日本古代律令制下の地方行政村落の一種。令制では50戸を1里(郷)として編戸し,国・郡・里の3段階からなる地方行政組織の末端に位置づけたが,各郡内の山間僻地などでは,この原則にとらわれず,便宜に里が設置されることになっていた。その際の最低戸数について,〈大宝令〉の注釈書である〈古記〉は25戸としており,これに満たない場合は里長を置かず,5戸を単位とする保の長に里長の職務を代行させるものとしている。これが余戸で,正式な里ではないが,それに準ずる特殊な行政単位としてやむなく置かれたものである。したがって,その後の戸数の増加等により,これが正式な里に昇格することもあったわけで,その実例とみるべきものも知られている。その際,出雲国神門郡伊秩郷のように固有名をもつ里となった場合もあり,《和名抄》に多く見えるように単に余戸郷と称される場合もあった。現在も各地に余戸,余目などの地名となって残っている。
→里(り)
執筆者:鎌田 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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