕たて候」
し‐た・つ【仕立・為立】
(「し」はサ変動詞「する」の連用形)
[1] 〘自タ四〙
① 病気などが回復する。
※上井覚兼日記‐天正一四年(1586)八月二二日「当時疵は仕立候へども」
② 育つ。成長する。また、仕上がる。
※史記抄(1477)六「ちゃうど定た語なり。はやかうしたつたほどにと云心なり」
[2] 〘他タ四〙 育てる。また、つくりあげる。したてる。
※枕(10C終)九〇「みな、装束したちて、暗うなりたるほどに、もて来て着す」
※落語・ちきり伊勢屋(1893‐94)〈禽語楼小さん〉「是迄〈略〉其番頭が養育(シタツ)て呉れましたので御坐いますから」
[3] 〘他タ下二〙 ⇒したてる(仕立)
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