民法733条は、女性は離婚後6カ月間再婚できないと規定。医学が発達していなかった明治時代に、生まれた子どもの父親が誰かという争いを避けるため設けられた。法律で禁止期間を定める国は世界でも珍しく、期間の短縮や撤廃を求める声が内外から出ている。法制審議会(法相の諮問機関)は1996年、100日に短縮する改正案を答申したが、保守系国会議員の反発などで長く実現しなかった。最高裁は昨年12月の判決で、100日を超える部分を違憲と判断した。
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女性が前婚の解消または取消しの日以降、再婚を禁止される期間。待婚期間、寡居期間ともいう。日本の民法では、これを100日と規定している(民法733条1項)。
再婚禁止期間は、2016年(平成28)6月の民法改正前には、前婚の解消または取消しの日から6か月とされていた(旧民法733条1項)。しかし、6か月の再婚禁止期間は不適切あるいは女性に対して不公平であるという声が多かった。すなわち、前夫の子か後夫の子かわからなくなるといっても、生まれてくる子の嫡出推定が重なるのは、前婚解消の日から100日までの間に再婚した場合に限られるのだから(民法772条は婚姻成立の日から200日後または婚姻の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子を夫の子と推定している)、再婚禁止期間は100日で十分だという意見が一般的であった。さらに進んで、再婚禁止期間をまったく廃止すべきだという主張もされている。いくら法律で期間を決めても事実上再婚することまで阻止することは不可能であるし、離婚による前婚解消の場合には婚姻解消以前に同居をやめていることも多く、再婚禁止期間はかえって混乱を生むだけだというのがその理由である。そして、1996年(平成8)に法制審議会が法務大臣に答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」においては、前説がとられ、再婚禁止期間を100日に短縮するという本件規定の改正案が示されていた。
以上のような状況において、最高裁判所は、2015年12月16日、大法廷判決によって、旧民法733条のうち、100日を超過する部分については、憲法14条1項(法の下の平等)および憲法24条2項(両性の本質的平等)に違反するとした。この判決は、同条の立法目的が「父性の推定の重複を回避し、もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにある」としたうえで、「計算上100日の再婚禁止期間を設けることによって、父性の推定の重複が回避されることになる」ため、同条のうち「100日の再婚禁止期間を設ける部分は、憲法14条1項にも、憲法24条2項にも違反するものではない」とした。しかし、同条のうち「100日超過部分については、民法772条の定める父性の推定の重複を回避するために必要な期間ということはできない」とし、この部分は、「合理性を欠いた過剰な制約を課すもの」であって、憲法14条1項および憲法24条2項に違反するとした。
この最高裁判所による違憲判決を受けて、政府は、民法733条を速やかに改正する旨を発表し、法務省も、離婚等から100日経過後の婚姻届の受理を認める旨の通知を発した。そして、2016年6月1日、民法の一部を改正する法律が成立し、女性の再婚禁止期間が6か月から100日に短縮された(同年6月7日公布・施行)。
[野澤正充 2016年9月16日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(2016-3-10)
…ただし,女子については,前婚の解消,または取消しの日から6ヵ月たたないと再婚できないものと定めている(民法733条1項)。この期間を,再婚禁止期間,待婚期間,寡居期間などという。戸籍担当者の過失などにより,733条に違反し,再婚禁止期間を経過しないで婚姻が行われた場合には,各当事者,その親族または検察官,当事者の配偶者または前配偶者より取消しの請求をすることができる(744条)。…
※「再婚禁止期間」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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