出作(読み)デサク

デジタル大辞泉 「出作」の意味・読み・例文・類語

で‐さく【出作】

荘園内に居住する農民が、居住地以外の荘園・公領で田畑を耕作したこと。でづくり。
出小作でこさく」に同じ。⇔入りさく

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精選版 日本国語大辞典 「出作」の意味・読み・例文・類語

で‐さく【出作】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古代中世自分の居住地以外の荘園・公領に出かけて耕作すること。また、その土地。でづくり。
    1. [初出の実例]「黒田庄出作田堵等」(出典:東大寺文書‐承暦四年(1080)三月五日・東大寺政所下文案)
  3. 江戸時代他領他村田地を持った百姓が、その村に出かけて耕作すること。また、他村に塩浜を持つ者がその村へ行って製塩することをもいった。でづくり。⇔入作(いりさく)。〔地方落穂集(1763)四〕

しゅっ‐さく【出作】

  1. 〘 名詞 〙 荘園制において、自分の領主の土地以外の荘園・公領を耕作すること。
    1. [初出の実例]「東大寺庄黒田鞆田玉滝三箇処住人等、出作公田官物不弁済、兼背先例」(出典:東南院文書‐保安三年(1122)二月日・伊賀国在庁官人等解)

で‐づくり【出作】

  1. 〘 名詞 〙でさく(出作)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「出作」の意味・わかりやすい解説

出作(でづくり)
でづくり

「でさく」「しゅっさく」ともよむ。荘園(しょうえん)内に居住する農民らが、荘境を越えて公領(こうりょう)(国衙(こくが)領)や他荘の田畠(たはた)を請作(うけさく)すること。とくに平安時代に特徴的に盛行した。農民たちは、出作地にも田屋(たや)とよばれる小屋をつくって農繁期用の住居とした場合も多い。公領に出作した農民は、所当官物(しょとうかんもつ)を納めるだけで、国衙に対する雑役を免除された。荘園領主は、このような自領内の農民の出作地を負田(ふでん)・出作負名(ふみょう)と称し、荘園拡大の橋頭堡(きょうとうほ)とした。つまり、出作農民に対する支配権を根拠に、その出作地をも荘園化していったのである。とくに有名な例に、東大寺領伊賀国黒田(くろだ)荘(三重県名張(なばり)市)の場合がある。元来、杣(そま)であった黒田荘にはわずかな本免田(ほんめんでん)しかなかったので、荘民(杣工)らが盛んに公領に出作した。他方、公領の田堵(たと)農民らも、国衙の雑役を逃れようとして、これまた盛んに黒田荘の寄人(よりゅうど)となったので、黒田荘の出作は飛躍的に増加した。東大寺はそのような動向を巧みにとらえ、国衙との激しい相論を繰り返しながら、公領内田畑の寺領化を推し進め、ついに1174年(承安4)不輸寺領化を成し遂げ、約270余町の出作・新荘を成立させたのである。なお、江戸時代には、百姓が他村にある田畑を耕作することを出作(でさく)といった。その田畑のある村からみると入作(いりさく)である。

黒田日出男


出作(しゅっさく)
しゅっさく

出作

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「出作」の解説

出作
でさく

「しゅっさく・でづくり」とも。特定所領住人が他領の田畠を耕作すること。平安後期から多くみられる。中世では,荘民が近くの公領や他荘に出作する事例が一般的だが,荘園公領制の形成期には出作地や出作民の帰属をめぐって相論が生じることが多く,東大寺領伊賀国黒田荘のように,数百町にも及ぶ公領への出作地が荘領に組み込まれることもあった。近世では他村の土地を耕作することをいう。入作(いりさく)の対語。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「出作」の意味・わかりやすい解説

出作
でづくり

「でさく」ともいう。農民が自分の住む村内から,遠く他村の土地まで耕作に出かけること。耕地を有する村落の側からは,この現象を入作 (いりさく) という。耕地は一般に近いところから開かれ,次第に遠いところへ進出するが,通勤が不可能になると,小屋を造り,季節的に移住して作業に従事するようになる。ときにはそこに永住して村落を形成することもある。この場合は親村と子村の関係が成り立つ。

出作
でさく

出作」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディア 「出作」の意味・わかりやすい解説

出作【でさく】

出作・入作

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世界大百科事典(旧版)内の出作の言及

【出作り】より

…〈出作(でさく)〉ともいう。
[古代・中世]
 特定の所領の住民が他の所領で耕作すること。…

※「出作」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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