冬の日
ふゆのひ
俳諧撰集(はいかいせんしゅう)。一冊。荷兮(かけい)編。題簽(だいせん)「冬の日 尾張五哥仙(おわりごかせん) 全」。1685年(貞享2)刊。「俳諧七部集」の第一集。84年10月から11月にかけて、「野ざらし紀行」の途次、名古屋に立ち寄った芭蕉(ばしょう)と尾張の連衆野水(やすい)、荷兮、重五(じゅうご)、杜国(とこく)、正平(しょうへい)、羽笠(うりゅう)らによって興行された歌仙五巻、および追加の表六句よりなる。書名は、各連句の発句(ほっく)がいずれも冬の季であるところより由来。各発句とも詞書(ことばがき)を有し、とくに巻頭の芭蕉発句「狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉(かな)」は、風狂のポーズの著しいもので、それに応じ連句全体も詩的緊張に満ちた表現をとっている。本書は漢詩文調から脱して新しい俳諧の世界を開拓したもので、そこに蕉風の第一歩が確立されたといえよう。
[雲英末雄]
『中村俊定校注『芭蕉七部集』(岩波文庫)』▽『同校注『日本古典文学大系45 芭蕉句集』(1962・岩波書店)』
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ふゆのひ【冬の日】
江戸前期の連句集。一冊。荷兮
(かけい)編。貞享元年(
一六八四)成立。同二年刊。松尾芭蕉の
指導の
もとに尾張(名古屋)蕉門が催した歌仙五巻と追加六句からなる。蕉風の成立を示す記念碑的な集で俳諧七部集の一つ。中興期の俳諧に大きな影響を与えた。
ふゆ【冬】 の 日(ひ)
① 早く暮れる短い冬の一日。《季・冬》
※兼輔集(933頃)「冬の日は詠むるままにもくれ竹のよるぞわびしきながき思ひは」
② 冬の、鈍く弱々しくさす太陽。《季・冬》
※俳諧・笈の小文(1690‐91頃)「冬の日や
馬上に氷る
影法師〈芭蕉〉」
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ふゆのひ【冬の日】
俳諧撰集。荷兮(かけい)編。1684年(貞享1)冬成立。刊行は翌年春か。1冊。野ざらし紀行(《甲子吟行》)の旅の途中の芭蕉が,名古屋でその地の俳人とともに成した作品。荷兮編だが,芭蕉の強い指導の下に成ったと思われる。〈狂句こがらしの身は竹斎(ちくさい)に似たる哉〉(芭蕉),〈はつ雪のことしも袴(はかま)きてかへる〉(野水),〈つつみかねて月とり落す霽(しぐれ)かな〉(杜国),〈炭売のをのがつまこそ黒からめ〉(重五),〈霜月や鸛(こう)の彳々(つくづく)ならびゐて〉(荷兮)をそれぞれ発句とする歌仙5巻と,〈いかに見よと難面(つれなく)うしをうつ霰(あられ)〉(羽笠)を発句とする表六句を収める。
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世界大百科事典内の冬の日の言及
【春の日】より
…発句数の多い作者は越人(9句),荷兮(8句),重五・杜国(各5句)らであり,芭蕉の句は〈古池や蛙飛び込む水の音〉をはじめ,3句収められている。1684年(貞享1)冬に成立し,翌年春に刊行され,蕉風俳諧出発の書とされる《冬の日》(荷兮編)の後編または姉妹編と考えられている。《冬の日》にみられた技巧的,誇張的な傾向が薄らぎ,比較的平易でおだやかなものとなっている。…
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