平安時代初期に行われた田制。広義には,私営田に対するものとして,官田,諸司田,勅旨田,公営田などの総称の意味で用いられるが,一般的用法ではない。狭義には,813年(弘仁4)の石見国,823年の大宰府管内,879年(元慶3)の上総国などの公営田をいうが,一般的にはその内容が比較的詳細にわかる大宰府管内公営田制をいう。大宰府管内公営田制とは,823年,ときの大宰大弐小野岑守の建策によって大宰府管内(九州)において行われた公営田制をいう。これは(1)管内9ヵ国の口分田および乗田の中から良田1万2095町をさき,それに徭丁6万0257人を投入して5人で1町を耕作させ,その中から有能な者を選んで1町以上を監督させて耕営し,(2)その収穫稲より必要経費(佃功,租料,調庸料,食料,修理溝池官舎料)を差し引いた108万0421束を納官し,もって財収増加をはかる,というプランである。ただし,大宰府がたてたプランではこの試みを30年間行うことになっていたのを,中央政府はそれを4年に限るなど,原案と実施案とでは若干の差異がある。この大宰府管内公営田制の主眼は,農民からの調庸(手工業生産物)の収取を停止し,その代りに稲(土地生産物)を手に入れ,その稲で手工業生産物を交易するというものであったが,その具体的意味づけに関しては異論がある。なお,その実施の具体的様相や終末などは明らかでない。
執筆者:中野 栄夫
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「こうえいでん」とも読む。(1)広義には私営田に対するものとして、官田、諸司田(しょしでん)、勅旨田(ちょくしでん)、公営田(狭義)などの総称の意味で用いられるが、これは一般的用法ではない。(2)狭義には、813年(弘仁4)の石見(いわみ)国、823年(弘仁14)の大宰府(だざいふ)管内(九州)、879年(元慶3)の上総(かずさ)国などの公営田をいうが、一般的には、その内容が比較的詳細にわかる大宰府管内公営田制をいう。
大宰府管内公営田制は、823年、大宰大弐(だいに)小野岑守(みねもり)の建策によって大宰府管内において行われた。これは管内9か国の口分田(くぶんでん)および乗田(じょうでん)のなかから良田1万2095町を割き、それに徭丁(ようてい)6万0257人を投入して、5人で1町を耕作させ、そのなかから有能な者を選んで1町以上を監督させて耕営し、その収穫稲より必要経費を差し引いた108万0421束を納官し、財収増加を図る、というプランであった。ただし、大宰府の原案ではこの試みを30年間行うことになっていたのを、中央政府はそれを4年に限るなど、原案と実施案とでは若干の相違がある。この公営田制の主眼は、農民からの調庸(ちょうよう)(手工業生産物)の収取を停止し、そのかわりに稲(土地生産物)を手に入れ、その稲で手工業生産物を交易(交換)するというものであったが、その具体的意義づけに関しては異論がある。なお、その実施の具体的様相や終末などは不明である。
[中野栄夫]
『中野栄夫著『律令制社会解体過程の研究』(1979・塙書房)』
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9世紀に実施された国家直営田の一種。813年(弘仁4)に石見国,823年に大宰府管内,879年(元慶3)に上総国で行われたものが知られる。大宰府管内のものは大宰大弐小野岑守(みねもり)の建策で,管内の良田1万2095町を割き,徭丁(ようてい)6万257人を投入してその耕営にあたらせ,穫稲505万4120束から佃功・租料・調庸料・食料・修理溝池官舎料を差し引いた108万421束を納官し,財源の増加を図ったもの。正長(しょうちょう)には民間から有能な者が選ばれ,1町以上の田の管理を任された。徭丁の調庸は免除されるが,その分を公営田からの収穫で補っている点に,人頭税から土地税へという律令国家の基本体制の変化をみいだせる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
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… 調は律令財政の最も重要な収入源であり,官人の給与(位禄,季禄)にもあてられたので,その品質の低下や未納に対して,政府は厳しい態度でのぞんだが,品質の低下や未納が増加してくると,それを補うために,交易雑物(ぞうもつ)(出挙(すいこ)の利稲で調庸物に相当する物品を購入する)制度が展開していった。823年(弘仁14)に西海道諸国で試行された公営田(くえいでん)の制は,収穫稲によって調庸物を購入して貢上させるもので,中央政府と国衙との間では調庸の現物貢上の原則が保持されているが,国内での調庸の徴収は,課丁から直接に徴収するという律令の原則が修正されている。そして平安後期には,調は名(みよう)を単位に賦課される公事(くじ)のなかに吸収されていったと推定される。…
※「公営田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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