匿名組合(読み)トクメイクミアイ

デジタル大辞泉 「匿名組合」の意味・読み・例文・類語

とくめい‐くみあい〔‐くみあひ〕【匿名組合】

商法上の契約によって組織される営業のための組合当事者一方匿名組合員)が相手方営業者)の営業のために出資し、相手方がその営業から生じる利益分配することを約するもの。営業者だけが外部に現れ、出資者は現れないのでこの名があり、法人ではない。
[補説]平成19年(2007)に施行された金融商品取引法で、一人以上の適格機関投資家かつ49人以下の一般投資家を対象とする私募届出義務が課されたため、匿名組合も同規定に基づいて金融庁への届出が必要となった。

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精選版 日本国語大辞典 「匿名組合」の意味・読み・例文・類語

とくめい‐くみあい‥くみあひ【匿名組合】

  1. 〘 名詞 〙 商法上の契約によって成立する営業のための組合。当事者の一方が相手方の営業のために資本を出し、その営業より生ずる利益の分配を受けるもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「匿名組合」の意味・わかりやすい解説

匿名組合
とくめいくみあい

当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をなし、相手方がその営業から生ずる利益を分配することを約する契約(商法535条)。実質的には匿名組合員と営業者との共同企業であり、合資会社に類似しているが、法律上の性質は匿名組合は契約であって、合資会社のような法人ではない。匿名組合は、対外的には営業者だけの個人企業として作用し、匿名組合員はその陰に隠れているので、営業者の行為につき原則として第三者に対し権利義務を有せず、また営業者の業務を執行したり営業者を代表する権限はない。匿名組合員は営業者の営業に出資するが、この出資は財産出資に限られ、信用や労務の出資は認められない。また、出資は原則として営業者の財産に帰属する(同法536条)。営業者は、その営業から生ずる利益を分配する義務を有し、特約がない以上、匿名組合員には損失分担の義務はないが、出資が損失によって減少したときは、その損失を填補(てんぽ)した後でなければ、利益の配当を請求できない(同法538条)。匿名組合員は、営業成績がただちに利益分配に影響するので、貸借対照表の閲覧等ならびに業務および財産状況に関する検査の権限が与えられている(同法539条)。匿名組合契約が終了したときは、営業者は匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならないが、出資が損失によって減じたときはその残額を返還すればよい。出資の目的物が営業者の財産に帰属するために、出資されたその物を返還する必要はなく、金銭に評価して返還すればよい(同法542条)。なお匿名組合員は、残額がないときは出資を返還してもらえないところから、出資者保護の措置の必要性が望まれている。

[戸田修三]

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改訂新版 世界大百科事典 「匿名組合」の意味・わかりやすい解説

匿名組合 (とくめいくみあい)
stille Gesellschaft[ドイツ]
société en participation[フランス]

商人(営業者)がある者(匿名組合員)から出資を受け,その営業から生ずる利益を分配することを約する契約を匿名組合契約という(商法535条)。組合員の出資と営業者の企業経営とからなる共同企業形態一つ。外部に対しては営業者だけが権利・義務の主体としてあらわれ,出資者が外部にわからないところからこう呼ばれる。匿名組合員の責任は約定の出資を限度とする有限責任であるが,特約がなければ,出資額の計算上の減少という形で,営業の損失も分担する(538,541条)。

 沿革的には匿名組合は合資会社と同じ中世のコンメンダから発展分化した。匿名組合員と合資会社の有限責任社員との類似点は,共同企業における責任は有限であり,出資は金銭その他の財産に限られ,共同企業の業務執行ないし代表は禁じられ,代わりに業務・財産の監視権があることである(542,150,153,156条)。また,両者の相違点は,合資会社では出資は法人たる共同企業のものとなり,有限責任社員が会社債権者に対し直接責任を負うことがあるのに対し(157条),匿名組合では出資は営業者に帰し(536条1項。この点は出資が組合員の共有となる民法上の組合とも異なる民法668条と対照せよ),組合員は営業者の債権者にすぎず,組合員は営業者の行為につき第三者に対し権利義務を有しない(商法536条2項。例外は537条)。匿名組合は,出資者の経営への発言権を嫌い,資本関係を秘密にしたい営業者と,営業との関係を秘密にした出資者によって利用される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「匿名組合」の意味・わかりやすい解説

匿名組合
とくめいくみあい

当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)のために出資をし,相手方がその営業から生じる利益を分配することを約する契約(商法535)。営業手腕があるが資金のない者と,資金はあるが手腕のない者とが協力して事業を行なう方法の一つ。匿名組合員の出資は営業者の財産に帰属し,外部に対しては商人である営業者だけが権利義務の主体として現れ,匿名組合員は,陰に隠れて利益の分配にあずかるだけである。匿名組合員は営業者の業務を執行する,または営業者を代表する権利がなく,ただ営業に対する検査権をもつだけである(商法539)。匿名組合員が,自己の氏名などを商号として使用することを営業者に許した場合には,営業上の債務について連帯責任を負う(商法537)。

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百科事典マイペディア 「匿名組合」の意味・わかりやすい解説

匿名組合【とくめいくみあい】

組合企業の一つ。出資者(匿名組合員)の名は外部に発表せず,業務の執行は営業者があたる。商法(535条以下)独自の契約で,匿名組合員は業務執行権や代表権はなく,業務監視権のみをもつ。法律上の財産名義等,権利義務の主体は営業者。

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会計用語キーワード辞典 「匿名組合」の解説

匿名組合

出資者が組合員となって、事業者に資金を提供するという形態の組合であり、その営業から生じる利益の分配を受けることができるという約束をする契約形態です。

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M&A用語集 「匿名組合」の解説

匿名組合

出資者が組合員となり、事業者に資金を提供するという形態の組合であり、その営業より生じる利益の分配を受けることを約束する契約形態

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世界大百科事典(旧版)内の匿名組合の言及

【合資会社】より

…社員の数に特別の制限はないが,無限責任社員と有限責任社員がそれぞれ1名以上いなければならない。 合資会社は,匿名組合とともに,10世紀ごろ地中海沿岸の諸都市で海上企業について行われていた,資本家が企業者に商品,金銭,船舶等を委託し,企業者は海外に渡航して貿易を行い,その利益を分配することを内容とするコンメンダ契約から発生したものといわれている。その後,企業者も資本の一部を拠出するコレガンティアcollegantia(またはソキエタスsocietas)という形態が生じ,これが15世紀には,資本家が共同事業者として外部にあらわれる場合とそうでない場合に分化していった。…

※「匿名組合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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