公的な証験のこと。(1)平安時代に私有地の売買・譲与によって生ずる土地の所有権を公認し,特権を賦与するために発給された公文書。荘園の場合には,治田・墾田の公認を申請した売主・譲主の解状(げじよう)に,国司,郡司が公判を加える形式をとったが,平安京内では,売主の辞状にもとづいた条令の売買公認を申請した解状に,京職が証判を加える形式をとった。所領等の領有権の根拠となる文書として,根本公験あるいは本公験と称され,訴訟等においては〈田畠領掌の道公験之証拠によるべきなり〉とされた。所領等の相続や売買・寄進に際してはこれらの文書を添付しなければならず,また紛失のときには公証を加えた官司に紛失証判を申請し,亡失した権利の再交付のために公験紛失状を作成した。鎌倉時代になってから,私的な売券や寄進状等を除いて,所領等の権利を公認した院宣・綸旨(りんじ)および幕府発給の所領安堵の文書等も公験といわれた。(2)律令制のもとで,僧尼にたいして,官の許可〈度縁(どえん)〉を得て出家・受戒したことを公認した証明書。
執筆者:橋本 初子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
財産や権利の売買・譲与に際して公権力が発する証書。私的権利を保証する基本的な文書であり、財産・権利の他者への移動は、公験を伴うか否かが指標とされた。元来は律令(りつりょう)制のもとで、公式令解式(くしきりょうげしき)もしくは辞式(じしき)の形式に基づいて売り主・譲り主が売買・譲与の申請書を作成提出し、それに郡司・国司らが証判を加えることにより効力を発した。しかし時代とともに、権利・財産を保証する院宣・宣旨など、あるいは幕府発給の所領安堵(あんど)の文書をも公験とよぶようになった。また律令制下で、僧尼に対して、その身分を証明するために発せられた文書、僧尼の旅行の保証として下給された証書も公験という。
[吉岡眞之]
『相田二郎著『日本の古文書』(1949・岩波書店)』▽『佐藤進一著『古文書学入門』(1971・法政大学出版局)』
古代~中世に朝廷や幕府などが発行した,権利を公認する内容の文書。私有地に対する権利を保証する文書が多い。その土地を売却するときは,公験も買主に渡される。土地の一部を売却する場合は,別に写しを作って渡すか,渡せない旨のことわり書きをする。売主の手もとに残った公験は本公験(ほんくげん)といい,売却した土地に関する記載は抹消する。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新