元文金銀(読み)ゲンブンキンギン

デジタル大辞泉 「元文金銀」の意味・読み・例文・類語

げんぶん‐きんぎん【元文金銀】

江戸幕府が元文元年(1736)から発行した金貨銀貨裏面に「文」の字の極印があり、文字ぶんじ金銀ともいう。古文字金銀真文字金銀

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百科事典マイペディア 「元文金銀」の意味・わかりやすい解説

元文金銀【げんぶんきんぎん】

江戸時代,1736年(元文1年)から鋳造・流通した貨幣。真文字(しんもじ)金銀とも。正徳(しょうとく)金銀享保(きょうほう)金銀に代わり,品位を落として改鋳した貨幣(小判・丁銀など)。品位は正徳金銀元禄(げんろく)金銀中位で,出目(でめ)(改鋳益金)による財政収入の増加,諸物価の調整をはかり,沈滞していた景気を持ち直させ,以降80年以上にわたって通用した。
→関連項目大岡忠相

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改訂新版 世界大百科事典 「元文金銀」の意味・わかりやすい解説

元文金銀 (げんぶんきんぎん)

文字金銀ともいう。1736年(元文1)正徳享保期の金銀貨を改鋳した元文小判,同一分金,同丁銀,同豆板銀をいう。正徳・享保期の貨幣改鋳による良貨政策のため,貨幣流通量が減少し,景気が沈滞していたので,江戸幕府は元文期の改鋳では再び悪鋳に踏み切り,物価の調整を行い,景気を持ち直した。そのため元文金銀は80年以上にわたって通用した。金銀貨のほか,39年には鉄銭寛永通宝(1文通用)が発行された。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「元文金銀」の解説

元文金銀
げんぶんきんぎん

1736年(元文元)将軍徳川吉宗が享保幣制を転換し,新たに鋳造・発行した金銀貨。年号の1字である「文」が極印されたので,文金・文銀ないし文字金・文字銀ともいう。また同じ「文」の極印のあった,のちの文政金銀と区別するため,その書体から真文金銀とも称した。金貨(小判・一分金)は品位65.71%,量目3.5匁,銀貨は46%の品位で,元禄金銀より価値が低かった。この悪貨政策への転換により,貨幣不足が解消された。以降,幕末までの改鋳は額面あたりの品位・量目を落として貨幣量を増やし,同時に幕府の改鋳益金も得る方式が定着した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「元文金銀」の意味・わかりやすい解説

元文金銀
げんぶんきんぎん

元文1 (1736) 年,8代将軍徳川吉宗のとき改鋳発行された金銀貨幣。正徳・享保金銀など良質貨幣の流通によって諸物価が暴落し通用金銀が不足したため,改鋳して質を落しその数をふやして経済の安定をはかった。極印に「文」の字があるところから,文字金,文字銀,またのちの文政金銀とを区別して古文字・真文字金銀などともいわれる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「元文金銀」の解説

元文金銀
げんぶんきんぎん

江戸中期の金銀貨
1736(元文元)年幕府が鋳造発行した小判・一分金・丁銀・豆板銀の総称。品位は,金貨が慶長・正徳・享保金より悪く元禄金より良質,銀貨は元禄銀より悪い。改鋳の目的は出目 (でめ) による財政収入の増加と物価調整にあり,これにより経済は安定した。

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世界大百科事典(旧版)内の元文金銀の言及

【米価】より

…とくに享保期(1716‐36)の低水準が前後の時代と際立っているが,これは経済の発展に応じて貨幣増鋳が必要とされ,そのためにはある程度の貨幣の質の低下が不可避であったにもかかわらず,あえて貨幣良鋳・収縮政策をとったことによる。つづく1736年(元文1)‐1818年(文政1)の元文金銀の時代は,米価は比較的安定し,中央市場では横ばいないし若干低落気味であった。ただ,九州,信州,出羽のような遠隔地では若干上昇気味に推移し,いずれも中央より低水準であったので,価格差がそれだけ縮小する結果となった。…

※「元文金銀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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