日本語の文法で、単語を文節構成上の働きによって二大別した場合の一つ。これに対する他の一類を自立語という。付属語はそれ自身実質的観念をもたず、したがって単独で文節を構成することはなく、つねに自立語に付属して文節をなす。これに属するのは助詞と助動詞である。文節中に自立語のないことはないが、付属語はないこともあり、一つあるいは二つ以上のこともある。この考えは橋本文法によっているが、付属語という用語は文部省の教科書『中等文法』によるもので、学校教育の面によく普及した。橋本自身は附属する語、附属辞あるいは辞と称した。単語の二大別という点から他学説をみるならば、山田文法の関係語(観念語に対立する)、時枝文法の辞(詞に対立する)がこれに近いが、根本的立場を異にするので、属する品詞にも違いがある。すなわち山田文法では、いわゆる助動詞を単語として扱わないので、関係語に属するのは助詞のみである。また、時枝文法の辞とは、話し手の立場の直接的表現であり、客体的な事柄を表現しえぬ語であるから、助詞、助動詞のほか感動詞、接続詞および陳述副詞も含まれ、一方いわゆる助動詞のなかから除外されるものもある。さらに、服部(はっとり)四郎のいう附属語とは、自由形式と付属形式とに言語形式を二分した場合の、自由形式の下位にある概念である。
[青木伶子]
『橋本進吉著『新文典 別記口語篇』(1948・冨山房)』▽『橋本進吉著『国語法研究』(1948・岩波書店)』▽『服部四郎著『言語学の方法』(1960・岩波書店)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかし,同音異義であるものを同一単語とまちがえて意味を考えると,その音形では実際はあらわせないものまであらわせるかの如く主張する結果になるのが普通なので,このことを利用して同音異義か同一単語かを見分けることが多くの場合可能である。なお,単語の意味の研究の中でも,日本語の助詞とか助動詞とかといったもののように,独立度の低い単語(〈付属語〉)の意味の研究は,特に困難な場合が多い。また,個々の単語の意味だけでなく,ある屈折形(全体)の意味(たとえば,ドイツ語名詞の〈三格〉の意味とか,フランス語動詞の〈現在形〉の意味とか)の研究もきわめて重要であり,かつ,困難である場合が多い。…
…派生語尾には常になんらかの意味が伴うといえるが,活用語尾にはなんらかの意味を伴うものとそうでないものがある。たとえば,日本語のkawakasanai(乾かさない)は,語根kawak‐に派生語尾‐as‐がついてkawakas‐という語幹が形成され,さらに活用語尾‐a‐がついて活用形ができ,付属語‐naiがさらにつづいているといえる(1モーラを全体として扱い,その内部で切り離すことをしない考え方では,kawa‐,‐ka‐,‐sa‐,‐naiと分析する)が,‐as‐はある種の意味を伴い,‐a‐は伴わないといえる。しかし,kawakaseの活用語尾‐e(または‐se)は,意味を伴っている。…
…この品詞に属する語は,文節の構成にあたって,つねに他の語の後に伴われ,文節の頭に立つことがない。この点で助動詞とともに,名詞,動詞,形容詞,副詞,接続詞などの自立語と区別して付属語とよばれるが,さらに付属語の中で活用の体系をもたないと認められる点で,助動詞と区別される。 助詞の役目は,名詞,動詞,形容詞などが,客観視される事態そのものを表すのに対して,それらの事態についての言語主体(話し手)の意味づけに関係する。…
…文を文節に分けるには,これが最も簡便な目安である)。日本語の単語は,〈(それ自身あるいはその活用形が)単独で文節をなしうるか否か〉によって,自立語(詞)と付属語(辞)とに大別され(後者はいわゆる助詞・助動詞,前者はそれ以外),1文節は,自立語1語で,あるいはその後に付属語1語ないし数語が伴われる形で,構成される。 連続した二つ以上の文節が一つのまとまりをなすと見られるとき,これを〈連文節〉という。…
※「付属語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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