炭俵
すみだわら
俳諧撰集(はいかいせんしゅう)。二冊。野坡(やば)、孤屋(こおく)、利牛(りぎゅう)編。1694年(元禄7)刊。「俳諧七部集」の第六集。上巻は歌仙三巻百韻一巻と、春・夏の諸家の発句(ほっく)を収め、下巻には秋・冬の諸家の発句、ついで未完の歌仙一巻(名残(なごり)裏二句まで)と歌仙三巻を収録する。発句は、編者らのほか芭蕉(ばしょう)、其角(きかく)、嵐雪(らんせつ)、桃隣(とうりん)、素龍(そりゅう)、杉風(さんぷう)ら江戸の蕉門俳人を主として、ほかに智月(ちげつ)、去来、許六(きょりく)、支考らの作も収録されている。他門では湖春、露沾(ろせん)、沾徳(せんとく)らの入集(にっしゅう)がみられる。連句のうち、芭蕉、野坡両吟歌仙「むめがゝに」の巻や、芭蕉と編者3名との四吟歌仙「振売の」の巻はとくに優れており、『猿蓑(さるみの)』以後、芭蕉が新しい俳風として求めていた「かるみ」の俳風を具現したものとして評価されている。
[雲英末雄]
『中村俊定校注『芭蕉七部集』(岩波文庫)』
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すみ‐だわら ‥だはら【炭俵】
[1] 〘名〙 炭を入れる俵。炭を詰めた俵。
わら、
あし、
かやなどを編んでつくる。《季・冬》
※俳諧・物種集(1678)「思ひの煙炭俵らから 入子升はかりがたきは
人心〈
正信〉」
[2] 俳諧撰集。二冊。
志太野坡(しだやば)・
小泉孤屋・池田利牛共編。元祿七年(
一六九四)刊。
晩年の芭蕉の指導のもとに成立。高悟帰俗の精神に基づいた「
軽み」の
作風は後の
俳壇に大きい影響を与えた。俳諧七部集の一つ。
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炭俵
すみだわら
俳諧撰集。志田野坡,小泉孤屋,池田利牛編。2巻。元禄7 (1694) 年刊。『俳諧七部集』の一集。上巻には「梅が香にのつと日の出る山路かな」を発句とする芭蕉,野坡両吟歌仙をはじめ,3種の連句と,春,夏の発句集を収め,下巻には秋,冬の発句集と4種の連句を収める。芭蕉最晩年の風調である「かるみ」を最もよく表わしたものとして,後世に大きな影響を与えている。
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デジタル大辞泉
「炭俵」の意味・読み・例文・類語
すみ‐だわら〔‐だはら〕【炭俵】
炭を詰める俵。また、炭の詰まった俵。わら・あし・かやなどで作る。《季 冬》「薄雪や簷にあまりて―/波郷」
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すみだわら【炭俵】
俳諧撰集。野坡(やば),利牛,孤屋編。上下2巻。1694年(元禄7)刊。江戸の越後屋の手代であった野坡らが芭蕉に親炙(しんしや)するうち,〈金屛の松の古さよ冬籠〉の句に感じて撰集を思い立ったもので,書名は〈炭だはらといへるは誹なりけり〉という芭蕉の独語による。内容は上巻に,芭蕉の〈むめがゝにのっと日の出る山路かな〉を発句とする歌仙など3歌仙,百韻1巻と春夏の発句150余,下巻は100余の秋冬の発句と4歌仙(うち1歌仙は未満で32句)を収めている。
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