(読み)シ

デジタル大辞泉 「刺」の意味・読み・例文・類語

し【刺】[漢字項目]

常用漢字] [音](呉)(漢) セキ(漢) [訓]さす ささる とげ
〈シ〉
とがったもので突きさす。「刺客刺激刺殺刺繍ししゅう
そしる。「風刺
とげ。「有刺鉄線
名札。「名刺
〈さし(ざし)〉「刺身さしみ絽刺ろざし
[難読]刺草いらくさ刺青いれずみ肉刺まめ

とげ【刺/×棘】

体表にある、堅くて先のとがった突起物。植物では、表皮が変化したもの(バラ)や葉・茎・托葉・根が変化した葉針(サボテン)・茎針(サイカチ)・托葉針(カラタチ)・根針(シュロ)などがある。動物では、ハリネズミゴンズイアカエイウニなどにみられる。
木・竹・骨などの、細くとがった小片。「―を抜く」
言葉に含まれた、相手の感情を傷つける皮肉や悪意。「―のある言葉」
[類語]いがのぎ綿毛

さし【刺(し)】

米刺こめさ」に同じ。
(「緡」とも書く)江戸時代、保管・携帯のため穴あき銭に通して用いた麻縄。ぜにさし。
刺し身」の略。「いか刺し

いら【刺】

草木のとげ。いらら
魚の背びれのとげ。
イラクサのこと。

し【刺】

突き刺すもの。とげ。はり。
なふだ。名刺。

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精選版 日本国語大辞典 「刺」の意味・読み・例文・類語

とげ【刺・棘】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 植物や動物の体表にある堅くて先のとがった突起物。植物ではバラやサボテンなどにみられ、動物ではハリネズミやウニなどにみられる。きょく。
    1. [初出の実例]「麦のとげが皆つんぬけるもんだ所で」(出典:雑兵物語(1683頃)下)
  3. 竹・木などのとがった細片が人の肌につきささったもの。
    1. [初出の実例]「左の人さし指に有かなきかのとげの立けるも」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)四)
  4. 飲食の際、魚の小骨などが、のどに刺さったもの。
    1. [初出の実例]「与風(ふと)咽吭へ其尖立」(出典:随筆・耳嚢(1784‐1814)六)
  5. 人の心を刺すようなもの。人の心を故意に傷つけようとするようなことば。
    1. [初出の実例]「賞(ほむ)る様でも何処やらに刺(トゲ)ある語(ことば)察しはすれど受け流し」(出典:婦女の鑑(1889)〈木村曙〉一七)

刺の語誌

( 1 )トゲのほかにトギという言い方もあるが、文献で見るかぎり、いずれも近世以降の新しい語形である。
( 2 )意味では、古くは、ハリ、クイ、イギなどの語形が中古ないし中世の文献に現われる。
( 3 )の意味ではソゲという形もあり、近世以降の上方系文献に認められる。


いら【刺・&JISEDF9;・苛】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 草木のとげ。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
  3. 魚の背びれのとげ。
  4. 植物「いらくさ(刺草)」の略称。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
  5. 昆虫「いらむし(刺虫)」の略称。〔弘治二年本節用集(1556)〕
  6. 金平糖(こんぺいとう)の角(つの)
    1. [初出の実例]「金平糖〈略〉近年は諸所にこれあり、団にして外面あまねく角あり角をいらという也」(出典:随筆・守貞漫稿(1837‐53)二八)
  7. くらげ(水母)」の異名。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕

し【刺】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 名刺。なふだ。
    1. [初出の実例]「礼成無厭来修刺、酒熟応歓引入堂」(出典:菅家文草(900頃)一・入夏満旬、過藤郎中亭、聊命紙筆)
    2. [その他の文献]〔晉書‐熊遠伝〕
  3. 植物の、とげ。〔植物学語鈔(1886)〕

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普及版 字通 「刺」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] シ・セキ
[字訓] さす・そしる

[説文解字]

[字形] 形声
声符は朿(し)。朿は先の鋭くとがった木。これを標木として立てることもあり、また刺突するのに用いることもある。〔説文〕四下に「君、大夫をすを刺と曰ふ。刺とは直傷するなり」というが、そのように特定のことをいう語ではない。刺はそしる、刺戟は感覚をよび起こすこと、また刺はぬいとり。みな鋭いもので突く意がある。

[訓義]
1. さす、つく、つきさす。
2. そしる、せめる、いさめる。
3. のぎ、はり、ほさき、槍のいしづき。
4. なふだ、名刺。

[古辞書の訓]
名義抄〕刺 ソシル・ソムク・モトル・キル・サス・ムハラ・ソル 〔字鏡集〕刺 イガ・サス・コロス・ミダル・ヌフ・ソムク・モトム・ソシル・ヒララク・ウハラ・サク・ソル・モトレリ・ハツ

[語系]
刺・朿・tsiekはともに同声。は〔説文〕三上に「數(しばしば)諫むるなり」とあり、刺箴の意である。

[熟語]
刺謁刺怨刺戒・刺客刺瞎・刺・刺幾・刺灸・刺挙・刺径・刺戟・刺血・刺剣刺臉・刺・刺股・刺口・刺候・刺刻・刺骨・刺殺・刺史・刺刺・刺紙・刺字・刺耳・刺取刺綉・刺・刺傷・刺心・刺刃刺訊・刺世・刺青・刺船・刺促・刺探・刺配・刺尾・刺美刺諷・刺文・刺兵・刺面・刺目刺宥・刺臨
[下接語]
一刺・謁刺・怨刺・乖刺・懐刺・規刺・刺・灸刺・刺・棘刺・撃刺・索刺・三刺・指刺・襲刺・書刺・傷刺・通刺・投刺・抜刺・美刺・風刺・諷刺・辟刺・貶刺・刺・漫刺・名刺・面刺

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「刺」の解説

刺 (バラ)

植物。有刺植物およびバラ科バラ属の蔓性または直立低木の総称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【入墨∥刺青】より

…皮膚に鋭利な道具で傷をつけ,そこに色料をすり込むかまたは注入することにより文様を浮かび上がらせるもの。文身(ぶんしん),刺青(しせい),黥(げい)などともいわれる。身体装飾のうちの身体彩色の一技法としては,文様がほぼ永久的に維持される点を特徴とする。…

【名刺】より

…氏名,住所,身分などを記した社交用の紙片。ヨーロッパでは,17世紀から18世紀にかけて,トランプのカードの裏に氏名を書いて名刺として用いることがあった。18世紀中ごろには名刺がつくられるようになった。…

※「刺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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