地殻変動の観測の一部として、地表の傾斜を精度よく測る観測器。地震予知や火山噴火予知などの地球物理測定に使われる。地表だと雨や風や温度の影響を受けるので、地下のトンネル内や縦穴の底に設置する。感度をあげ、安定性を高めるために、さまざまな原理のものが使われているが、これはそれぞれ一長一短があり、また設置場所の制約があるためである。いちばん直観的でわかりやすいのは、数十メートル離して設置した水を満たした二つの器の底をパイプでつないだ水管傾斜計で、器の水面の高さの変化をマイクロメートルの単位で測る。設置するにはトンネルが必要である。
このほかトンネルを必要とせず、井戸の底などに設置する小型の振り子も傾斜計として使われる。また、上に凸(とつ)な短いガラス管を満たした液体に一つの泡を封じ込めた泡式傾斜計は、感度が高く小型なのでよく使われる。これら小型の観測器は感度は高いが、長期の安定性には欠ける。高感度の傾斜計は100分の1秒角の傾斜、つまり東京―名古屋間で100円玉の厚さ分の変化をも測ることができる。
どの傾斜計も地表近くで測っているので、本来測るべき地殻変動、つまり地下深くの岩盤の傾斜をどのくらい代表しているかに疑問が出ることがある。
火山噴火の前に山体膨張がおきることがあり、噴火予知の重要な手段とされている。この山体膨張を観測するために泡式傾斜計がよく使われる。縦穴を掘るだけでトンネルが不要であることと、感度が高い傾斜観測ができるために多くの火山で連続観測が行われている。
[島村英紀]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(阿部勝征 東京大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…傾斜計,傾斜儀ともいう。傾斜を測定する器具で,地質調査用,気象観測用,鉱山用,工場での計測用などさまざまなタイプのものがある。…
※「傾斜計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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