精選版 日本国語大辞典 「千早振」の意味・読み・例文・類語
ちはやぶる【千早振】
※古事記(712)中「知波夜夫流(チハヤブル) 宇治の渡りに 棹取りに 速けむ人し 我が仲間(もこ)に来む」
② 勢いの強力で恐ろしい神の意で、「神」およびこれに類する語にかかる。
(イ) 「神」にかかる。
(ロ) 「神」を含む「神世」「神無月」「現人神」などにかかる。
(ハ) 「神」に縁の深い物を表わす語、「斎垣(いがき)」「天の岩戸」「玉の簾」などにかかる。
※類従本長能集(1009頃)「千早ぶる天の岩戸を押し開き我に片寄れみごもりの神」
(ニ) 「神威(いつ)」の意から、それと類音の地名「伊豆」にかかる。
③ ②と同じかかり方で、特定の神の名、神社のある場所などにかかる。
(イ) 特に「神」を含む地名にかかる。神社のある場所であることが多い。
※古今(905‐914)秋下・二五四「ちはやぶる神なび山のもみぢ葉に思ひはかけじ移ろふ物を〈よみ人しらず〉」
※東遊(10C後)求子歌「あはれ 千者也布留(チハヤフル) 賀茂の社(やしろ)の 姫小松 あはれ 姫小松 万代(よろづよ)経(ふ)とも 色は変(かは) あはれ 色は変らじ」
※新古今(1205)神祇・一八八六「ちはやぶる香椎の宮のあや杉は神のみそぎにたてるなりけり〈よみ人しらず〉」
(ハ) (イ)(ロ)以外の諸所の神社名、神社のある地名、神の名などにかかる。
※古今六帖(976‐987頃)四「ちはやぶる糺(ただす)の神の前にして空鳴きしつる時鳥(ほととぎす)かな」
[2] 〘名〙
① 長い年月を経たもの。昔のこと。
※日葡辞書(1603‐04)「Chiuayafuru(チワヤフル)」
② =ちはや(千早)の歌
※雑俳・柳多留‐一四四(1836)「遣り手智慧格子のすみへ千早振」
[語誌](1)動詞「ちはやぶ」から転じた語で、「いちはやぶ」や「いちはやし」と同源と考えられる。
(2)中古以後は(一)③のように「神」の他、広く神社や神社のある地名にかかる例が多く見られるようになり、中世には(二)①のように、「ちわやふる」の形も生じ、意味も変化した。
(2)中古以後は(一)③のように「神」の他、広く神社や神社のある地名にかかる例が多く見られるようになり、中世には(二)①のように、「ちわやふる」の形も生じ、意味も変化した。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報