デジタル大辞泉
「刺史」の意味・読み・例文・類語
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し‐し【刺史】
- 〘 名詞 〙
- ① 古代中国の地方官。漢代では州の監察官、隋・唐代では州または郡の長官。宋以後は実職のない位階名の一つ。
- [初出の実例]「其の時に、房の仁裕と云ふ人有り、秦洲の史と有り」(出典:今昔物語集(1120頃か)七)
- [その他の文献]〔後漢書‐百官志五〕
- ② 国司(こくし)の唐名。
- [初出の実例]「憶良聞 方岳諸侯 都督刺史 並依二典法一、巡行二部下一」(出典:万葉集(8C後)五・八六八・右詞文)
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刺史 (しし)
cì shǐ
中国の地方官名。漢の武帝の元封5年(前106)創設。全国を13の州部に分け部刺史(略称刺史)を派遣して管内を巡察,郡守や豪民の監察に当たらせた。後漢になると,刺史は治所を持つとともに,軍政長官も兼ね,明・清時代の総督・巡撫のように,最高の地方行政官化していった。南北朝以後州の数が増加し,隋・唐に入って州が郡に代わると,刺史も郡の太守すなわち知事に変化。宋代には武官の上級位階名となる。元代以後は州知事の雅名としてのみ残る。
執筆者:梅原 郁
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刺史
しし
旧中国の官名。漢代に郡・国を監督するため、州ごとに置かれた検察官。ただし行政長官でないから定位置をもたず、つねに管内を移動していた。その官位も初めは郡の太守より低かったが、実権のあることからしだいに地位が高まり、やがて一州の長官として軍事・民政をつかさどる軍閥と化し、三国(魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく))に分裂する端緒を開いた。南北朝の間に州がしだいに細分されるとともに刺史の権力も弱体化し、唐の刺史は一州の長官とはいえ、州の面積は甚だ小さく、平均5県を管轄するにすぎなかった。宋(そう)代には州の長官は知州であり、刺史は実職のない武官の単なる肩書として用いられた。
[宮崎市定]
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刺史
しし
ci-shi; t`zǔ-shih
中国の官名。元封5 (前 106) 年,前漢の武帝は全国を 13の州に分け,刺史を派遣し,6ヵ条の条文に従って地方行政を監督させた。刺史は属官を率いるが治所はなく,秩 (俸禄) は 600石と低いものであったが,前漢末に名称が牧と改められ,秩も真 2000石となった。後漢に再び名称が刺史に戻り,治所をもつようになり,行政官化していったが,毎年8月には管内を巡視した。後漢末にまたも牧となり,同時に軍事権も握った。以後地方行政の変遷とともに,名称や権限にも変化があったが,明代に完全に廃止された。しかし刺史の名は明,清においても知州の尊称として,用いられた。
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刺史(しし)
中国の地方官。漢の武帝が全国を13州に分け刺史を置いたときは監察官であったが,しだいに州が細分され治所も定まり,魏晋以後将軍職を兼ねて郡県の上に勢力を持った。隋代に郡を廃し,州が県を直轄するようになって地方長官となったが,宋代に知州が置かれて廃止された。
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刺史
しし
中国の地方官
郡県を監察する政務監察官として,前漢の武帝の時代に創設。民政・軍事に直接関係はしなかったが,後漢 (ごかん) 末期から三国時代にかけ州牧 (しゆうぼく) と呼ばれて兵権を握り,魏・晋代には軍閥化して,中央集権を弱める一因となった。隋の文帝楊堅 (ようけん) が郡を廃したのち,刺史は州の長官となり,宋代には実権を失った。
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刺史【しし】
中国の地方官の名称。漢代に全国を13州に分け,州の下の郡県を監察するために設けられたが,次第に固定化し,州が監察区域から行政区域になるとその長官になった。後漢末から三国時代は州牧と呼ばれ,魏晋時代には兵権を掌握して軍閥化するものも現れた。宋代には実権を失い,元代には州知事の雅名としてのみ残る。
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普及版 字通
「刺史」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典(旧版)内の刺史の言及
【三国時代】より
…しかし漢帝国が分裂解体して複数の政治権力を生むためには,行政上の変化を必要とした。前漢の武帝以来郡県の監督のために置かれた[州]は,しだいに地方行政機関化して郡県を統轄するようになるが,黄巾の乱ののち州牧([刺史])に人格高潔のほまれ高い大官を任命して地方秩序の安定をはかろうとした。しかしこの措置は中央政府に対する州の比重を高める結果となり,群雄は州牧の地位を獲得あるいは自称することによって割拠のよりどころとした。…
【都護府】より
…唐はこの広大な地域を統治するために,部族ごとに都督府を,その下に州を置いた。それらの長官である都督,刺史には各部族の長をそのまま任命し,それら全体を統括する機関として都護府を置いた。その長官都護は中央から派遣されて軍政・民政を兼掌した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」