余戸(読み)アマベ

デジタル大辞泉 「余戸」の意味・読み・例文・類語

あま‐べ【余戸】

あまりべ」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「余戸」の意味・読み・例文・類語

あまる‐べ【余戸】

〘名〙
令制下の村落制度。五〇戸を一里として里を編成するとき、五〇戸にあまる端数の戸で編成した里。また、その戸。人口が増えて五〇戸になれば正規の里名をつけた。あまりべ。
出雲風土記(733)総記「玖の郡、郷は陸拾弐、余戸(あまるへ)は肆、駅家は陸、神戸は漆なり」
② 江戸時代、貧民乞食が住んでいた村。あまべ。
名物六帖(1727‐77)人品箋「丐戸 アマルベ コジキムラノモノ」

あま‐べ【余戸】

〘名〙 =あまるべ(余戸)
浮世草子好色一代男(1682)七「紙屑拾ひが集て、あまべに帰る」

あまり‐べ【余戸】

〘名〙 =あまるべ(余戸)

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改訂新版 世界大百科事典 「余戸」の意味・わかりやすい解説

余戸 (あまるべ)

日本古代律令制下の地方行政村落の一種。令制では50戸を1里(郷)として編戸し,国・郡・里の3段階からなる地方行政組織の末端に位置づけたが,各郡内の山間僻地などでは,この原則にとらわれず,便宜に里が設置されることになっていた。その際の最低戸数について,〈大宝令〉の注釈書である〈古記〉は25戸としており,これに満たない場合は里長を置かず,5戸を単位とする保の長に里長の職務を代行させるものとしている。これが余戸で,正式な里ではないが,それに準ずる特殊な行政単位としてやむなく置かれたものである。したがって,その後の戸数の増加等により,これが正式な里に昇格することもあったわけで,その実例とみるべきものも知られている。その際,出雲国神門郡伊秩郷のように固有名をもつ里となった場合もあり,《和名抄》に多く見えるように単に余戸郷と称される場合もあった。現在も各地に余戸,余目などの地名となって残っている。
(り)
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「余戸」の意味・わかりやすい解説

余戸
あまりべ

律令(りつりょう)制下における地方行政村落組織の特殊形態。「あまるべ」とも読む。律令に正式な規定はなく、50戸1里の編戸で余った戸を習慣的に「余戸」と称したもので、その起源木簡(もっかん)により浄御原(きよみはら)令下に求められる。その後、郷里(ごうり)制下で駅戸(えきこ)、神戸(かんべ)が50戸のなかに設置されると、残りの戸も余戸とされた。また、戸の増加に伴い郷へ昇格した例もみられる。今日でも余戸、余目などの地名が残る。

[関 和彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「余戸」の意味・わかりやすい解説

余戸
あまりべ

「あまるべ」ともいう。令制の村落組織の一つ。規定では,1里を 50戸で構成し,余りの戸 (→房戸 , 郷戸 ) が生じたとき,これを余戸といい,それが 10戸以上の場合は余戸里を構成し,10戸以下の場合は近接の大村に付加することになっていた。しかし実際に適用されたのは,特別な村か辺地だけであった。

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