共同訴訟(読み)キョウドウソショウ

デジタル大辞泉 「共同訴訟」の意味・読み・例文・類語

きょうどう‐そしょう【共同訴訟】

一つ民事訴訟手続きで、二人以上原告または被告がいる訴訟形態。

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精選版 日本国語大辞典 「共同訴訟」の意味・読み・例文・類語

きょうどう‐そしょう【共同訴訟】

  1. 〘 名詞 〙 一つの民事訴訟で、原告または被告、あるいは当事者双方が二人以上である訴訟、およびその形態。〔現代大辞典(1922)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「共同訴訟」の意味・わかりやすい解説

共同訴訟 (きょうどうそしょう)

原告が複数,または被告が複数存在する民事訴訟をいう。債権者が原告となり主たる債務者と保証人とを被告として提起する訴訟,公害の被害者多数人が原告となり複数の企業を被告として提起する訴訟などがその例である。民事訴訟における概念であり,刑事訴訟にはこの概念はない(〈被告人〉の項を参照)。

 訴訟は複雑に展開する手続であるから,原告1人,被告1人,審判の対象も1個,という形が最も簡明であり処理しやすい。したがって,古い時代には共同訴訟は禁止されるのが一般的傾向であった。ただし,1個の権利義務が複数の人間に合同で帰属する場合は共同訴訟禁止の例外とされた。近代の訴訟法の歴史は,この例外とされていた共同訴訟がしだいに広く認められていく方向で展開された。訴訟法が進歩し,書面審理主義法定証拠主義等の共同訴訟の障害が除去されたからであり,他方,社会生活が複雑化し複数人が関係する紛争がふえたため,1個の訴訟で複数人に関連する紛争を一挙に解決する共同訴訟の利点が強く認識されるに至ったからである。

 日本の民事訴訟法も,この展開を受けて紛争になんらかの共通性があれば共同訴訟を広く認める立場をとっている(民事訴訟法38条)。元来は別々に訴えられた訴訟が,裁判所の判断により併合され共同訴訟となるという道も認められている(152条)。他人間に係属していた訴訟に第三者が参加して(訴訟参加)共同訴訟になることもある(52条)。

ところで,共同訴訟の認められる範囲が広がるにつれ,かなり性格の異なるものが同じ共同訴訟の名で呼ばれることになり区別の必要が生じてくる。日本では,共同訴訟は以下の3種に分類される。第1は,共同訴訟としなければならず,かつ全員に同時に同一内容の判決がなされなければならないという類型であり,固有必要的共同訴訟と称される。たとえば,ある夫婦の婚姻の取消し(民法743条以下)を第三者が請求する訴訟は,必ず夫婦両名を共同被告としなければならず,判決も夫と妻とで内容を異にすることは許されず,必ず夫婦両名に対して婚姻を取り消すか,取消請求を棄却するかしなければならない。ある夫婦の婚姻が,夫に対しては取り消され,妻に対しては取り消されず維持されるという事態は,複雑にすぎ,社会生活上耐えられないからである。

 第2の類型は,必ず共同訴訟でなければならないというわけではないが(この点で第1の類型と異なる),共同訴訟となった場合には全員に同時に同一内容の判決がなされなければならないというものであり,類似必要的共同訴訟と称される。株主総会決議取消しの訴えがその例であり,株主1人ででも会社相手に提起することができるが(この場合は共同訴訟ではない),複数の株主が原告になった場合は同一内容の判決にならなければならない,とされるのである。株主総会の決議の効力が,株主ごとに異なるのは,不都合だからである。第1,第2類型は必要的共同訴訟と呼ばれ,民事訴訟法40条が適用される。すなわち,手続が全員につき同時に進行し(たとえば,1人につき手続中断・中止の事由が発生すれば訴訟手続は全員につき中断・中止となる),判決の基礎となる資料も全員につき同一でなければならないとされ(その結果,不利な行為は全員でしなければ効力を生じないとされる,たとえば1人で自白をしても自白の効力は生じない,全員で自白をした場合にのみ自白の効力が生ずる),1人でも上訴を提起すれば全員が上訴人となる。

 第3の類型は,以上の民事訴訟法40条の規律が適用にならないものであり,共同訴訟とすることは必要ではなく,共同訴訟となった場合でも判決内容が同一である必要はないというものである。〈通常共同訴訟〉と称される。公害の被害者の提起する訴訟はこの類型であり,各自単独で訴えを提起してもよいし共同で提起してもよく,共同訴訟となった場合でも,ある者については2000万円の損害賠償が認められ,他の者には200万円しか認められないということも適法であり,1人が上訴しても他の者が当然に上訴人になるわけではない。このように,第3類型では共同訴訟人は各自独立して扱われ,その間の結合はゆるいのであるが,証拠は共通に利用されるため判決内容が相互に矛盾することはまれであり,関連紛争が一挙に解決されるという共同訴訟の利点は十分に存在する。もっとも,いたずらに審理が複雑になるときは,裁判所の判断により弁論を分離することが,第3類型では許されている(民事訴訟法152条)。

 具体的に,ある訴訟が以上の3類型のどれにあたるかは典型例では問題はないが,限界事例では判例・学説が錯綜し,民事訴訟法学の難問の一つとされている。まず,最高裁判所の判例は,第1・第2の類型である必要的共同訴訟の範囲を狭く解する傾向にあり,登記がA→B→Cと移転した場合にCがA,Bを相手に登記抹消を求める訴訟,共同相続人に対して登記の移転を求める訴訟,相続人の間で遺言の無効確認を求める訴訟,をいずれも必要的共同訴訟ではないと解している(少なくとも第1類型の固有必要的共同訴訟ではないとしている)。連帯債務者に対する訴訟も必要的共同訴訟ではないと考えられており,常識的には合一に定められなければならない法律関係も,訴訟法の論理のもとでは,相対的に処理されてよいとするのである。これに対し学説の一部には,必要的共同訴訟の範囲を拡大しようという動きがあり,あるいは,利害関係人の裁判を受ける権利を重視して,たとえ訴訟当事者とするまでの必要はないとしても,密接な利害関係人には訴訟の存在を通知すべきではないかという,新たな方向への議論も存在する。今後の展開が注目されるところである。

 なお,近時関心を集めている公害訴訟・消費者訴訟などのいわゆる集団訴訟は,訴訟形態としては〈通常共同訴訟〉に分類される。しかし,多数の共同原告の間に集団的一体性があり,それを証拠調べその他の点で訴訟手続の上にどう反映させていくかは現在模索中であり,代表者が訴訟をすることを許すクラス・アクションの立法的提言をはじめとして,共同訴訟論(より一般的には多数当事者訴訟論)の今後の課題である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「共同訴訟」の意味・わかりやすい解説

共同訴訟
きょうどうそしょう

一つの訴訟手続で原告または被告あるいはその双方が複数である訴訟形態をいう。複数の者の訴訟がなんらかの関連性をもっている場合には、一つの手続で、すなわち口頭弁論や証拠調べを共通にしたほうが共通の争点や事実について裁判所が共通の認識を得ることができるし、当事者および裁判所にとって訴訟経済にもなるので、共同訴訟の審理方式が設けられている。したがって、共同訴訟は、審理を共通にすることによる利点が期待できるときに認められる。すなわち、共同訴訟人となるべき者の権利・義務相互間になんらかの関連性のある場合であって、具体的には以下の場合に共同訴訟が認められる。

(1)共有者が共有物の引渡しを求める権利を主張する場合のように、訴訟の目的たる権利または義務が数人について共通であるとき。

(2)一つの交通事故における数人の被害者が加害者に損害賠償請求をする場合のように、訴訟の目的たる権利または義務が同一の事実上および法律上の原因に基づくとき。

(3)家主が数人の借家人に対してそれぞれ家賃の支払いを求める場合のように、訴訟の目的たる権利または義務が同種であり、かつ事実上および法律上同種の原因に基づくとき。

 また、一つの手続で数個の事件を審理するのであるから、訴えの併合に関する要件、すなわち、各人の請求についての訴訟手続が同種のものであること、受訴裁判所が各請求につき管轄を有すること、などの要件が備わっていることが必要である。さらに共同訴訟は請求相互の関係により、通常共同訴訟と必要的共同訴訟(合一確定訴訟ともいう)とに分類される。この区別は、各共同訴訟人につき異なる内容の判決をなしうるか否かを基準にして行われる。

[本間義信]

通常共同訴訟

通常共同訴訟とは、各共同訴訟人の請求が別個独立でそれぞれ別々に訴えを提起できるし、判決も別個であってよい共同訴訟をいう。たとえば、債権者が数人の連帯債務者を被告として訴えを提起する場合、判決の効力は連帯債務者相互に及ばないから、判決はまちまちであってよく、通常共同訴訟である。この場合、共同訴訟人は互いに独立しており、各人の、または各人に対する訴訟行為、共同訴訟人の1人につき生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない(共同訴訟人独立の原則。民事訴訟法39条)。

 また、たとえば金銭消費貸借の契約当事者とその代理人を共同被告とする訴訟で、契約当事者に対し貸金の返還を求めるとともに、代理人に対し、本当は代理権がないのに、あると称して契約をした無権代理の場合の不当利得返還を求める場合、通常共同訴訟であるが、金銭の授受が認められれば、原告は被告のどちらかに勝てるはずである。しかし、両者に対する訴訟が別々に行われると、それぞれに対する裁判所の判断が異なり、両者に敗訴してしまう可能性がある。これを避けるためには、両者に対する訴訟を同一の手続で審理・判決する必要がある。このように共同被告の一方に対する権利と他方に対する権利が法律上両立しえない関係にある場合に、原告の申出があれば、弁論および裁判は分離しないで行わなければならない(この申出を「同時審判の申出」という)。この申出は、控訴審の口頭弁論の終結のときまでできる。前記の場合において、共同被告の各人に対する控訴事件が同一の控訴裁判所に別々に係属するときは、弁論および裁判は併合して行わなければならない。

[本間義信]

必要的共同訴訟

必要的共同訴訟とは、共同訴訟人の1人の受けた判決の効力が他の共同訴訟人にも及ぶ関係から、共同訴訟人の全員につき同一内容の判決をしなければならない共同訴訟をいう。

 これには類似必要的共同訴訟と固有必要的共同訴訟との2種がある。類似必要的共同訴訟とは、数人の株主の提起した株主総会決議取消しの訴えのように、当事者たりうる者が全員そろわなくてもよい場合である。固有必要的共同訴訟とは、第三者が夫婦を共同被告として起こす婚姻無効の訴えのように、当事者たりうる者が全員そろわなければ訴えが不適法とされる場合である。これらの必要的共同訴訟では各共同訴訟人につき判決内容が同一でなければならないから、訴訟の進行や、訴訟資料が各人につき共通でなければならず、したがって共同訴訟人の1人の訴訟行為は、全員の利益においてのみ効力を生じ、1人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対して効力を生ずる。訴訟の中断・中止も全員につき生ずる(民事訴訟法40条)。

 共同訴訟は、当初から共同訴訟として訴えを提起することによって成立するし、単一の訴えの係属後も、受継、訴訟参加・引受け、弁論の併合によって事後的にも生ずる。

[本間義信]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「共同訴訟」の意味・わかりやすい解説

共同訴訟
きょうどうそしょう
Streitgenossenschaft

原告または被告,あるいはその双方が複数人によって構成されている訴訟形態。共同訴訟は,訴え提起の当初から生じる場合と訴訟の係属したあとに発生する場合とがある。共同訴訟の種類としては,次のようなものがある。 (1) 通常共同訴訟 元来別々の訴訟がたまたま同一の訴訟手続で審判されるもの。 (2) 固有必要的共同訴訟 数人が共同してのみ訴えを提起し,または訴えを受けうるもの。 (3) 類似必要的共同訴訟 単独でも当事者になれるが,共同して訴え,または訴えられた以上,判決は共同訴訟人全体に合一にのみ確定することが要求されるもの。

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