伊豆山(読み)いずやま

日本歴史地名大系 「伊豆山」の解説

伊豆山
いずやま

木坂きさかの一山越えた北方にある山。居津山とも書く。海神かいじん神社(木坂八幡宮)のほか多くの神々が鎮座する。「津島紀事」は「伊豆は稜威なり、神霊威厳なるを謂う」とし、神霊を斎く場であったと思われる。応永一四年(一四〇七)六月三日の宗貞茂知行宛行状(海神神社蔵)に「居津宮司」とあり、同一七年の貞茂判物(同文書)に「いつのみやし」とみえ、早くから木坂八幡宮の宮司は伊豆宮司とよばれていた。「いづ」は斎く、稜威、厳で、神々の居着く聖地である。社前の平野を伊豆原と称したというが、「ごおうんまえ」(牛王の前)、「きようんはる」(経の原)という俗称もあり、また伊豆原を流れる小川は神田があったことから「おたんかわ」(御田の川)とよばれた。

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改訂新版 世界大百科事典 「伊豆山」の意味・わかりやすい解説

伊豆山[温泉] (いずさん)

静岡県東端,熱海市北部,岩戸山東麓に湧く温泉で,伊豆山神社とともに知られる。弱食塩泉,60℃。かつては洞窟から湧き出した湯が湯滝となって海に流れ落ちたことから,走湯とか滝湯と呼ばれた。養老年間(717-724)ころに発見され,平安時代には修験道霊場として栄え,鎌倉時代には幕府の保護が厚く,支坊は3800を数えたという。1867年(慶応3)皇室御料温泉となったが,周辺の源泉が増加したこともあり,走湯は1906年に枯渇した。しかし,70年に揚湯に成功し,全国でもまれな横穴式源泉を再現している。相模灘に面したながめのよい閑静な温泉で,多くの文人に愛され,与謝野晶子は《明星》同人とともにここで歌を残し,谷崎潤一郎はここを舞台に戯曲《腕角力》を書いた。温泉街の中央には,源頼朝が北条政子とあったといわれる逢初橋,岡田茂吉の収集した日本,中国などの東洋美術品を公開するため1957年に開設されたMOA美術館などがある。
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百科事典マイペディア 「伊豆山」の意味・わかりやすい解説

伊豆山[温泉]【いずさん】

静岡県熱海市北部の温泉。伊豆山川の谷から海岸にかけ泉源分布。弱食塩泉。30〜74℃。泉源の一つは海岸に接する洞窟からわき,走湯(はしりゆ)の名で古来有名。伊豆山神社がある。熱海駅からバスが通じる。
→関連項目熱海[市]

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世界大百科事典(旧版)内の伊豆山の言及

【熱海[市]】より

…人口4万5610(1995)。市域の主要な集落は,熱海,伊豆山,泉(伊豆湯ヶ原),多賀,網代などからなり,網代は近世には伊豆の産物の積出港として,また大坂から江戸への廻船の重要な港として栄えた。東は相模灘に面し,北から南にかけては,かつての多賀(熱海)火山の火口壁をなす山々に囲まれ,現在の市街地はかつての火口付近と考えられる所に位置している。…

【温泉】より

…その翌日が関東大地震となった。熱海に接する伊豆山温泉では9月1日の朝,温泉温度が異常上昇し,多量の水を注がなければ入浴できなかった。伊豆古奈温泉は地震前に白濁した。…

【走湯山】より

…静岡県熱海市伊豆山に鎮座する伊豆山神社の古名に由来する名称で,伊豆山神社は伊豆山権現,走湯権現,略して走湯山ともいった。真言宗般若院は同社の別当寺である。…

※「伊豆山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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