一定の計画にしたがった国土の開発,利用,保全等合理的な土地利用を図り,あるいは公共施設の整備その他公共事業の遂行のために,特定の財産権に対して課せられる権利行使の制限を公用制限という。公用負担の一種である。公用制限により規制を受ける財産権の対象は,不動産であると動産であるとを問わないが,土地に対する公用制限が最も多くかつ重要である。今日,公用制限は多様化し,強化されているが,公用収用とは異なり財産権を取得するものではないので,損失補償の要否が具体的場合に問題になる。公用制限には,一定の行政上の計画にもとづく地域規制(ゾーニング)を実施する手段として行われる防災地域制,地域地区制,保全地区制と,公共事業のために,特定の土地または物に対して行われる負担制限,公用使用,公物制限がある。防災地域制は,財産権行使に起因する災害の発生を予防するために課せられるものであり,地域地区制は,用途地域制等都市内の土地利用の純化を図るためのものである。いずれも社会共同生活との調和を保つために必要とされる財産規制であるので,損失補償を必要としない。これに対して,歴史的風土特別保存地区のような保全地区制は,地区内の財産の本来の効用とは無関係に,その効用の発揮を妨げることとなるような規制を加えるものであるから,損失補償を必要とする。負担制限は,公共施設管理上の支障を予防し,あるいは将来施行される予定の公共事業の円滑な遂行を確保するために課せられるもので,都市計画制限等がその例である。これも,一般的には,財産権者の受忍の範囲内のものであるから,損失補償を要しないと考えられている。公用使用は,特定の公共事業等のために,特定の財産権上に使用権を設定して,使用期間中これを妨げる権利行使を禁止するものである。土地の使用料相当額が損失補償として支払われる。公物制限は,私有財産である特定の物それ自体が公益上必要なものであるために課せられる制限で,重要文化財等に対する制限がその例である。
執筆者:小高 剛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
特定の公益事業の需要を満たすために特定の財産権に固着して課せられる公法上の制限。公用負担の一種である。おもな例は土地に対する公用制限で、これを公用地役という。公用制限には、私人の所有物を公益事業に供するための制限である公物制限(私有道路など)、公益事業に便宜を図るために、事業に対しては局外の地位にある財産に制限を加える負担制限(沿道区域、河川保全区域、都市計画区域等)、特定の公益事業者が他人の土地の使用権を取得する公用使用の3種がある。補償は与えられるとは限らない。
[阿部泰隆]
…しかし,貨幣経済体制の下では,負担金を除き存在理由に乏しく,負担金もその算定が難しく,十分に活用されているとはいえない。物的公用負担は,財産権に固着して課せられるものであるが,負担の性質の差異により,公用制限,公用収用,公用権利変換に分けることができる。公用制限は,一定の計画に従った国土の開発,利用,保全等合理的な土地利用を図るため,あるいは公共施設の整備その他公共事業の遂行のために特定の財産権に対して課せられる権利行使の制限をいう。…
※「公用制限」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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