六訂版 家庭医学大全科 「単純性肥満」の解説
単純性肥満
たんじゅんせいひまん
Simple obesity
(子どもの病気)
どんな病気か
体脂肪が異常に蓄積した状態を肥満といいます。その原因として、ホルモンや生まれつきの異常などの特別な理由がなく、食事で摂取したエネルギーが、消費するエネルギー(基礎代謝、運動、成長)よりも多いために起きた状態を単純性肥満といいます。単に「肥満」という場合は、単純性肥満を指します。それに対して、何らかの疾病が原因で肥満した場合を
肥満の判定には、肥満度を用います。肥満度とは標準体重よりも何%重いかを表した指標で、(実測体重標準体重)÷標準体重×100(%)の式で算出します。標準体重は、性別、年齢別に身長から計算されます。肥満度+20%以上を肥満と判定します。現在の小中学生の約10%は肥満で、最近30年間で約3倍に増加しました。
原因は何か
生活習慣と体質ですが、生活習慣が重要です。高度経済成長により①体を動かすこともできないし、動かす必要もない(運動不足)、②いつでも、どこでも、誰でもものを食べることができる(食生活の乱れ)、好きなものを、好きな時に、好きなだけ食べることができる(過食、摂取栄養素の偏り)、③夜型の生活習慣、夜食の習慣、朝寝坊(生活リズムの乱れ)。④ストレスが多い、という生活が多くなったためです。
症状の現れ方
肥満のなかで、医学的に問題がある場合を「
また、腹囲80㎝以上(小学生75㎝)であり、①空腹時血糖100㎎/㎗以上、②血圧125/70㎜Hg以上、③中性脂肪120㎎/㎗以上あるいはHDLコレステロール40㎎/㎗未満、のうち2項目を満たせば、小児のメタボリックシンドロームと診断します。
子どもの肥満は、成人と同様に、糖尿病や動脈硬化の危険因子です。さらに、子どもに特徴的なことは、①心理社会的問題、②身長が早く止まる傾向がある、③次世代も肥満になる傾向があることです。子どもの肥満は、大人の肥満よりもより多くの問題を抱えています。
治療の方法
肥満症やメタボリックシンドロームの場合は治療が必要です。食事、運動、遊び、生活リズムを見直します。食事は、お米を中心にした和食にしましょう。テレビゲームを減らし、外遊びをしましょう。
最初の目標は、体重増加に歯止めをかけることです。毎日体重を測定し、体重が増加しないように食事に気をつけると効果的です。日常生活の見直しには、家族の協力とがんばったことへの賞賛が必要です。あせらず継続することが重要です。
病気に気づいたらどうする
成長曲線を作成し、最近の身長、体重の変化を確認しましょう。また、腹囲/身長比0.5以上場合は要注意です。気づいた時から毎日の体重測定を開始しましょう。
菊池 透
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報