阿弥陀仏が一切の衆生を救済しようとしておこした誓願。また浄土教で他力の弥陀の本願を頼むことをいう。他力とはみずからの力によらないで,仏・菩薩の力によって救われること,とくに阿弥陀仏の四十八願,別しては第18願による救済をさす。浄土教では浄土門・念仏行を他力とし,聖道(しようどう)門・余行を自力(じりき)とする。また他力を他力本願の意とし,本願によらないものを自力とする。阿弥陀仏の本願力を名づけて他力とし,仏の本願力を頼む念仏を他力の念仏として,阿弥陀仏の本願力すなわち他力を頼んで,念仏による往生浄土を願うことを他力本願という。その心意には弥陀の本願力に身をあずけた真実の願いが籠められているが,後に他人まかせとか,もっぱら他人の力をあてにするといったような意味に悪用された。法然は,他力,すなわち阿弥陀仏の願力によって浄土に往生できる条件について,念仏をとなえても往生は定まっていないと少しでも疑念をもてば,仏の願力を借りて往生することはできず,また道心をさきとし,本願をおもうことをあとにすれば,この場合も阿弥陀仏の力で往生させてもらうことはできないと述べ,〈他力本願に乗ずるに二あり〉として〈一には罪つくる時乗ずるなり。その故は,かくのごとく罪をつくれば,決定して地獄におつべし。しかるに本願の名号をとなふれば,決定往生せん事のうれしさよとよろこぶ時に乗ずる也。二には道心おこる時乗ずるなり。その故は,この道心にて往生すべからず。これほどの道心は,無始よりこのかたおこれども,いまだ生死をはなれず。故に道心の有無を論ぜず,造罪の軽重をいはず,たゞ本願の称名を念々相続せんちからによりてぞ,往生は遂ぐべきとおもふ時に,他力本願に乗ずるなり〉(《法然上人行状絵図》)と説いている。また親鸞は〈名号を称ふといふとも,他力本願を信ぜざらんは辺地に生るべし。本願他力を深く信ぜん輩は,なにごとにかは辺地の往生にて候べき〉(《末灯鈔》)と他力本願の信・不信によって往生の場所がちがうことを教え,また〈弥陀如来の御ちかひのなかに,撰択摂取(せんちやくせつしゆ)したまへる第十八の念仏往生の本願を信楽(しんぎよう)するを他力とまふすなり。如来の御ちかひなれば他力には義なきを義とす,と聖人のおほせことにてありき(略)他力は本願を信楽して往生必定なるゆへにさらに義なしとなり〉(同上)と述べ,弥陀の本願を信楽(信じ願うこと)してはからいの無いことが他力だと説いている。
執筆者:伊藤 唯真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
他力とは自己を超えた絶対的な仏の慈悲(じひ)の力(働き)、本願とは一切衆生(いっさいしゅじょう)の救済を約束する仏の願いをさす。他力本願と熟字するときは、他力である本願ということで、他力がすなわち本願(力)である。このことばは真宗の教えを示す重要な基本用語として用いられるが、本願他力というのが一般である。親鸞(しんらん)は「他力とは本願力なり」と規定し、一切衆生の救済はこれによって成立することを明らかにした。現今、なにも努力しないで他人の力に頼ることを他力本願といっている場合がみられるが、これはまったく誤用である。
[瓜生津隆真]
出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報
阿弥陀仏の本願に頼って衆生が往生をとげること。一般的には成仏や往生のために自力ではなく仏・菩薩の救済に頼ることを他力という。とくに浄土真宗では阿弥陀仏の第十八願の念仏往生の誓願を本願といい,それを信じ願うことを他力本願という。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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