領海を測る基線の内側のすべての水域。すなわち領海より陸地側の水域。一国の領土の内部にある河川,湖沼,運河などのほかに,海岸の外側で基線より内側の水域や湾,内海,港の内部が含まれる。内水と領海をあわせて領水ともよぶ。
領海を測るための通常の基線は海岸の低潮線であるので,海岸の低潮線と高潮線の間は内水である。また,海岸線が著しく曲折したり,海岸に沿ってすぐ近くに一連の島があるような地形のところでは,海岸の適当な地点間を直線で結ぶ方法が認められている(直線基線)。この場合には,直線基線の内部の水域が内水である。1982年の国連海洋法条約で認められた群島水域は,この直線基線の概念を拡張して群島国家に適用し,群島基線が認められた。群島基線によって囲まれる群島水域の法的地位は,直線基線内部の内水とほぼ同じであるが,同群島水域の中にさらに湾・河口・港といった別の内水の存在を認めている。
湾については,湾の入口(24カイリまで)を結ぶ閉鎖線の内部が内水である。湾口がそれ以上の場合には,湾内で最大の水域を囲むように引かれた24カイリの直線が基線となる。湾口がそれより広くとも,沿岸国が古くから湾として主張してきたいわゆる〈歴史的湾〉の場合には,その入口を横切って引かれる線が基線となる。
河川については,河川が直接に海に流入している場合には,河口を横切って引いた直線の内部が内水となる。港については,港湾施設の不可分の一部をなす恒久的な港湾工作物で最も外側にあるものの間を結ぶ直線の内部が内水である。
内水においては,沿岸国の領域権が領土におけるのと同様に行使されるのが原則である。また,領海とは異なり,外国船舶は無害通航権を有しない。もっとも,直線基線内部の内水で,以前は領海または公海の一部とみなされてきた水域においては,外国船舶の無害通航権は存続する。同様の考えより,群島水域では,無害通航権が認められねばならず,群島国が指定した航路では,国際海峡の通過通航権に類似した群島航路帯通航権が認められる。
また,河川や運河は内水であるが,国際河川や国際運河は,国際化を定めた条約の規定により外国船舶の通航に開放されており,その限りで内水としての性格に制限を受けている。
執筆者:尾崎 重義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
国の領土内にある河川・湖などの内水面のほか、国際法においては、とくに領海を測るための基線の陸地側にある水域をいう。国は、内水を領土の一部とみなして主権のもとに置く。通常の海岸の低潮線と高潮線との間にある水域、海岸線が入り込んでいたり、近くに一連の島があるために直線基線が採用されている場合には直線基線と実際の海岸線との間にある水域、湾口の幅が24海里を超えない場合の湾の内側の水域、さらに群島水域内の一部の水域は、内水とされる。歴史的湾または歴史的水域(沿岸国が歴史的権原をもつ湾または水域)も内水とされる。瀬戸内海は、自然の水路によって外洋と連絡している特殊な例であるが、日本の内水である。一般に、内水では領海と異なって外国船は無害通航権をもつものではないが、従来から外国船の通航に使用されてきた海が、国によって新たに内水化された場合には、外国船の無害通航権は従前どおり存続するものとされている。
[中村 洸]
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